船荷証券(B/L)ってどんな書類?英語の記載項目の意味を理解しよう!
貿易取引では、取引される「モノ(商品)」、対価となる「カネ(代金)」、取引の手続きに必要な「カミ(書類)」の流れを把握して、業務を進めることが大切だと言われています。
貿易実務を行うなかで、さまざまな貿易特有の書類が登場しますが、そのなかでも特に扱うことが多い書類が、「船荷証券(ふなにしょうけん/B/L)」です。船荷証券(B/L)には、貿易取引における多くの重要事項が記載されています。
今回は、船荷証券(B/L)の役割や、一般的な船荷証券(B/L)に記載されている記載項目とその意味について、詳しくご紹介します。
- 目次
- 船荷証券(B/L)ってどんな書類?
- 貿易取引における船荷証券(B/L)の流れって?
- B/L記載項目【上部】輸出入に関する基本情報を記載
- B/L記載項目【中央部】貨物の概要を詳しく記載
- B/L記載項目【下部】運賃計算・書類発行・船積み証明の情報を記載
- 基本となるB/Lの記載項目の意味をしっかり理解しておこう!
船荷証券(B/L)ってどんな書類?
船荷証券(Bill of Lading:B/L)とは、貿易取引における船積書類のひとつで、船会社が輸出者の貨物を受け取った際、輸出者に対して発行する書類です。実務では、通常「B/L(ビーエル)」という略称で呼ばれています。
発行された船荷証券(B/L)は、輸出者から輸入者へと渡り、輸入地で「貨物の引換証」としての役割を果たすことになります。貨物の引換証としての役割をはじめ、以下の4つの機能を持った貿易取引における重要書類が、この船荷証券(B/L)です。
①貨物受取証:輸出者に対して、船会社が貨物を受け取ったことを証明する書類
②運送契約書:船会社と荷主の間での運送契約を証明する書類
③有価証券:貨物の所有権を証券として示した書類(裏書きによって転売が可能となる)
④貨物引取証:輸入者が輸入地で貨物を引き取るときに必要となる書類
貿易取引における船荷証券(B/L)の流れって?
先ほど、船荷証券(B/L)には上記①~④の4つの機能があるとご紹介しましたが、貿易取引のどんな場面でそれらの役割を果たしているのでしょうか。
①~④の役割に着目しながら、下記の図で貿易取引における船荷証券(B/L)の流れと機能について、確認していきましょう。
まず、貨物を受け取ったことを証明する①貨物受取証として、輸出地の船会社から船荷証券(B/L)が発行されます。②運送契約書でもある船荷証券(B/L)は、その後フォワーダーという専門業者を介して輸出者へと提出されます。
そして、所有権を引き渡す③有価証券として、貨物の海上移動とともに船荷証券(B/L)は輸出者から輸入者へと渡されます。
その後、輸入地での④貨物引取証として、輸入者は船荷証券(B/L)を船会社に提出し、貨物を引き取るという流れになっています。
なお、船荷証券(B/L)は船会社から発行されるものですが、商社やメーカーをはじめとする多くの輸出者は、船荷証券(B/L)の発行手続きをフォワーダーに代行してもらっています。
フォワーダー以外の貿易事務担当者が、船会社へ直接、船荷証券(B/L)の発行を依頼することはまずありませんが、以下のような流れで船荷証券(B/L)が発行されていることも、ぜひ覚えておいてくださいね。
※関連記事:『B/L(船荷証券)を入手する流れを把握しよう!』
B/L記載項目【上部】輸出入に関する基本情報を記載
船荷証券(B/L)の上部では、輸出者・輸入者の基本情報や、輸出地・輸入地の情報、輸送する船の名称などが記載されます。
①Shipper:荷送人
②Consignee:荷受人*2
③Notify Party:着船通知先*3
④Pre-carriage by:船積港までの貨物の内陸運送手段
⑤Place of Receipt:貨物の受取地
⑥Ocean Vessel:本船名
⑦Port of Loading:船積港(仕出港/積み地)
⑧Port of Discharge:荷降港(仕向港/揚げ地)
⑨Place of Delivery:貨物の引渡地
⑩Final Destination(for the Marchant’s reference only):最終仕向地
*1【受取式船荷証券(Received B/L)と船積式船荷証券(Shipped B/L)の違い】
船荷証券(B/L)には、実際に荷物の船積みが完了しているかどうかを示す箇所があり、「Received by the carrier…」または「Shipped on board the vessel…」と記載されています。前者は「受取式船荷証券(Received B/L)」、後者は「船積式船荷証券(Shipped B/L)」と呼ばれています。
在来船の場合は、貨物が船積みされた後に「船積式船荷証券(Shipped B/L)」が発行されるのが一般的。コンテナ船の場合は、CY(コンテナ・ヤード)またはCFS(コンテナ・フレイト・ステーション)での貨物の受け渡し完了後に「受取式船荷証券(Received B/L)」が発行されます。
しかし、受取式船荷証券(Received B/L)は、これだけだと“船会社が船積みしたことの証明”にはなりません。
そのため、輸出者またはフォワーダーが船会社に依頼し、船積み後に「On Board Notation」のスタンプをもらったり、B/Lの下部にある「Laden on board the vessel」の欄に日付とサイン*8をもらったりする必要があります。
*2【②Consignee:荷受人】
Consignee欄には、輸入者名または「To order/To order of shipper」という文言が記載されます。
「To order/To order of shipper」とは、“荷送人(輸出者)の指図・指示により”という意味で、これが記載されているものは、荷送人が誰にでも貨物を譲渡できる「指図式船荷証券(Order B/L)」と呼ばれています。
“輸入者の支払いは輸入地銀行が保証する”という担保がある信用状(L/C)取引では、この「指図式船荷証券(Order B/L)」が使われています。
※関連記事:『B/LのConsignee(荷受人)欄に書かれている「To order」って?』
*3【③Notify Party:着船通知先】
Notify Partyとは、船が荷降港に着く際、船会社が到着連絡を行う「連絡先」を記入する欄です。通常、輸入者名と合わせて輸入者の電話番号・FAX番号が記載されます。
この連絡先が間違っていると、船が到着しても輸入者への連絡が付かなくなってしまします。船荷証券(B/L)をチェックするときは、しっかり確認するようにしましょう。
B/L記載項目【中央部】貨物の概要を詳しく記載
船荷証券(B/L)の中央部では、輸送するものの品目やコンテナ番号、梱包の種類、総数、総重量、容積など、貨物の概要が詳しく記載されています。
⑪Container No.:コンテナ番号
⑫Seal No.:シール番号
⑬Marks & Nos.:荷印(にじるし)*4
⑭No. of Containers or Pkgs:コンテナの数、または梱包の数
⑮Kind of Packages:梱包の種類*5
⑯Description of Goods:貨物の内容・品目
⑰Gross Weight:総重量/Net Weight:梱包材を除いた正味重量
⑱Measurement:容積(CBMまたはM3表記)*6
⑲Total Number of Containers or Packages(in words):梱包総数(文字表記)
*4【⑬Marks & Nos.:荷印】
荷印(にじるし)とは、輸送時の紛失を防ぐために、商品の梱包(段ボール箱・容器など)に記載された貨物を特定する表示のこと。「Case Mark」「Shipping Mark」と呼ばれることもあります。
※関連記事:『荷印の「C/No.1-UP」の意味って?Case Mark、Shipping Markの役割とは』
*5【⑮Kind of Packages:梱包の種類】
Kind of Packages;の欄では、商品の梱包状態が記載されます。
梱包には、「Carton Box(CTN、C/T):カートン・紙箱」「Wooden Case:木箱」「Crate:枠箱・クレート」「Bale:ベール(布・ビニール・テープなどで巻いたもの)」「Drum:ドラム」「Bundle:束」など多くの種類があるので、どんなものがあるか覚えておきましょう。
※関連記事:『ダンボール箱以外の輸出梱包の種類』
*6【⑱Measurement:容積に記載される単位】
「CBM」とは、Cubic Meter(立方メートル)の略語。1立法メートル(1m×1m×1m)で「1CBM」と表記されます。CBMは「M3(エムスリー)」とも呼ばれることもあり、船荷証券(B/L)では、CBMまたはM3いずれかの単位で記載されます。
※関連記事:『CBM(Cubic Meter)とは?計算方法もご紹介!』
B/L記載項目【下部】運賃計算・書類発行・船積み証明の情報を記載
船荷証券(B/L)の下部には、運賃計算に関する情報と、書類発行・船積み証明に関する情報が記載されています。
⑳Freight & Charges:運送費用
㉑Revenue Ton(RT):レベニュー・トン(運賃計算)*7・8
㉒Rate Per:運賃料率(船会社と取り決めた運賃を記載)
㉓Prepaid:先払い
㉔Collect:着払い
㉕Ex.(Exchange) Rate:運賃計算用為替相場
㉖Prepaid at:先払い運賃支払地(インコタームズCFA・CIP・CFR・CIF条件など)
㉗Payable at:着払い運賃支払地(インコタームズFCA・FOB条件のときに「Payable at Destination」と記載される)
㉘Total Prepaid in Local Currency:現地通貨による前払運賃総額(記載されないことが多い)
㉙Number of Original B(s)/L:オリジナルB/L発行通数
㉚Place of B(s)/L Issue Date:B/Lの発行地と発行日
*7【㉑Revenue Ton:レベニュー・トン】
Revenue Tonは、貨物の容積と重さを比較し、重い方を基準とした運送料金算出方法のこと。LCL貨物の場合、運賃は通常「1CBM=1トン」を基準に算出されます。
※関連記事:『知っていて損はない!海上運賃とサーチャージ』
*8【Freight Prepaid as Arranged:アズアレ】
「Freight Prepaid as Arranged」とは、“輸出者がすでに海上運賃を支払った”ことを示す表記です。
インコタームズ で輸出者が輸入地までの運賃を支払う条件のとき、「Freight Prepaid as Arranged」という記載があれば、輸出者は輸入者に運賃を知られずに、運賃の支払い証明ができます。
※関連記事:『B/Lに記載されている「Freight Prepaid as Arranged(通称:アズアレ)」って何?』
*9【Laden on Board the Vessel By:署名/Date:日付】
*1でご紹介した通り、受取式船荷証券(Received B/L)の場合、船会社は「Laden on Board the Vessel」欄に署名と日付を記載し、“貨物が船積みされたこと”を証明します。
基本となるB/Lの記載項目の意味をしっかり理解しておこう!
貿易取引において重要な役割を果たす船荷証券(B/L)。今回は、船荷証券(B/L)の4つの役割をはじめ、書類の記載項目や内容について詳しくご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
船荷証券(B/L)には、宛先や貨物の概要、運賃などが記載されているため、国内で荷物を送るときに使う「送り状・伝票」と基本的な役割は似ています。しかし、船荷証券(B/L)には、貿易取引に必要となる詳細情報が記載されていたり、貨物を引き取るための証明になったりといった重要な特徴があります。
船荷証券(B/L)を通して安全かつスムーズな貿易取引が成立しているため、貿易に携わっている方は、ぜひその役割や内容をしっかりと理解しておいてくださいね。
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