【資格】全経簿記の「合格率」と「各級のレベル」を解説!
経理のお仕事に欠かせないのが、簿記の知識。「簿記検定」を持っていると転職に有利であり、取得していることで知識の証明にもなります。簿記検定の中でも知名度が高いのは「日商」簿記検定ですが、今回はより合格率が高いとされている「全経」簿記能力検定についてご紹介します。
全経簿記ってどんな資格?
全経簿記能力検定(以下、全経簿記)は、公益社団法人全国経理教育協会が行っている簿記能力検定試験です。日商簿記と同じく、企業で経理事務を担当する方には有効な試験と言えるでしょう。
難易度は全商簿記よりも高く、日商簿記よりも低めである傾向があります。全経簿記の基礎から2級は、一部では「合格させる試験」と言われるほど、比較的受かりやすい試験になっています。
全経簿記の合格率
2019年11月24日に施行された第196回の合格率は以下の通りです。なお、この回では上級の試験は行われていません。
上級 | 1級 | 2級 | 3級 | 基礎 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
商会 | 原工 | 商簿 | 工簿 | |||||
受験申込人数 | – | 758 | 727 | 2,351 | 1,201 | 8,917 | 1,461 | 15,415 |
実受験者数 | – | 647 | 614 | 2,147 | 1,109 | 8,370 | 1,353 | 14,240 |
合格者数 | – | 369 | 340 | 1,185 | 670 | 5,644 | 1,098 | 9,306 |
合格率 | – | 57.03% | 55.37% | 55.19% | 60.41% | 67.43% | 81.15% | 65.35% |
*商会=商業簿記/会計学、原工=原価計算/工業簿記、商簿=商業簿記、工簿=工業簿記の略語になります。
次に、2019年7月14日施行の第195回の合格率はこちら。
上級 | 1級 | 2級 | 3級 | 基礎 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
商会 | 原工 | 商簿 | 工簿 | |||||
受験申込人数 | 2,229 | 808 | 892 | 2,350 | 965 | 6,035 | 1,132 | 14,411 |
実受験者数 | 1,929 | 639 | 742 | 2,130 | 895 | 5,451 | 1,041 | 12,827 |
合格者数 | 314 | 141 | 514 | 1,119 | 728 | 2,973 | 766 | 6,555 |
合格率 | 16.28% | 22.07% | 69.27% | 52.54% | 81.34% | 54.54% | 73.58% | 51.10% |
過去のデータを見ると、上級の合格率は15%前後 、1級の商業簿記/会計学については20~50%と幅が見られます。
全経簿記各級のレベル感
全経簿記には、「上級」「1級」「2級」「3級」「基礎」の試験枠があります。3級は商業簿記のみですが、2級は商業簿記と工業簿記、1級は商業簿記/会計学と原価計算/工業簿記にそれぞれ分かれているのが特徴。
合格基準は各科目(100点満点)70点以上ですが、1級で商業簿記/会計学と原価計算/工業簿記のうちどちらかに合格した場合は、1年以内に残りの科目を合格すれば資格取得になります。
2級は商業簿記と工業簿記が分かれています。しかし、1級は1つの資格で、両方に合格してはじめて資格取得になります。
上級も1級と同じ、商業簿記/会計学と原価計算/工業簿記について出題されますが、こちらは科目で合格・不合格が分けられていません。各科目(100点満点)で40点以上、かつ全4科目の合計得点で280点以上が条件です。ひとつでも40点を下回ると、不合格になってしまいますのでご注意ください。
上級
合格するには、商業簿記/会計学において最新の会計基準を理解して財務諸表を作成でき、上場企業で経営管理業務の一環として会計情報を利用できるレベルの高度な知識・スキルが必要になります。
工業簿記/原価計算では、製造・販売過程に関する原価理論を十分に理解し、経理や公認会計士のような専門職を目指す方を対象にしています。製造販売過程の責任者としての意思決定や、業績評価のための会計が運用できることが条件です。
日商簿記1級よりも合格率は高く、就職や転職の際にスキルをアピールする十分な手段になるでしょう。
そしてなんといっても最大のメリットは、上級に合格すれば税理士試験の受験資格が得られるということ。経理・会計職からのステップアップとして、税理士を目指すなら、全経簿記上級を取得する価値があるでしょう。
1級
1級の商業簿記/会計学では、大規模な株式会社の経理・会計・財務として複式簿記の仕組みに精通し、自社の業種だけではなく、他業種にも応用できる能力が求められます。連結財務諸表の初歩的な知識、税金の処理や決算整理、損益計算書(P/L)・貸借対照表(B/S)・株主資本等変動計算書を作成する知識とスキルが必要になります。
1級の原価計算/工業簿記は中小企業レベルの規模を対象としていて、製造業の経理管理者として原価について詳しく理解したうえで、複式簿記に精通し、製造過程の帳簿を作成できるレベルが求められます。
2級
会社法の株式会社の仕組みを理解しているのが前提で、中小企業の経理・会計・財務担当や経営者として活躍できるレベルが求められます。
具体的には小売や卸売業にかかわらず、他業種にも応用できる資本の調達や帳簿の作成ができる必要があります。また、見越し・繰延べを行う決算整理や、損益計算書と貸借対照表を作成できるスキルも必須です。
工業簿記については、製造業の簿記の学習導入部とされていて、現場の経理担当者として工程管理や実績原価にもとづいた帳簿の作成や管理能力が必要とされます。
3級
3級では、商業簿記のみが出題されます。小規模な企業の経理・会計として、小売業や卸売業を管理するための基本の帳簿が作成できるレベルが必要になります。
また、照合機能を中心とした複式簿記の仕組みを理解し、資産負債勘定や基本的決裁整理、営業費用の決算整理(簡単な見越し・繰延べの処理)、損益計算書と貸借対照表を作成できる能力が求められます。
基礎
基礎の試験は、簿記会計学の入門的な位置付け。経理・会計に携わる者として、基本的な帳簿の作成や複式簿記の原理と仕組みが理解できている必要があります。また、決算整理がない損益計算書と貸借対照表、もしくは会計報告書を作成できるスキルも求められると考えておきましょう。
それぞれのレベルに合った試験にチャレンジしよう
どの検定にも言えることですが、試験を受ける際には高望みをし過ぎず、まずは自分のレベルに合わせた級を受験することから始めましょう。一歩一歩、確実に資格を取りながら、スキルアップを目指しましょう!
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