【インコタームズ】船舶運送向きの条件〜FAS・FOB・CFR・CIF〜
貿易実務に携わる方にとって欠かせないのが「インコタームズ(Incoterms/貿易条件)」に関する知識。
そこで今回は、インコタームズ2020の「海上及び内陸水路輸送に適用する規則(以下:海上輸送に適用する規則)」として挙げられている4つの規則「FAS・FOB・CFR・CIF」について、詳しくご紹介します。
船舶輸送に適したFAS・FOB・CFR・CIF条件
今回ご紹介する4つの規則は、「海上輸送に適用する規則」とあります。
しかし、現在主流となっているコンテナ船の海上輸送ではなく、コンテナでは対応できない多種多様な形状のものを輸送する「在来船」(岸壁から直接船舶へ積卸す従来型の船)を対象としています。
ちなみに在来船には、冒頭の写真のように、コンテナ船では見られない船上にクレーンが付いている船もあります。
貿易事務に就いている方でも、コンテナ輸送しか取り扱っていない方には馴染みがないかもしれませんが、貿易取引ではコンテナ輸送には入りきらない貨物も当然あり、「在来船」もまだまだ活躍しています。
では、この4つの規則が規定する「危険負担」と「費用負担」の分岐点を、下図で見ていきましょう。
FAS・FOB・CFR・CIFの危険負担、費用負担
まず、着目していただきたいのが、危険負担の分岐点。先ほど、この4つの規則はコンテナ船を対象としていないとご説明しましたが、その理由はこの危険負担の分岐点にあります。
FASは指定された船積港において、貨物が埠頭上または艀(はしけ)に積み込まれて本船の船側に置かれた時点で、FOB、CFR、CIFは本船上に置いた時点で、危険負担が移転する規則。
しかし、コンテナ船の輸送の場合、実際にコンテナをターミナルに置き、船に積むのは港湾業者や船会社が担っており、輸出者は本船の船側や船上への荷卸しに関与することはできません。
つまり、この4つの規則は、輸出者がコントロールしようのない地点まで危険負担の範囲となってしまうために、同じ海上輸送でも、コンテナ輸送は適していないとされているのです。
*なお、この問題は根深いものがあり、コンテナ輸送であっても、伝統的規則であるFOB、CFR、CIFを使用するケースが多々あります。ただ、インコタームズを制定している国際商業会議所(ICC)も、日本貿易振興機構(ジェトロ)も、コンテナ輸送は、FCA、CPT、CIPの方が適していると繰り返し明言していることなので、この記事でもご紹介させていただきました。FCA、CPT、CIPについては以下の記事をご覧ください。
※関連記事:『インコタームズ/コンテナ運送向きの条件〜FCA・CPT・CIP〜』
では続いて、この4つの具体的な内容と、その使用例をご紹介します。
FAS(船側渡)/Free Alongside Ship (…named port of shipment)
FASは、商品を指定船積港の本船の船側に置いた時点で、売主(輸出者)の引き渡し義務が完了し、買主(輸入者)が、その時点から一切の費用及び減失・損傷の危険を負担するという規則です。
FOB(本船渡)/Free On Board (…named port of shipment)
FOBは、商品を指定船積港で本船の船上に置いた時点で、売主(輸出者)の引き渡し義務が完了し、買主(輸入者)が、その時点から一切の費用及び減失・損傷の危険を負担するという規則です。
CFR(運賃込)/Cost and Freight (…named port of destination)
CFRは、売主(輸出者)の引き渡し場所、危険負担の範囲はFOBと同じですが、売主(輸出者)が商品の指定仕向港までの運送費用を負担するという規則です。
*実務においては伝統的な表現であるC&Fと表現されることもあります。ただ、CFRが正しい名称ですので、契約書などにはこちらを記載しましょう。
CIF(運賃保険料込)/Cost, Insurance and Freight (…named port of destination)
CIFは、売主(輸出者)の引き渡し場所、危険負担の範囲はFOBやCFRと同じですが、売主(輸出者)が商品を指定仕向港までの運送費用と保険料を負担するという規則です。
*CIFで売主(輸出者)に義務づけられている保険条件は、最低限の填補範囲であるICC約款(C)と規定されています。買主(輸入者)がそれより広い填補範囲の保険条件を求めてくる場合は、契約段階で合意しておく必要があります。
「FAS・FOB・CFR・CIF」それぞれの違いについて理解できたでしょうか。インコタームズは、少し分かりづらい規則ですが、さまざまな貿易取引で使用されるため、しっかりと理解しておきましょう。
*なお、最新版の国際規則としては、インコタームズ2020(英語版)がリリースされており、2020年1月1日から発効される予定です。最新情報は、下記、国際商業会議所のHPをご覧ください。
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