「信用状(L/C)」を受け取った輸出者が確認すべきこと(前編)
今回は「L/C(Letter of Credit/エルシー/信用状)*以下、L/C」を受け取った輸出者が、確認すべきことについてご紹介します。
L/Cとは、貿易決済を円滑にするために銀行が発行する支払い確約書のこと。貿易事務の方にとっては基本の知識ですが、今回は輸出者の目線でご説明しますので、みなさんも輸出者の立場になって読んでくださいね。
※関連記事:『「信用状(L/C)」を受け取った輸出者が確認すべきこと(後編)』
通知された「L/C」の内容を確認
輸入者との売買契約においてL/C取引(決済)になった場合、輸出者(受益者)は、通知銀行からL/Cを受け取ります。輸出者は、確実に代金を回収するためにも、受け取ったL/Cをしっかりとチェックすることが大切です。
では、さっそくL/Cのサンプルとその内容を見ていきましょう。
サンプル内容
1 | 発行銀行 |
2 | 取消不能信用状である旨の表示 |
3 | L/Cの発行日 |
4 | 信用状番号 |
5 | 通知銀行(Advising Bank) |
6 | 発行依頼人(Applicant) |
7 | 受益者(Beneficiary) |
8 | 信用状金額 |
9 | 船積期限 |
10 | L/Cの有効期限 |
11 | 手形買取の方法 |
12 | 手形買取に必要な船積書類の種類と通数 |
13 | 商品の明細 |
14 | 貿易条件 |
15 | 船積港と荷降港 |
16 | 分割積みの可否 |
17 | 積替えの可否 |
18 | 手形買取のための書類提示期限 |
19 | 船積書類の種類以外の手形買取条件 |
20 | 支払い確約文言 |
21 | 発行銀行の署名・サイン |
22 | 信用状統一規則準拠文言 |
*電信形式(Cable Advice)のL/Cは形態が異なりますが、記載されている内容は同じです
L/Cを受領した輸出者が確認すべき7つのポイント
輸出者は、このL/Cの記載内容と輸出時に作成する船積書類に違いがあると、銀行に買い取ってもらえなくなる(代金を支払ってもらえなくなる)おそれがありますので、しっかりと確認しなければなりません。
内容すべてに目を通さなければなりませんが、特に確認すべき7つのポイントをご紹介します。
L/Cのチェックポイント
【1】輸出国の通知銀行から送られてきたものか?(サンプル内容5)
⇒ 通知銀行から送られたものでなければ、L/Cとしては無効です。輸入者や開設銀行から直接届いたL/Cには偽物の可能性がありますので、注意しましょう。
【2】開設銀行の信用度に問題はないか?
⇒ 銀行自体に不安があれば、取引銀行を変更してもらいましょう。
【3】原本(Original)かどうか?
⇒ 為替手形+船積書類提示時に、予告通知(Preliminary Advice)や電信確認通知(Mail Confirmation)では受けつけてもらえません。
【4】支払確約文言があるか?(サンプル内容11)
⇒ 後述の文言があるか確認しましょう。*1
【5】信用状統一規則準拠文言があるか?(サンプル内容22)
⇒ 後述の文言があるか確認しましょう。*2
【6】取消不能信用状(Irrevocable Credit)か?(サンプル内容2)
⇒ 基本的に、信用状は取り消し不能条件で発行されますが、念のため確認しましょう。
【7】売買契約内容と信用状の内容が一致しているか?
⇒ 商品名、数量、金額、発行人依頼者(輸入者)名、船積期限、決済条件、船積日、船積書類の種類など、売買契約書と一致しているか確認しましょう。
- *1 支払確約文言
以下の文言が、発行銀行が支払いを確約することを宣言している文言。L/Cの中で一番重要な部分といっても過言ではありません。 - We hereby engage with drawers, endorser and or bona fide holders that drafts drawn and negotiated in conformity with the terms of this credit will be duty honored on presentation.
≪日本語訳≫
当行は本信用状の条件にしたがって振り出され、買い取られた手形の振出人、裏書人および善意の所持人に対して呈示され次第、支払うことを確約します。
- *2 信用状統一規則準拠文言
「信用状統一規則」は、L/Cについて、国による法律の相違から生じるトラブルを避けるべく、国際商業会議所(ICC)が定めた国際ルールで、下記の文言はそれに準拠するという宣言です。 - This credit is subject to uniform customs and practice for documentary credits (2007 Revision), International Chamber of Commerce Publication No.600 and the uniform rules for bank-to-bank reimbursements under documentary credits, I.C.C. Publication No.725.
≪日本語訳≫
この信用状 は、「荷為替信用状に関する統一規則及び慣例(2007年改訂版)、国際商業会議所出版番号600」、および、「ICC荷為替信用状出版番号725号に基づく銀行間補償に関する統一規則」に準拠します。
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