輸入者の仕事の流れを把握しよう!貿易実務は先読みするとラクになる
今回は貿易事務の基礎項目とも言える、「輸入者」の仕事の流れやポイントについてご紹介したいと思います。「輸出者の仕事の流れを把握しよう!」も併せてお読みいただくと、さらに理解が深まりますよ。
貿易実務には決まった流れがある!先読みすることで作業効率をあげよう
貿易実務には基本の型(パターン)があるので、ひとつひとつの業務内容を理解すること、また、その流れを把握することが大切です。
繰り返し行うことで業務は身につきますし、普段から意識して仕事の全体像をしっかりおさえていくことで、どんどん仕事を先読みする力がつき、作業効率も上がるでしょう。
5W1Hを意識して、輸入業務の流れとポイントをおさえる
ここからは、個別に説明してきた「輸入業務の流れやポイント」を、まとめてご紹介します。
① 取引相手(輸出者)の選定
貿易取引は輸入者と輸出者の出会いからスタートします。
通常、輸入者(買主)は自社の顧客層とマッチする商品、あるいは新しく開拓したい市場にマッチする商品を求めています。
輸入者は、そうした商品を製造している会社、技術を持つ会社が集まる国際展示会などへ参加したり、関係者やインターネットなどを通じて直接アプローチして出会ったりすることが多いです。
気になった会社がすでに貿易取引を行っていたら、売買契約時に必要な情報(商品価格、製造期間、梱包、決済条件、インコタームズなど)を教えてもらい、交渉段階に入ります。
※関連記事:『【貿易】インコタームズとは?費用負担と危険負担の範囲を一覧で解説』
しかし、狙いを定めた会社が、貿易取引の経験のない、あるいは国際取引に慣れていない会社であることも。
その場合は、相手とひとつひとつ時間をかけて交渉し、取引条件などをクリアします。なお、貿易取引の交渉前には、相手企業の信用調査を行うことも大切です。
② 交渉~売買契約を結ぶ
輸入者と輸出者はメール等で互いの希望条件を伝え合い、交渉を経て、合意を得たら売買契約を交わします。
一般的に売買契約書は2枚作成。互いにサインをした上で、1部ずつ保管します。
※関連記事:『貿易取引における交渉の流れを知ろう!~勧誘・引き合い・オファー~』
初めての取引では、輸出者との信頼関係が築けていない状態なので、商品代金を支払って確実に商品を受け取ることができるのかどうかなど不安がつきまといます。
そのため、一般的に、輸入者は銀行に間に入ってもらう「L/C取引」を希望条件として提案することも多いことも覚えておきましょう。
※関連記事:『「信用状(L/C)」の役割とは?分かりやすく解説!』
③ L/Cの開設依頼
決済条件(支払条件)が信用状決済(L/C決済)の場合は、輸入者は取引銀行にL/Cの開設を依頼します。
輸出者と取り決めた売買契約をもとに、L/C開設依頼書を作成し、取引銀行(L/C発行銀行)に提出。また、貿易取引は外貨での取引も多いので、為替変動リスクに備えて為替予約をすることも多いです。
※関連記事:『信用状(L/C)開設依頼書の作成ポイント』『為替変動リスク対策の定番「為替予約」の方法を知ろう!』
④ 輸入貨物到着前の準備
輸入者は、売買契約を交わしたら(L/C取引の場合はL/C発行の手続きをしたら)、一般的には、輸出者が輸出準備をするあいだ“待ち”の状態になります。
ただ、取り決めたインコタームズにより輸入者が保険をかける必要があるとき、保険会社に貨物海上保険の申し込みをしたり、商品によっては、事前に輸入の許可・承認・届出が必要なので、その手続き・準備に取りかかります。
また、取引によってはサンプルを取り寄せたり、輸出者の製造状況や船積スケジュールなどを確認したり、輸出者が輸入者が希望する商品を納期通りに輸出してもらえるよう管理すること(把握すること)も、この待ち期間で行う大切な業務のひとつです。
※関連記事:『貨物海上保険を申し込むタイミングはいつ?』
⑤ 船積書類の入手・商品代金の支払い
輸出者の船積手配が完了すると、L/C取引の場合は、取引銀行(L/C発行銀行)から連絡が入り、銀行へ商品代金を支払って船積書類を入手します。
※関連記事:『信用状(L/C)取引における輸出入者と銀行の関係を理解しよう』
ちなみに、D/P、D/A決済条件での取引では、L/C取引と同じように銀行から通知があり、D/P決済では船積書類と受け取りと同時に支払い、D/A決済では為替手形の支払い期日までに支払うことを約束して船積書類を受け取ります。
※関連記事:『D/P決済、D/A決済(信用状なし荷為替手形決済)の仕組みを理解しよう』
また、送金決済条件での取引では、輸出者から直接書類を受け取り、輸出入者のあいだで取り決めた決済条件(例:B/L発行日から15日後払いなど)にしたがって商品代金を支払います。
なお、通常、貿易取引の決済業務は社内の経理の方と連携して行うことも多いので、経理の方には事前にどんな取引が進んでいるのかを伝えておきましょう。
⑥ 輸入通関手続き・貨物の引取
輸入者は船積書類を受け取ったら、B/L(Bill of Lading/ビーエル/船荷証券) やインボイス(Invoice/送り状)、パッキングリストなど書類の内容を確認します。
不備がある場合には、輸出者に連絡し、修正してもらいましょう。そして、通関手続きを行うフォワーダー(Forwarder)に船積書類や他の必要書類を引き渡して通関業務を依頼します。
*オリジナルB/Lを用いた取引では、その原本を船会社に提出する必要があります。実務ではフォワーダーの方が引き取りに来られることも多いです
そして、船会社からアライバルノーティス(Arrival Notice/貨物到着案内/A/N)が届いたら、フォワーダーに引き渡して、輸入通関および貨物の引取準備を依頼します。
※関連記事:
『「船荷証券(B/L)」とは?意味や役割、記載内容の見方を詳しく解説!』『貨物到着案内(アライバルノーティス)は届いたら即チェック!』
輸入業務では、貨物(商品)が国内でどのように流通するのかを把握しておくことも大切な仕事のひとつです。たとえば、
・貨物は通関後“どこで”保管するか(例:フォワーダーと連携)
・貨物に流通加工を施すのか (例:加工部門・業者と連携)
・貨物は“いつ”通関予定か (例:フォワーダーと連携)
・貨物は“いつ”出荷できるのか (例:配送部門と連携)
など、その貨物に関わる方と必要な情報を連携し、その方々にとってもスムーズに仕事が進められるように調整しましょう。
※関連記事:『輸入担当の貿易事務は「輸入許可」が出た後の流れを把握することが大切!』
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