貿易実務を解説!輸出入業務の流れや現場で求められる英語力・資格について
貿易取引に関する事務業務を行う貿易事務のお仕事。今回は、貿易事務にチャレンジしようと考えている方や、貿易実務の基礎知識を学びたいという方に向けて、輸出・輸入業務の流れについてご説明したいと思います。
現場ではどんな実務を行い、それらの業務にはどの程度の英語力や専門知識が必要なのでしょうか。貿易実務者ならぜひ知っておきたい「輸出・輸入業務」の流れやポイント、現場で必要とされる英語のレベルや資格についてご紹介します。
※関連記事:『貿易事務ってどんなイメージ?仕事内容や現場の実情、待遇についてご紹介!』
- 目次
- 「輸出業務」は5W1Hを意識して、流れとポイントをおさえよう
- 「輸入業務」の全体像をつかんで、先読みする力をつけよう
- 貿易関連の資格取得で実務の流れをマスター
- 貿易実務では英語の”読み書きのスキル”が重視される
- 貿易実務の知識を身につければ、貿易取引の現場で活躍できます!
「輸出業務」は5W1Hを意識して、流れとポイントをおさえよう
まず、貿易実務は、業務の目的や貿易取引の流れをきちんと理解して覚え、全体像を把握することが大切です。まずは「輸出業務」の流れをご紹介しましょう。
輸出者のお仕事は、売主である輸入者とのやりとりだけでなく、フォワーダー、船会社、税関など、関係会社や公的機関に向けて行う業務も多いのが特徴。「なぜ」「誰が(誰に)」「何を」「いつ」「どこで(どこから、どこに)」「どのように」といった5W1Hの視点で、業務をとらえていきましょう。
※関連記事:『国際物流のコーディネーター「フォワーダー(Forwarder)」』
①取引相手(輸入者)の選定
貿易取引は、輸出者と輸入者の出会いからスタートします。これには色々な出会い方がありますが、輸出者は国際展示会、代理店やセールスレップの紹介、インターネットなどを通じて、輸入者と出会います。
②交渉~売買契約を結ぶ
取引相手が決まったら、輸出者と輸入者はお互いの希望条件を伝え合い、交渉を経て合意を得たら売買契約を交わします。
③信用状(L/C)を確認する
売買契約では、決済条件(支払い条件)も決められますが、この決済条件を信用状決済(L/C決済)にした場合は、輸入者が開設した信用状が輸出者の取引銀行を通じて送られてきます。信用状の記載内容はとても重要なので、輸出者は「売買契約と一致しているか」、「要求されている書類は何か」など、しっかりと確認する必要があります。
※関連記事:『信用状(L/C)の役割を知っていますか?』『信用状(L/C)を受け取った輸出者が確認すべきこと(前編)(後編)』
④船積準備を始める
商品の輸出予定日が決まったら、輸出者はフォワーダーに船積みや輸出通関を依頼し、輸入者にも予定日を知らせます。同時に、インボイスや船積依頼書など、船積みや通関に必要な書類を作成してフォワーダーに渡します。
⑤輸出通関手続き
フォワーダーは、その書類をもとに必要な手続きを行い税関への船積み手配、輸出申告を行います。
※関連記事:『輸出者は必見!船積依頼書(Shipping Instruction)の記載内容を知ろう!』『輸出通関手続きはどのように行われているの!?』『フォワーダーが船積み手続きでしていることとは?』
⑥B/L(船積証券)の入手
輸出許可が下りたら、船会社は商品(貨物)の船積みを行い、船積み完了後、B/L(船荷証券)を発行します。輸出者は、必要な費用を支払ってそのB/Lを受け取ります。
⑦買取手続き
信用状(L/C)決済で取引している場合、輸出者は取引銀行(買取銀行)へ信用状の記載内容通りの船積書類と為替手形を揃えて、手形の買取を依頼します。銀行がその書類を確認し、信用状の内容と一致していれば手形の買取が行われ、輸出者は商品代金を回収できます。
*送金決済条件の取引の場合、輸出者はB/Lを入手したあと(⑥)、輸入者に書類を送り、輸出入者のあいだで取り決めた送金条件(例:B/L発行日から15日後払いなど)で商品代金を回収します。
D/P、D/A決済条件での取引では、信用状決済条件と同じように、船積書類と為替手形を揃えて銀行に買取依頼しますが、輸入者が輸入地銀行で代金を支払ったあとで代金回収する、という流れになります。
※関連記事:『信用状(L/C)取引における輸出者の代金回収の流れとポイント』『為替手形(Bill of Exchange)で記載すること』『貿易取引における「商品代金の決済方法」をまとめてみました』
「輸入業務」の全体像をつかんで、先読みする力をつけよう
続いて、輸入業務の流れをご紹介します。冒頭でお伝えした通り輸入業務でも、5W1Hの視点や全体像の把握が重要になってきます。スムーズにお仕事を進めるために、輸入業務の流れを理解して、次の業務を「先読みする力」を身につけていきましょう。
上図をご覧いただくとおわかりの通り、①取引相手(輸出者)の選定、②交渉~売買契約を結ぶ、については輸出者と同じです。ただ、輸入者は自社の顧客層とマッチする商品、または新しく開拓したい市場にマッチする商品を求めており、そうした商品を製造している会社、技術を持っている会社が集まる国際展示会などの場だけでなく、関係者やインターネットなどを通じ直接アプローチして出会うことも多いでしょう。
③信用状(L/C)の開設依頼
輸出者との売買契約が信用状決済(L/C決済)の場合、輸入者は自社の取引銀行で信用状開設依頼書を作成し、信用状が開設されたら輸出者が輸出準備をしているあいだは、“待ち”の状態になります。
④輸入貨物到着前の準備
輸出者と取り決めたインコタームズにより輸入者が保険をかける必要があるときは、保険会社に貨物海上保険の申し込むこともありますし、取引によってはサンプルを取り寄せたり、商品によって事前に輸入の許可・承認が必要であれば届出をしたり、スムーズに貨物が引き取れるように準備します。
※関連記事:『信用状(L/C)開設依頼書の作成ポイント』『貨物海上保険を申し込むタイミングは?』
⑤船積書類の入手・商品代金の支払い
信用状(L/C)取引の場合、輸出者が現地で必要な船積書類と為替手形を揃えて銀行に提出すると、輸入者にも取引銀行(信用状発行銀行)から連絡が入ります。輸入者は銀行に商品代金を支払って船積書類を入手し、書類に間違いがないかを確認後、フォワーダーに通関や貨物引取業務を依頼します。
⑥輸入通関手続き・貨物の引取
船会社から貨物到着案内(アライバルノーティス)が届いたら、フォワーダーに輸入申告、許可が下りたら貨物を引き取ります。
*送金決済条件での取引では、輸出者から直接書類を受け取り、輸出入者のあいだで取り決めた決済条件(例:B/L発行日から15日後払いなど)にしたがって商品代金を支払います。
D/P、D/A決済条件での取引では、信用状(L/C)取引と同じように銀行から通知があるので、その後、D/P決済では船積書類と受け取りと同時に支払い、D/A決済では為替手形の支払い期日までに支払うことを約束して船積書類を受け取ります。
※関連記事:『貨物到着案内(Arrival Notice)は届いたら即チェック!』
ここまで、輸出業務・輸入業務の基本的な流れをご紹介しました。貿易事務未経験の方は、この基本の流れをおさえて、それぞれの貿易書類の役割や業務内容を理解していきましょう。
貿易関連の資格取得で実務の流れをマスター
ここまで、貿易(輸出入)業務の流れをご紹介してきましたが、このような業務の流れや、貿易書類についての理解度を確認できる検定試験があります。
貿易事務職に就くにあたって資格取得は必須ではありませんが、未経験から貿易事務職へ挑戦する場合やさらなるキャリアアップを目指している場合、自らの貿易知識を証明するものとして、資格が役立つでしょう。ここでは、貿易実務の現場でも知識を活かすことができる検定試験をご紹介します。
貿易実務検定
日本貿易実務検定協会が実施する検定試験で、貿易の現場でも広く認知されている検定です。試験問題は、貿易で使われる専門用語、輸出入取引の流れ、書類の役割についての内容が中心で、これらは現場でも必須の知識となります。A~C級の3つの級に分かれています。
※関連記事:『貿易事務に関する資格は取得必須?転職では有利になるの?』
貿易実務では英語の”読み書きのスキル”が重視される
貿易事務職を目指す方にとって、「現場ではどのくらいの英語力が求められるのか?」という点も気になるところではないでしょうか。「貿易事務は業務上、英会話が必須なのでは…」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはそんなことはありません。
貿易取引では、海外の取引先などとのやりとりの履歴を「文面で残しておく」という観点から、メールでの連絡が主流になっています。また、英文で書かれた貿易書類の作成・確認の業務も多いため、話すスキルよりも「英語の読み書きのスキル」の方が、より重視されているのです。
また、貿易書類や(コレポン業務の)メール文面は、決まったフォーマットがあることがほとんど。英語力に自信がないという方は、フォーマットの文面を覚えるところから徐々に覚えていきましょう。
もちろん、求められる英語力は会社によって異なりますが、貿易事務職はTOEICスコア600点(英語の基本的な読み書きがある程度できるレベル)以上を目標にするのが、一般的とされています。未経験から貿易事務を目指す方は、「TOEICのスコアが600点」を目標にチャレンジしてみてくださいね。
※関連記事:『貿易事務に転職するなら、どの程度の英語レベルが必要ですか?』『未経験から貿易事務へ転職するときに有利な資格って?』
貿易実務の知識を身につければ、貿易取引の現場で活躍できます!
貿易事務職は、このように貿易取引に関する知識や英語力(とくに読み書きのスキル)が求められることから、一般事務と比べて給与水準が高く、さらに一度習得したスキルを長く活かすことができるのがメリットです。
貿易取引の方法・流れは、国際間で長い時間をかけて体系化されたものなので、大きく変わる可能性は少ないと言えます。また、貿易事務業務の知識・スキルは、取り扱う商品が変わってもそれほど大きく変わることはありません。もし同業他社へ転職しても、知識と経験を活かしてキャリアを重ねていくことができるでしょう。
専門職種である貿易事務は、「未経験から挑戦する際のハードルが高い」と言われることもますが、派遣という働き方であれば、未経験からスタートできるアシスタント職のお仕事もあります。「貿易事務としてのキャリアをスタートさせたい!」というは、まず一度パソナにご相談くださいね。
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