一定の期間、繰り返して使える「回転信用状(L/C)」
貿易特有の決済方法として利用されている信用状(Letter of Credit/L/C/エルシー)には、さまざまなバリエーションがあります。シゴ・ラボでも「確認信用状」「後日払信用状」「譲渡可能信用状」をご紹介していますが、今回は「回転信用状」の特徴、そしてどのようなケースで利用されるのかなどを解説します。
一般的なL/Cは、売買契約1件ごとに発行する
「回転信用状(Revolving L/C)」の特徴を理解するには、L/Cの基本を理解しておく必要がありますので、まずは一般的なL/Cのおさらいをしましょう。
L/Cとは
L/Cとは「輸入者(買主)の取引銀行が、輸出者(売主)に対して、当事者間の売買契約で交わされた商品代金の支払いを保証します」という、銀行の支払い保証書です。
L/Cには、商品出荷(輸出)の証明となるB/L(Bill of Lading/ビーエル/船荷証券) との交換で代金を支払うという条件があります。
よって輸入者は「商品をきちんと入手できるのか?」、そして輸出者は「商品代金を確実に回収できるのか?」という、それぞれの不安(リスク)を解消し、安心して取引ができるというメリットがあります。
※関連記事:「『信用状(L/C)』の役割とは?分かりやすく解説!」「『L/C(信用状)』取引における輸出入者と銀行の関係を理解しよう」
このL/Cは通常、売買契約1件ごとに輸入者が銀行に依頼して発行しなければなりませんが、 同じ取引先(輸出者)から、定期的に同じ商品を輸入している場合は、一定の期間内で繰り返し使えるL/Cを発行してもらうことができるのです。
そのL/Cを、「回転信用状(Revolving L/C)」と言います。
同一取引先、同一商品の、定期的な輸入に利用される「回転信用状(Revolving L/C)」
「回転信用状」が利用されるケースは、同一取引先、同一商品の継続的な輸入に限られます。例えば、メーカーが製品を作るため定期的に原料を輸入するケースなどで使われています。
仮に、このメーカーが年間で150万トンの原料が必要だとわかっていても、一度に仕入れをすれば、倉庫に入りきらないなどの問題があったり、一度に全額を支払うには金額が大き過ぎて多額の担保が必要になったりする問題から、分割して輸入していきたいと判断した場合に利用されます。
もちろん、こうした分割輸入でも一般的なL/Cで対応は可能です。しかし、輸入のたびに銀行へL/C発行を依頼するのは手続きに手間もかかるし、発行手数料や金利なども高くなってしまうため、それが避けられる「回転信用状」は利用価値があるのです。
「回転信用状」は一般的に、L/Cの支払い(手形支払い)が完了すると同時に*、そのL/Cと同額のL/Cが毎回自動的に復元(更新)される仕組みを持ち、L/C発行依頼の際に設定した最終期限日までは、繰り返し使用できるのが特徴です。
*支払いの完了と同時に自動的にL/C金額を復元する方式以外にも、一定期間(例えば、手形決済の予定日数)ごとに自動的に復元する方式、船積書類受領のタイミングで更新する方式などがあります。
先に挙げたメーカーの例で説明すれば、仮に各回15万トンの原料を輸入するならば、15万トンの金額を設定しておき、その決済のたびに再びL/Cが復元されます。
また、メーカーの年間推定輸入量は150万トンであっても、状況が変わって予定より輸入量が増えた(減った)場合にも対応が可能。これも「回転信用状」のメリットのひとつです。
ちなみに、「回転信用状」を発行してもらうためには、“同額のL/Cが自動的に復元される“という文言を記載したり、L/C金額復元のタイミングを決める必要があります。詳しい内容は、発行手続きを行う銀行に問い合わせてみてくださいね。
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