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2016/05/19

第三者の協力・承認を得て発行する「譲渡可能信用状」

著者: パソナ キャリアコンサルタント(貿易担当)

第三者の協力・承認を得て発行する「譲渡可能信用状」

貿易取引で利用されるL/C(信用状)にはいくつかのバリエーションがありますが、今回はその中から「譲渡可能信用状(Transferable L/C)」についてご紹介します。

目次
そもそもL/Cって何?
「譲渡可能信用状」は、通常のL/Cと何が違うの?
譲渡可能信用状を開設するときに留意すること

そもそもL/Cって何?

L/C(Letter of Credit/エルシー/信用状)とは、国際間の売買契約において、輸入者(買主)の取引銀行が輸出者(売主)への支払いを保証するものです。

貿易取引は輸送に時間がかかることもあって、「商品の引き渡し(受け取り)」と「代金の支払い」などが同時に行えない(時間差がある)、というリスクがあります。

そこでL/C取引では、銀行が輸出入者の間に入ることで、L/Cの受益者(通常は輸出者)は代金回収の心配をせずに済む、また申請者(通常は輸入者)はきちんと商品が発送される、と双方が安心できる仕組みがあります。

※関連記事:『L/C(信用状)』の役割とは?わかりやすく解説!『L/C(信用状)』取引における輸出入者と銀行の関係を理解しよう

「譲渡可能信用状」は通常のL/Cと何が違う?

一般的なL/Cは、一人の輸出者と一人の輸入者の間に銀行が入って決済を行うところに特徴があり、一度開設されると輸入者(申請者)も輸出者(受益者)も誰かに譲渡するということはできません。

ですが、実は輸入者の合意があれば、『輸出者(受益者)がL/Cの金額の全部または一部を、一回に限って第三者(複数の場合もある)に譲渡できる』というL/Cも開設できます。

こうしたL/Cを「譲渡可能信用状(Transferable L/C)」と言います。

譲渡可能信用状が使われるケース

では、いったいどんな状況で譲渡可能信用状が使われているのかについて、例を挙げてご紹介していきましょう。

例えば、とある日本の商社A(輸入者)が、インドネシアの“小さな”輸出業者Bと代理人契約を結んでいたとしましょう。輸出業者Bは、Aの代理人としてインドネシアでの生産工場との交渉や商品の仕入れを担当しています。

あるとき商社Aは、インドネシアの商社Bに「現地の“大手”メーカーCの商品を仕入れて欲しい」と発注し、輸出業者BもメーカーCに発注しました。

しかし大手メーカーCは、小さな輸出業者Bに対し、「(信用力が低いから)商品は売れない!」と回答があったとします(こういったことは新興国ではよくあると聞きます)。

このままでは、小さな輸出業者Bは大手メーカーCから商品を仕入れられず、つまりは商社Aに輸出できません。

しかしこのようなケースで、輸出業者Bが商社Aの協力・承認を得て、メーカーCに対して「譲渡可能信用状」の譲渡を条件に交渉することがあるのです。

最初にお伝えしたように、L/Cは受益者に対して銀行が代金支払いを保証したものです。よって、大手メーカーCにとって “L/Cが譲渡される=代金の回収ができる(リスクが少ない)=安心できる取引” となり、小さな輸出業者Bは大手メーカーCから商品を卸してもらえる可能性が高まるのです。

ちなみに、大手メーカーCがこの信用状譲渡の条件を受け入れた場合、小さな輸出業者Bが第一の受益者、メーカーCは第二の受益者となります。この流れを図にしたのがこちらです。

譲渡可能信用状が使われるケース

このように、譲渡可能信用状は資本力の弱い商社(輸出業者)との取引で使われる、ということをぜひ覚えておいてください。

ちなみに、譲渡可能信用状の譲渡金額はL/Cの金額内で減額することが可能です。上の例で言えば、小さな輸出業者Bは自社の(商売斡旋)手数料を差し引くことができ、きちんと利益を得ることができます。

さらに詳しい話をすると、譲渡可能信用状の譲渡金額は何分割でもすることができるので、小さな輸出業者Bは複数のメーカーから複数の商品を仕入れる場合にも使えます。

商社Aの立場からすれば、ひとつひとつのメーカーに対してL/Cを作成するより、小さな輸出業者Bに一括して依頼する方が、手間もコストも省けます。このようなケースでも、譲渡可能信用状が使われています 。

譲渡可能信用状を開設するときに留意すること

通常のL/Cには譲渡機能が無い

「譲渡可能信用状」はL/Cのオプション機能のようなもので、通常のL/Cには譲渡機能がありません。

ですから、輸入者がL/Cを開設するときの申請「Transferable」の記載がない限りは第三者への譲渡は認められない、ということにご留意ください。

譲渡先は特定してもしなくてもよい

譲渡先(第二受益者)については特定しなくても良いし、特定することも可能ですし、その場合は明示する必要があります。上の例のように、L/C開設後に輸入者の代理人(第一受益者)が取引相手を探すような場合には特定できない(しない)というケースになります。

銀行との相談が必要なことも

また「譲渡可能信用状」の発行は、銀行との相談が必要になることもあります。というのも、このL/Cは通常、開設時に第一受益者から誰に譲渡されるかがわからないため、銀行としては安易に開設することを認めず、輸入者はL/Cを譲渡可能にする理由や必要性を説明しなくてはいけないこともあります。

もしみなさんが開設するときには、社内にいる貿易に詳しい方や、銀行の担当者に相談しながら進めてくださいね。

 

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参考サイト

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