貿易事務の仕事のミスを減らしたい!よくある原因と対処法について
国内外の関係者とやり取りを行い、貿易取引に関する多くの書類を取り扱う貿易事務のお仕事。
業務に慣れていない初心者の方はもちろん、慣れている経験者の方でも忙しさのあまり、うっかりミスをしてしまうこともあるでしょう。しかし、そんな小さなケアレスミスが、大きなトラブルにつながってしまう可能性も…。
そこで今回は、貿易事務のお仕事で起こりがちなミスと、その対処法についてご紹介します。
- 目次
- そもそも貿易事務の業務内容って?
- 貿易事務のお仕事で起こりがちなミスの傾向とは?
- まずは専門用語や業務の流れをしっかり理解しよう
- ミスを防ぐコツ①チェックリストを作成する
- ミスを防ぐコツ②ダブルチェックを行う
- ミスを防ぐコツ③ミスが起こりやすい状況や時間帯を知る
- ミスを起こしにくい環境作りと影響を最小限に抑える工夫を!
そもそも貿易事務の業務内容って?
貿易取引では、異なる国の企業間でビジネスが行われるため、物品の発送や送金に国内取引とは異なるさまざまな手続きが必要になります。そんな貿易取引の事務手続きやスケジュール調整を行っているのが「貿易事務」のお仕事。
貿易事務の方が多く活躍している企業は、商品の売主・買主として貿易取引を行っている「商社やメーカー」のほかに、通関手続きを代行する「フォワーダー(通関業者・海貨業者)」、貨物を輸送する「船会社」「航空貨物代理店」などがあります。
就業先の企業や業界によって、貿易事務の主な担当業務が異なるため、まずは簡単にそれぞれの業務内容についてご紹介します。
商社・メーカー
商社・メーカー勤務の貿易事務は、商品の受発注、貿易書類の作成、輸出入時の船積み(輸送・通関)手配などが中心。一般的に、企業規模の大きい会社では、細分化されている業務範囲の一部を担当することが多く、中小規模の会社では、少人数のため、一人で幅広い業務を担うこともあるようです。
フォワーダー(通関業者・海貨業者)
フォワーダーは、商社・メーカーなどから依頼を受け、貨物の輸送や通関の手続きを代行している会社。フォワーダーの貿易事務の主な業務は、船積み手配や通関手配、必要な書類作成、取引先との折衝などで、正確なスケジュール管理を行い、効率良く業務を進めることが求められます。
船会社・航空貨物代理店
船会社・航空貨物代理店の貿易事務は、一般的にブッキング(船腹予約)の受付、船荷証券(B/L)やエアウェイビル(Air Waybill)の作成・発行といった輸送に関する事務業務を担当しています。貿易取引の「輸送」にだけ関わるお仕事ですが、船や飛行機には多数の荷物を積むため、より多くの予約受付やスムーズな書類発行が求められます。
このように、貿易事務職とひとくちに言っても、企業や業界によって具体的な業務内容は異なります。しかし共通するのは、「書類作成や確認といったPC作業・事務業務が多い」「さまざまな関係者との連携が求められる」といった点です。そのため、貿易事務の「よくあるミス」も、これらに関連しています。
※関連記事:『貿易事務職の仕事内容って?「商社・メーカー系」と「物流・フォワーダー系」との違いについて』
貿易事務のお仕事で起こりがちなミスの傾向とは?
では、「貿易事務のお仕事におけるよくあるミス」について、具体的な例をご紹介していきます。すでに貿易事務のお仕事をしている方であれば、以下のようなミスをしてしまい、ヒヤッとした経験もあるのではないでしょうか。
書類の記載ミス
例:過去書類からの記載事項の差し換えミス、金額の桁数入力ミス
書類の確認ミス
例:年度や日時、商品番号、金額など数字の誤読、書類内容の確認漏れ
メールの見落とし、電話連絡忘れ
例:メール・電話連絡があったことを忘れ、連絡漏れ
書類の送付忘れ、添付忘れ
例:不注意による書類送付忘れ、メールの添付漏れ
社内外の連携ミス、コミュニケーションミス
例:連携ミスによる業務遅延、コミュニケーションミスによる認識間違い
知識や理解不足によるミス
例:インコタームズや信用状など、書類内容に関する知識不足、業務の理解不足によるミス
これらは、貿易実務でミスをしやすい代表的なものです。
貿易事務のお仕事は、貿易書類の作成や確認の業務が大半ですが、書類には、社名や商品名、日時、便名、番号など多くの項目があります。
それぞれの項目は、どれも重要な情報のため間違いがあってはならないのですが、定型業務のなかでは“うっかりミス”が起こりやすくなります。
また、細分化された貿易関連業務の一部分を担当している場合は、慣れるとその業務が単調な作業のように感じられてしまい、不注意でのミスが起こりやすい傾向にあります。
一方で、一人で幅広い業務を担当している場合は、複数の取引を同時進行で対応するため、抜け漏れによるミスが起こりがちのようです。
このようなケアレスミスを完全になくすのは、至難の業。しかし、ミスを防止するさまざまな工夫をすれば、ミスを限りなくゼロに近づけることも可能でしょう。
まずは専門用語や業務の流れをしっかり理解しよう
貿易事務のお仕事でよくあるミスを防ぐためには、まず貿易取引における専門用語や、自分が行っている業務の流れをしっかりと理解して、お仕事に取り組むことが大切です。
貿易特有の専門用語の意味を理解する
貿易取引で取り扱う書類は、基本的に英語で記載されているものがほとんど。そのため、書類に英字で書かれた用語の意味を正しく理解していないと、ミスが発生する可能性も高くなります。
ミスを防ぐためにも、貿易関連の用語をしっかりと覚え、書類に書かれている内容を把握しておきましょう。
貿易取引全体の流れと担当業務の意味を理解する
自分が担当するお仕事や目の前の業務に必死になるあまり、取引全体の流れや関係者の仕事内容をよく理解していないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、貿易取引全体の流れを把握できれば、取引における自分の役割や担当する業務の意味を改めて理解することができ、それが実務の精度にもつながってきます。
取引全体を俯瞰して捉え、「何のためにその業務が必要なのか」「確認した書類がどんな場面で使われるのか」など自分の業務の目的や位置づけが分かると、ミスや不備が起こりやすいポイントも予見しやすくなるはず。
貿易取引全体の流れをもっと詳しく理解したいという方は、貿易実務検定(R)C級などを勉強して理解を深めると良いでしょう。
資格取得を目指すことで、自分の実務やこれからのキャリアに活かすことができ、モチベーションアップにもつながりますよ。
※関連記事:『【保存版】貿易取引の基本的な仕組みと流れを解説します!』
ミスを防ぐコツ①チェックリストを作成する
では、ここからは貿易事務職の具体的なミス防止策について、3つの対策法をご紹介していきましょう。
まず、ケアレスミスを防ぐ対策として、最も代表的ものが「チェックリストを作成し、確認作業の際に活用する」という方法です。
お仕事に慣れてくると確認を手短に済ませたり、おろそかになったりしがちですが、「作業の最後には、必ずチェックリストに沿って最終確認をする」などのルールを決めておくと、細かいミスを発見しやすくなります。
確認用のチェックリストを作ったら、実際の業務を行うなかで少しずつブラッシュアップしていきましょう。業務のなかで気づいたことをチェックリストに反映することで、確認の精度も上がっていきますよ。
また、お仕事に慣れないうちは確認する書類の見本(サンプル)を準備し、チェックが必要な箇所にマーカーで色をつけ、確認書類と照らし合わせながらチェックする方法がオススメ。
小さく声に出したり、指差し確認をしたり、目視以外の動作も入れてチェックをするとより効果的です。
ミスを防ぐコツ②ダブルチェックを行う
①のチェックリストを使い、「別の担当者にダブルチェックしてもらう」という方法もミス防止に有効です。
ダブルチェックとは、自分以外の第三者が確認を行うチェック方法で、他の人の目が入ることにより、自分では気づかなかったミスを発見しやすくなるというメリットがあります。
貿易業務に関わる担当者が少ない現場などは、ダブルチェックが難しいケースもあるかもしれません。
そのような場合は「間違えてはいけない重要箇所だけ、ダブルチェックを依頼する」など、工夫をしながらできるだけ、周りの方にも確認してもらえる体制を作っていくと良いでしょう。
<重要なチェック箇所の例>
商社・メーカーの場合:商品番号、発注数量、金額、支払い条件 など
フォワーダー・船会社の場合:日時、入出港先、船便名 など
ミスを防ぐコツ③ミスが起こりやすい状況や時間帯を知る
3つ目のミス防止法は、「ミスが起こりやすい状況や時間帯を把握しておくこと」です。
たとえば、眠くなりやすい昼食後や疲れているとき、忙しすぎて気持ちに余裕のないときなどは、集中力が落ち、ケアレスミスが増える傾向にあります。
集中力が続きにくい状況や時間帯を把握し、その時間は慎重に確認をするよう意識したり、集中力が必要な業務はしないようにしたり、業務を調整すると良いでしょう。
また、「定期的に適度な休憩を取る」「メドをつけるまで頑張り、少し時間をおいて再確認する」など、ミスなくお仕事がはかどる方法を、自分なりに見つけていってくださいね。
※関連記事:『ヒューマンエラー対策!いわゆる「うっかりミス」を防ぐ3つの方法』『集中力を高めて仕事の生産性UP!オフィスで簡単にできる集中力UP術』
ミスを起こしにくい環境作りと影響を最小限に抑える工夫を!
今回ご紹介した貿易事務のよくあるミスは、経験者ならほとんどの方が似たような経験をしたことがあるもの。
誰でも“うっかりミス”をしてしまう可能性はありますが、ミスが起きにくい環境を作ったり、ミスが起きても適切に対処し、影響を最小限に抑えたりすることが大切です。
今回ご紹介したミス防止策の例を参考に、自分でもできる工夫がないか、ぜひ考えてみてくださいね。
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