税関ってどんなところ?税関の役割や税関がある場所について解説!
海外との貿易取引において、なくてはならない存在なのが「税関」です。しかし、言葉自体は聞いたことがあっても、税関がどのような機能を持っていて、日本のどこにあるのかなど、詳しいことは知らないという方も多いかもしれません。
そこで今回は、税関の役割や所在地、税関と関わることが多いお仕事について、分かりやすくご紹介します。
「税」と「関」を取り仕切る税関の役割
税関とは、その名のとおり「税=税金の徴収」と「関=関所/通関手続き」に関する業務を行っている国の行政機関です。まずは、税関が担う「税」と「関」に関わる業務を5つに分けてご紹介します。
役割① 輸出入貨物の通関
通関とは、貨物の輸出入者が、貨物の検査を受け、輸出入の許可を得て、税関を通過することを言います。その審査や検査業務を行っているのが、税関です。
税関は日本の「関所」として、海外と日本で取引されている輸出品・輸入品をチェックし、輸出入者の申告が法に則っているか、内容や手続き方法なども確認して記録しています。また、輸入品の場合は、申告されている商品の関税の税率が正しいかどうかも厳しくチェックしています。
ただし、日々、貿易港に発着する貨物量は膨大な量があるため、税関職員が荷物を一つひとつチェックするということはありません。
基本的には申告された内容の確認が中心ですが、時には税関職員自らが保税地域(倉庫)に入り、実際に見て、貨物の検査を行ったり、化学検査を行ったりすることもあります。
役割② 関税の徴収
税関では、日本への輸入品に課せられた関税や消費税を徴収しています。申告内容の審査が通り、かつ所定の税を支払ったものに輸入許可がおりるため、税を支払わない品物は輸入できません。輸入品に関税をかける主な理由は、以下の2つです。
国の財源のため
2018年度に税関で徴収した関税や消費税は、約 9.1 兆円(前年度比5.8%増)に上ります。その額は日本の国税収入の約 14.2%を占め、国にとって重要な財源のひとつです。
日本国内の産業を保護するため
海外からの輸入品が国内の同一品より著しく安い場合、国内の同一品が市場で競争できなくなり、その結果、国内産業が衰退してしまう恐れがあります。そうした事態を避け、国内産業を守るために関税が課されている品物もあります。
また、税関は貿易に従事する船舶から、「とん税・特別とん税」も徴収しています。とん税とは、港湾施設などの行政サービスを受けることに対し、海外貿易船に課税する国税のひとつ。特別とん税は、地方税を指します。
ちなみに、輸出品には関税や消費税の支払いがないため、通常は役割①の書類審査を終えると輸出許可が出ます。
役割③ 密輸の取り締まり
税関は、輸出や輸入が合法的に行われているかを確認するため、税関監視艇による海上パトロールなども行っています。こうしたパトロールの中で、日本では輸入が禁止されている、麻薬・覚せい剤・拳銃などの密輸入を行っている船を発見・摘発することもあります。
また、海外出張や旅行から帰国した際、港や空港では税関職員による荷物検査が行われます。その際、お土産の合計金額が高額になると発生する税金の申告手続きや、X線検査装置などを使って輸出入が禁止されている品物の検査も行っています。
ちなみに、麻薬探知犬と一緒にパトロールを行っているハンドラーと呼ばれる人たちも、税関職員です。税関は「関所」としての役割を担いつつ、日本の納税制度の土台を支え、安全・安心な社会づくりを担っています。
役割④ 貿易秩序の維持・円滑化
日本は世界的に見ても貿易取引量の多い国のひとつであることから、迅速かつ円滑な手続き・処理ができる体制構築が社会的に求められています。
そうした背景もあり、近年は貿易業務の電子化が進み、税関や関係行政機関と連携しているオンラインシステム「NACCS(ナックス)」を使って、通関手続きの効率化が図られています。
役割⑤ 貿易統計の作成・公表
税関では、輸出入総額や貿易相手先国上位10カ国の推移・主要輸出入品の推移など、貿易にまつわるさまざまな統計データを取りまとめ、公表しています。
財務省貿易統計のHPに掲載されているので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
税関ってどこにあるの?
日本は島国のため、全国各地に港や空港がありますが、国際貨物が運ばれる拠点はその中の一部です。一部と言っても、国際海上輸送網の拠点となる港(重要港湾)は102カ所、国際空輸送網の拠点となる空港(拠点空港)は28カ所もあります(2020年4月現在)。
※関連記事:『日本には貿易港がいくつあるか知っていますか?』
これまでご紹介してきた通り、税関は、港や空港に到着する輸入貨物やこれから発送される輸出貨物を監視し、輸出入許可を出すという役割を担っています。日本では、函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司、長崎、沖縄地区の9つの地域*に税関が設置され、各税関がそれぞれの地域を管轄しています。
*沖縄地区以外の8つの税関は、財務省の地方支分部局という位置づけにあります
税関名 | 管轄 |
---|---|
函館税関 | 北海道、青森県、岩手県、秋田県 |
東京税関 | 山形県、群馬県、埼玉県、千葉県(一部)、東京都、新潟県、山梨県 |
横浜税関 | 宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県(一部)、神奈川県 |
名古屋 税関 |
長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 |
大阪税関 | 富山県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県 |
神戸税関 | 兵庫県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
門司税関 | 山口県、福岡県(一部)、佐賀県(一部)、長崎県(一部)、大分県及び宮崎県 |
長崎税関 | 福岡県(一部)、佐賀県(一部)、長崎県(一部)、熊本県、鹿児島県 |
沖縄地区 税関 |
沖縄県 |
各税関には支署や出張所などがあり、税関支署が68カ所、税関出張所と税関支署出張所が計105カ所、税関監視署と税関支署監視署が計10カ所あります(2020年7月現在)。
※参考: 税関「税関の機構」
全ての税関で通関ができるわけではない
国際輸送の拠点となっている港や空港では、各税関が通関業務を行っています。しかし、すべての貨物の通関ができるわけではありません。
例えば、植物防疫法や家畜伝染病予防法などの法令で規制されている品物(規制対象品)は、植物防疫所や動物検疫所のある港や空港(の保税地域)でなければ通関できません。
そのため、もし皆さんの会社が規制対象品だと分かっている品物を輸出入する場合は、輸出しようとしている港や空港で通関できるのか確認することをオススメします。
※関連記事:『輸入に関わる法律・規制を知っておこう』
税関との関わりが深いお仕事とは?
では、ここで、貿易に関わるお仕事の中でも、より税関と関わりのあるお仕事をいくつかご紹介します。
税関職員
税関は国家機関なので、税関で働く職員は国家公務員になります。税関職員には大きく分けて「総合職」と「一般職」の2つの道があり、国家公務員採用総合職試験、または、一般職試験を経て採用されます。
<主な仕事内容>
税関業務のすべてを担い、空港の手荷物検査、通関業務、船舶や航空機検査といった税関ならではの業務から、総務、人事、広報など、一般企業と同じような業務まで、多岐に渡ります。
通関士
貿易取引では、商社や貿易会社など輸出入者が自ら通関申告をすることはあまりなく、フォワーダーをはじめとする通関業者と呼ばれる専門会社が代理で行うことがほとんどです。
そのフォワーダーで通関手続きを行っているのが通関士です。法律上、通関士として輸出入者に代わって通関手続きを行えるのは、国家資格である「通関士試験」に合格した有資格者だけです。そのため、通関士は税関と密接に関わりのあるお仕事です。
<主な仕事内容>
主にクライアントである輸出者や輸入者(商社やメーカー)の貿易関連書類(B/Lやインボイスなど)の作成や、輸出入規制や各種法令の確認、通関する品物の分類(HSコード/統計品目番号)、関税額の算出など、通関手続きに必要な申告業務を行います。
※関連記事:『通関士とは|貿易事務からのキャリアアップ例もご紹介!』
貿易事務
貿易事務は、その名のとおり、貿易に関連する事務業務を担当するお仕事です。就業先は、輸出入を行う「商社」や「メーカー」が多く、その他に、輸送・通関手続きを代行する「フォワーダー」、貨物を輸送する「船会社」「航空貨物代理店」にも活躍の場があります。
<主な仕事内容>
就業先や会社の規模によっても仕事内容は異なりますが、商社やメーカーの貿易事務は、主に海外の取引先とのやり取りや受発注対応、輸送・通関手続きの手配、貿易書類の作成・確認、納期の調整などの業務を行います。
一般的に、通関手続きはフォワーダーに依頼するため、税関と直接やりとりすることはほとんどありません。しかし、輸出入する品物はすべて税関の許可が必要なため、税関と関わりのあるお仕事のひとつです。
※関連記事:『貿易事務とは|仕事内容や給料、向いている人の特徴についてご紹介!』
貿易取引に関わるお仕事に就くなら、税関への理解を深めよう!
今回は、税関の役割から税関に関連するお仕事まで、税関にまつわる基礎知識をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
貿易に携わっている方、今後、貿易のお仕事がしたいと思っている方は、税関が「税=税金の徴収」と「関=関所/通関手続き」に関わる業務を行う機関であること、貿易取引において、日本の安全を担っている重要な存在だということをぜひ覚えておいてくださいね。
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