日本の食の安全を守る「食品衛生法」を知ろう!
食品の安全性の確保と、飲食によって衛生上の危害が発生することを防止するために、国・自治体・食品関連事業者の責任、食品および添加物の基準、検査、表示など、食品に関する様々なことを定めた「食品衛生法」。
今回は、「食品衛生法」の定める規制内容の範囲や、商品を輸入する時の流れ、輸入通関時にリードタイムをなるべく短くする方法などをご紹介します。
食品衛生法ってどんなことを定めた法律なの?
「食品衛生法」は、食品や食にまつわる商品の輸入に関しても重要な法令で、以下の物品輸入を規制の対象とすることを定めています。
- 食品・飲料
- 食品添加物
- 調理器具、食器、容器、包装など食にまつわる物品
- 乳幼児が口に接触する可能性のあるおもちゃ(積木、人形、粘土、風船、ままごと用具など)
このリストを見て、食品や食品添加物だけでなく、調理器具や食器、乳幼児のおもちゃも含まれていることに驚かれたかもしれません。
つまり、食品衛生法は“人が口にするもの”すべてを輸入規制の対象とし、その輸入手続きなどを定めているのです。
食品衛生法に関わる商品を輸入するときの流れを知ろう!
では、早速ですが、食品衛生法に関わる商品を輸入するときの流れをご紹介します。
ここでみなさんに押さえていただきたいのは、輸入者は輸入する商品について、国内製造者や販売者と同じ責任を負うということ。
図にも示している通り、初回輸入時には検閲所での検査が行われることが多いのですが、原則的には、輸入者が責任をもって、輸入する商品の検査・管理を行う必要があります。
そのためにも、信頼できる輸出者(生産者・製造者)と提携することが大切になります。
※関連記事:「PL保険は商品の欠陥による損害を補償する」
日本では、誰でも食品にまつわる商品を輸入することができるのですが、“人が口にする物品”の輸入には大きな責任があることは、ぜひ覚えていてくださいね。
*酒類の輸入には「酒類販売業免許が必要」など、一部例外もあります。
輸入者は先行サンプルで事前に自主検査を行うこともできる
輸入者には商品衛生法に関わる商品であっても、輸入通関時にリードタイムをなるべく短くしたいという意向があります。
ここで利用されているのが、本輸入前に先行サンプルを登録検査機関に依頼して、事前に自主検査を実施するという方法です*1。
検査結果=サンプルの試験成績書を本輸入の通関手続きの際に提出することで、審査のみ(検査不要)におさえ、上図の「2のステップ」をショートカットして進められる可能性が高くなるのです。
*1食品衛生法に関わる商品の先行サンプル=販売目的ではないサンプルについては、食品等輸入届出書の提出は求められないため、事前の自主検査が可能です。ただし、販売目的でなくても、消費者に配布する場合は届出書の提出が必要です。
「可能性が高くなる」と言葉をにごしているのは、“必ずしも先行サンプルの試験成績書の結果が認められるわけではないから”*2。
あくまで最終的判断は検疫所に委ねられることになりますが、貿易実務の現場では、輸入者は自分たちの判断で事前検査を行うこともあります。
*2「本輸入の商品と先行サンプルが、同一条件のもと生産(製造)されているか」ということが確かな商品ばかりではないため、最終的な判断は検疫所に委ねられます。
なお、近年は、税関においても輸入通関手続きの簡素化・迅速化に取り組んでおり、同一食品の継続的な輸入に対する検査省略、日本政府が認めている外国の公的検査機関の検査結果の反映などが制度化されています。
貿易実務に長年携わっている方でも、食にまつわる輸入に関しては縁のない方もいらっしゃると思います。ただ、そのような方でも食にまつわる輸入品は身近なものだと思いますし、食品衛生法の存在、輸入手続きの流れなどは知っておいていただければうれしいです。
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参考サイト
- 食品衛生法/食品衛生法の審査|ジェトロ
- 輸入食品相談Q&A(第3版)|厚生労働省検疫所