「海貨業者」と「フォワーダー」は何が違うの?
貿易実務に関する書籍などでよく目にする「海貨業者」というキーワードですが、みなさんは、海貨業者がどんな業務をしているのかご存知ですか?今回は、「海貨業者」の役割や、「フォワーダー」との違いについてご紹介します。
そもそも「海貨業者」って何をしているの?
海貨業者の正式名称は「海運貨物取扱業者」と言います。その名前の通り、港湾地区で貨物を取り扱う専門業者で、荷主(輸出者や輸入者)の代わりに、貨物の船積みの手続き・引取りの手続き・搬出入・運送・荷役など、さまざまな業務を担っています。
海貨業者は、輸出時には貨物を船やコンテナヤードで引き渡すまで運び、船会社から発行されるB/L(船荷証券)を輸出者の代わりに受け取ります。また、輸入時には輸入者から受け取ったB/Lを船会社に提出、D/O(荷渡し指図書)を受け取り、船会社から貨物を引き取る、といった業務を行っています。
港湾地区は、日本であって日本ではないような保税地域のため、誰でも入れる地域ではありません。海貨業者は、港湾運送事業法にもとづき、保税地域で貨物を取り扱うことが認められている専門業者なのです。
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時代とともに業務範囲が拡大していった「海貨業者」
本来の海貨業者の業務は、ここまでに説明した業務だけだったのですが、時代とともに港の貨物を取り扱うだけでなく、税関への手続き(通関業務)・運送業務・倉庫業務・梱包業務などの関連業務を兼務するようになりました。
会社によって兼業する業務の範囲は異なりますが、自社で運送業務、倉庫業務を行っていない会社でも、それぞれの専門業者と提携して、上記業務をカバーしているケースが多いようです。
つまり、現在の「海貨業者」は船という輸送手段を所有しているわけではありませんが、国際輸送業務を一貫して引き受けられる、国際物流のコーディネーターとしての役割も担うようになってきていると言えるのです。
「海貨業者」と「フォワーダー」は同じなの?
では、ここで今回のテーマである、「海貨業者」と「フォワーダー」は何が違うのか、という問いについて説明していきましょう。
結論から先に言えば、現在の「海貨業者」は、“結果的に”「フォワーダー」と同じ業務を担っていることも多いのですが、そもそもの役割が異なるため、「海貨業者=フォワーダー」ではない、というのが今回の問いの答えになります。
というのも、フォワーダーは、「国際輸送業務を取り扱う業者」を指しますが、海貨業者は、あくまで「港湾地区での手続きや物流を担う業者」を指し、必ずしもすべての海貨業者が国際輸送業務を取り扱っているわけではありません。
結果的に同じ役割を担っていることはあっても、本来は「フォワーダー=国際物流のコーディネーター」で、「海貨業者≠国際物流のコーディネーター」であると言えるでしょう。
ただ、日本では、もともと海貨業者であった会社がフォワーダーとなっているケースも多く、そうでなかったとしても、フォワーダーが国際輸送業務を遂行するにあたって、海貨業者と提携する必要があるために、「海貨業者≒フォワーダー」という図式が成り立っているのです。
ちなみに、貿易実務の書籍などでは、輸出入者の代わりに国際輸送業務を担う会社のことを「海貨業者」としている場合も多いようですが、実際の貿易事務の現場では、海貨業者と呼ぶことはほとんどなく、国際輸送業務を担う会社は、「フォワーダー」と呼ばれています。また、海貨業者の旧式の呼び名である「乙仲(おつなか)」が、フォワーダーと同じ意味で使われることも、時としてあるようです。
「貿易業界未経験だけれど、先に本を読んで試験勉強をしている!」という方は、「海貨業者は、実務では、フォワーダー(または、乙仲)と呼ばれている」ということも、ぜひ覚えておいてくださいね。
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