輸出者の仕事の流れを把握しよう!貿易実務は先読みするとラクになる
今回は、輸出者側から見た貿易取引の流れについてご紹介したいと思います。では、早速はじめましょう!
決まった流れがある貿易実務!先読みして作業効率をあげよう
どんな仕事でも同じだと思いますが、仕事の現場では、できるだけテンポ良く業務を片付けていく(作業効率を高めていく)ことが求められます。また、自分自身もなるべく早く仕事を終えたいという気持ちもありますし、仕事をしていれば、誰でも効率よく終わらせるにはどうすればいいかを考えると思います。
その具体策は職業や立場によって変わってくるとは思いますが、私がこれまで社内のいろんな方と話をしたり見たりして、仕事ができる人の共通のルールがある…と感じています。それが“仕事の内容をきちんと理解して覚えること”また“何のためにその仕事をしているのか、全体像を把握すること”、その上で“先読みして用意周到に準備すること”という3点です。この3つは、実際に貿易実務の作業効率アップにはとても大切な要素です。
もちろん、貿易実務と一口に言っても、会社により業務範囲は異なるのですが、貿易実務には基本の型(バターン)があるので、とりわけ前者の2点(業務内容の理解、業務の全体像・流れの理解)をしっかりおさえれば、少しずつ“先読み”ができるようになりますし、作業効率も上がります。
今回は、これまで個別にご紹介してきた「輸出業務の流れやポイント」をまとめてご紹介し、みなさんに全体像をつかんでいただけたらと思います。
5W1Hを意識して、輸出業務の流れとポイントをおさえよう!
では、一般的な輸出業務の流れを下図で見ていきましょう。
これから①~⑦の具体内容をご紹介しますが、輸出者の仕事は、輸入者はもちろん、フォワーダー、船会社、税関など、関係会社や公的機関に向けての業務が多いので、“なぜ、誰が(誰に)、何を、いつ、どこで(どこから、どこに)、どのように”といった5W1Hの視点でとらえることも大切です。
ひとつひとつの業務や流れが頭に入ると、輸出業務の全体像が浮かび上がり、仕事を先読みする力もつきますので、しっかりマスターしてくださいね。
① 取引相手(輸入者)の選定
貿易取引は輸出者と輸入者の出会いからスタートします。輸出者(売主)は国際展示会などの場、代理店やセールスレップの紹介、インターネットなどを通じて、輸入者(買主)と出会います。一般的に輸入者からの引き合いから交渉がスタートすることが多いのですが、輸出者自身も、その商品が相手国の消費者や使用者にマッチするのかどうか、取引相手となる輸入者の経営状況、ライバル会社が存在するのか、など調査することも大切です。
通常、商社や貿易会社、製造会社が輸出を企画する際には、交渉・契約の際に必要となる情報(商品価格、製造期間、梱包、決済条件、インコタームズなど)の詳細について社内で検討されており、輸入者と出会ったあとの交渉に備えています。
※関連記事:
「商品価格とインコタームズの関係〜貿易取引の商品価格はどのように決まる?〜」
② 交渉~売買契約を結ぶ
輸出者と輸入者は出会った場で、あるいはその後のメールを通じて、おたがいに希望条件を伝え合い、交渉を経て合意を得たら売買契約を交わします。一般的に、売買契約書は2枚作成し、おたがいにサインをした上で1部ずつ保管します。
※関連記事:「貿易取引における交渉の流れを知ろう!~勧誘・引き合い・オファー~」
輸出業務の担当者は、売買契約書に沿うように以下のような必要業務について洗い出し、ひとつひとつ遂行していきます。
・商品を“誰が”手配するのか(例:営業と連携)
・商品を“いつ”出荷できるのか(例:製造部門にスケジュール確認)
・輸出梱包やシッピングマークをどうするか(例:配送部門とへ依頼)
・輸送費やスケジュール(例:フォワーダーに確認)
・商品を輸出するにあたり公的書類など他書類が必要かどうか
※関連記事:「貿易事務で『船積み・通関手続き依頼』の前にしていること」
③ 信用状を確認する
決済条件(支払条件)が信用状決済(L/C決済)の場合は、輸出者の取引銀行を通じて、信用状が送られてきます。記載内容が売買契約と一致しているか(とりわけ日付やスペルが正しいか)、信用状統一文言があるか、要求されている書類は何か、などをしっかりと確認し、誤りや変更したい点がある場合は、ただちに輸入者に条件変更(アメンド)を依頼します。
※関連記事:「信用状(L/C)を受け取った輸出者が確認すべきこと(前編)(後編)」
※信用状決済以外の取引ではこの業務はありません。
④ 船積準備を始める
商品の輸出予定日が決まると、輸出者はフォワーダーに船積みや輸出通関を依頼します。その際、売買契約書をもとに(信用状取引の場合は、信用状の記載内容も踏まえて)以下の書類を作成し、フォワーダーに送ります。
・インボイス(Invoice)
・パッキングリスト(Packing List)
・船積依頼書(S/I: Shipping Instruction)※
・(公的機関の輸出許可証・承認書)
・(商品の成分などを記した説明書)
・(海上貨物保険の申込書)
※フォワーダーが輸出者の代理で行うこともあります。
※関連記事:「輸出者は必見!『船積依頼書(Shipping Instruction)』の記載内容を知ろう! 」
⑤ 輸出通関手続き
輸出者が作成した船積書類をもとに、フォワーダーは税関への輸出申告に必要な書類を作成し、手続きを行います。
※関連記事:
「『輸出通関手続き』はどのように行われているの!? 」
「フォワーダーが『船積み手続き』でしていることとは?」
⑥ B/L(船荷証券)の入手
輸出許可が下りたら、船会社は商品(貨物)の船積みを行います。船積みが完了したら、船会社はB/L(Bill of Lading/船荷証券)を輸出者に発行します。CIPやCPT、DAPなど輸出者が海上運賃を負担する場合は、船会社にその費用を支払ってB/Lを入手します。
※実務ではフォワーダーが立替払いしていることが多く、輸出者は船積手続きや輸出通関手続きの費用と合わせて支払っています。
※関連記事:「『船荷証券(B/L)』を入手する流れを把握しよう!」
⑦ 買取手続き
信用状決済条件で取引している場合、輸出者は取引銀行(買取銀行)に、B/Lをはじめ、インボイスやパッキングリストなど信用状の記載内容通りの書類の原本と為替手形を揃えて、銀行の買取依頼書を作成し、為替手形の買取を依頼します。
銀行が提出書類を確認し、提出した書類が信用状の内容と一致していれば買取が行われ、輸出者は商品代金を回収できるので、輸出貨物が無事に輸入者に届けば、輸出業務は完了となります。
※関連記事:
「『信用状(L/C)』取引における輸出者の代金回収の流れとポイント」
「為替手形(Bill of Exchange)で記載すること」
ちなみに、その他の決済条件についてもお話しますと、D/A、D/P決済条件での取引では、上のように船積書類と為替手形を揃えて銀行に買取依頼をしますが、輸入者が輸入地銀行で代金を支払ったあとで、輸出者は商品代金を回収できるという流れになります。
また、送金決済条件での取引では、輸出者はB/Lを入手した(⑥)あと、輸入者に書類を送ります※。そして、輸出入者のあいだで取り決めた送金条件(例:B/L発行日から15日後払いなど)で商品代金を回収します。
※オリジナルB/Lを使用する場合は、通常、船積書類一式をクーリエまたはEMSで送付します。B/Lを現地回収(サレンダード)した場合、または船会社にSea Waybillの発行を依頼した場合は、メールで送付するのが一般的です。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
※関連記事:『すばやく荷物を引き取れるB/Lの「元地回収」の仕組み』『「B/L」と「Sea Waybill」の違いを知っていますか?』
貿易実務の仕事は常に誰かと誰かの仲介役となる仕事なので、社内や社外の方に進捗状況を問われたり、その状況を説明しなければならない機会がたくさんあります。そのためにも、今日ご紹介した基本の流れ、業務はしっかりマスターしましょう。