経理のキャリアアップにオススメの検定・資格は?経験・レベル別にご紹介!
経理としてお仕事の幅を広げたい方へオススメしたいのは、キャリアアップにつながる検定・資格を取得することです。
「〇〇検定を取得する!」といった明確な目標を持つことで、スキルアップの指標になるだけでなく、今後のキャリアを見据えたお仕事へのモチベーションもアップすることでしょう。
ただし、大切なのは“自分に合った検定・資格をキチンと見極める”こと。キャリアプランの方向性や自分のレベルと照らし合わせながら、今取得するべき検定や資格にチャレンジしましょう。
今回は経理スキルのレベル別に、お仕事で役立つ検定・資格についてご紹介します。
- 目次
- 経理「初心者」にオススメの検定・資格って?
- 経理「経験者」にオススメの検定・資格って?
- 経理「プロフェッショナル」にオススメの検定・資格って?
- 経理としての成長を目指すなら、より高度な資格取得も検討しよう
経理「初心者」にオススメの検定・資格って?
経理のキャリアをスタートして間もない頃(1年未満)は、日常業務や仕訳処理を覚えることで精いっぱいかもしれません。そんなときは、まずは日々の業務をしっかり覚えることに専念しましょう。
日常業務をマスターして月次決算の補助業務も担当できるようになったら、次のステップへ進むための資格取得を考えてみてはいかがでしょうか。
初心者レベルの業務スキル
まずは経理の基本とも呼べる、伝票起票、請求書処理、現預金管理、売掛・買掛管理などを担当します。これらの日常業務をマスターしながら、月次決算の補助業務などにもチャレンジしていきます。
初心者にオススメしたい検定・資格の種類とは
簿記の基礎知識に関する資格や、基本的なPCスキルの資格を取得するのがオススメ。どちらも、学んだことをすぐに実務で活かせるため、学習へのモチベーションも高まるでしょう。
経理関連
日商簿記検定:3級、2級
会計系の資格で一番メジャーともいえる、日本商工会議所主催の簿記検定です。実務にもとづいた問題が出題され、難易度順に、初級、3級~1級までの計4段階があります。
簿記を理解することで、業務に必要な知識や財務諸表を読み解く力が身につくため、経理職の方ならぜひ取得しておきたい検定のひとつです。
まずは、独学でも取得しやすい3級を取得し、基礎が身についてから2級へチャレンジしましょう。基本的な株式会社の簿記に相当する2級を所持していれば、転職やキャリアアップの助けにもなりますよ。
※関連記事:『未経験から経理になるには簿記何級が必要?そもそも、資格取得って必須なの?』
PASS(経理事務パスポート)検定:2級
一般社団法人日本CFO協会が主催する検定で、レベルは3級~1級まであります。事務スタッフに求められる実践重視の経理知識が問われる検定で、比較的取得しやすい難易度でもあります。
2級では現預金管理や請求処理など、初級経理レベルの実務に関連する内容が出題されるため、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※関連記事:『【未経験】新しい経理試験『PASS』ってなに?』
PCスキル関連
日商PC検定:ベーシック~2級
日本商工会議所が主催するPC検定で、Wordを使用する「文書作成」、Excelを使用する「データ活用」、PowerPointを使用する「プレゼン資料作成」の計3分野があります。
「プレゼン資料作成」は3~1級、「文書作成」「データ活用」は3~1級に加えて入門編のベーシックというレベルもあり、それぞれの分野・レベルを個別に受験できるのが大きな特徴です。
実際のビジネスシーンでも活用できる実践的な問題が多く出題され、ベーシックと3級は独学でも合格しやすいレベルと言われています。なお、3~1級は知識問題と実技問題があり、ベーシックは実技のみです。
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト):スペシャリスト(一般)、エキスパート(上級)
Office製品の操作スキルを証明するマイクロソフト公認の国際資格で、試験科目は「Word」「Excel」「PowerPoint」「Access」「Outlook」の5つがあります。
そのうちWordとExcelだけは「スペシャリスト(一般)」のほかに、さらに難易度の高い「エキスパートレベル(上級)」も存在します。
2019年8月時点で累計430万人が受験している知名度の高い資格で、筆記試験はなくPC上での実技試験のみ。試験は全国で毎月実施されており、試験終了後にPC上にて合否の結果が表示されます。
※関連記事:『【資格】経理・会計畑で役に立つ資格「MOS」の正体とは?』
経理「経験者」にオススメの検定・資格って?
経理として2~3年程度の実務経験を積んだ方は、次のステップに向けたスキルアップを考えてみると良いでしょう。
経験者(2~3年程度)レベルの業務スキル
経理として2~3年の経験を積めば、日常業務~月次決算の一連の処理ができるようになっている方も多いはず。年次決算に携われるよう、さらに専門性を高めていきたいところです。
経験者が取得した方が良い検定・資格の種類とは
経理業務の+αとなる知識・スキルの習得がキャリアアップにつながります。実務に関する知識・スキルが証明できる資格や、給与計算や財務諸表の分析など特定の専門分野に関する資格がオススメ。
実務スキル・知識を証明する資格
FASS(経理・財務スキル)検定:レベルC(561~640点)、レベルB(641~688点)
FASS検定は、一般社団法人日本CFO協会主催の「会計・財務分野に特化した実務スキル」を客観的に測定する検定試験です。資産、決算、税務、資金の4分野から出題され、スコアによってE~Aまでのレベルを判定されます。
現金出納管理、月次業績管理、税務申告などの業務にも活かせるため、第一線で活躍する経理としての実力を証明する手段として、ぜひ取得したい資格のひとつです。
※関連記事:『【資格】「FASS」でグローバル時代の経理・財務スキルを測る』
専門分野に特化した資格
他にも、経理業務に役立つ専門分野に特化した資格が数多くあります。転職市場におけるニーズや将来性も考えながら、自分の得意分野を強化していきましょう。
給与計算実務能力検定:2級、1級
一般社団法人実務能力開発支援協会が主催している検定試験で、2級と1級があります。
給与計算は、法律や仕組みについての知識を要する専門性の高い業務。労働基準法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法などの法律に精通し、複雑な給与計算の仕組みも熟知していなければいけません。
この資格を保持していれば、「給与計算業務ができる」という実務スキルの証明になるでしょう。
ビジネス会計検定試験:3級、2級
大阪商工会議所、施行商工会議所が主催する検定試験で、3級~1級まであります。
経理や財務担当者だけでなく、幅広いビジネスパーソンに向けた「財務諸表に関する知識や分析力」を測る検定です。
3級は「連結財務諸表の構造と読み方」や「財務諸表の基本的な分析」、2級は「キャッシュ・フローの分析」や「損益分岐点の分析」などが出題範囲に含まれます。
マイナンバー実務検定:1級、2級
全日本情報学習振興協会が主催するマイナンバー実務検定は、2015年8月からスタートした新しい検定試験です。
経理パーソンだけでなく、官公庁の担当者や人事・総務スタッフなども多く受検しており、そこまで難易度も高くありません。また、1級に合格した場合は、所定の条件を満たすと「マイナンバー管理士」として認定されます。
※関連記事:『経理の王道キャリアプランって?スキルアップ方法やキャリアチェンジ先についても解説!』
経理「プロフェッショナル」にオススメの検定・資格って?
経理として3~5年以上の経験を積み、年次決算業務ができるようになれば、次のステップを考えるタイミングです。経理の実務スキルを上げるための資格取得は卒業し、次のキャリアを見据えたステージへ進みましょう。
プロフェッショナルレベルの実務スキル
経理として3~5年以上の経験を積み、決算書(財務諸表)作成などの年次決算業務ができるようなレベルになれば、通常の業務に必要な実務スキルは満たしているはず。
企業経理のプロフェッショナルとして、より専門性の高い知識の習得や、知識を活かしたキャリアチェンジを考えてみても良いでしょう。
プロフェッショナルが取得した方が良い検定・資格の種類とは
プロフェッショナルレベルの実務スキルがあれば、その先のキャリアパスも大きく広がります。まずは、どの分野で専門性を高めていきたいのか、キャリアの方向性をじっくり考えてみましょう。
たとえば、「英文経理として外資系企業へ転職する」「分析力を磨いて経営管理のポジションに就く」など、理想のキャリアプランを考え、それを実現するために役立つ検定・資格を目指しましょう。
次にご紹介する資格は、いずれも難易度が高い資格ではありますが、自分のキャリアアップにつながると捉え、前向きにチャレンジしてみてくださいね。
目指すキャリア別のオススメ資格
公認会計士、税理士
日商簿記検定:1級
公認会計士や税理士といった国家資格の登竜門としても知られる日商簿記1級。高度な商業簿記・工業簿記に加えて、企業会計や経営分析に関する知識も求められる検定試験です。
なお、日商簿記1級に合格すると、税理士試験の受験資格を取得できます。
公認会計士試験
公認会計士試験は、学習時間目安が3,000~5,000時間とも言われる難関試験で、会計学を始め、監査論、企業法、租税法などの幅広い知識が問われます。
公認会計士の資格を取得すれば、企業の財務諸表が適性か判断する「法定監査」を主業務とする監査法人、金融機関、コンサルティング会社などへの就職が見込めるほか、独立も可能です。
税理士試験
公認会計士試験と並び、会計系資格の中で最難関と言われるのが税理士試験。こちらも、必須科目には簿記で学習した知識を問う「簿記論」「財務諸表論」などが含まれています。
税理士は、税務署に提出する申告書の作成が主業務となり、資格取得後の就職先として、会計事務所や税理士法人、金融機関などが挙げられるほか、独立も可能です。
英文経理
IFRS(国際会計基準)検定
ロンドンに本拠地を置くICAEW(イングランド・ウェールズ勅許会計士協会)が主催する、グローバルに通用する経理・会計・財務・税務スキルを得られる英文会計検定。世界100ヶ国以上で普及している国際会計基準「IFRS」に基づいて出題されます。
なお、こちらは日本語でも英語でも受検可能という特徴があります。
BATIC(国際会計検定):コントローラーレベル(1,000点満点中880点以上)
東京商工会議所が主催する、国際的な会計知識を測る検定です。IFRS検定と同じように、IFRSを会計基準にして英語で出題され、出題科目は英文簿記(Subject1)と国際会計理論(Subject2)の2つです。
スコアによってレベル判定されるのが特徴で、最上級であるコントローラーレベルは日商簿記1級と同程度、続くアカウンティングマネジャーレベルは日商簿記2級と同程度のレベルとされています。
※関連記事:『【英文経理】IFRS検定とBATIC、受験するならどちらが良いの?』
USCPA(米国公認会計士試験)
NASBA(全米州政府会計委員会)が主催するアメリカの会計基準(USGAAP)に基づいた公認会計士資格(国家資格)です。試験はすべて英語で行われ、合格すればUSGAAPでの会計・監査・コンサルティングのプロとして認められます。
英語力と会計・監査の専門知識を兼ね備えた人材としても評価されるため、転職を目指す財務・経理担当が、キャリアアップの一環で受検するケースも増えています。
資格を取得すれば、海外進出を目指す国内企業、外資系企業、会計事務所、監査法人など幅広いフィールドに活躍の場が広がるでしょう。
IR、財務
財務報告実務検定
財務報告実務検定は、ディスクロージャー(主に上場企業が投資家や取引先に対し、経営に関する情報を公開すること)の知識を持つ人材を育成するため、一般社団法人日本IPO実務検定協会が実施している検定試験です。
ディスクロージャーの重要性が注目されるなかで、「財務報告書類」作成の実務スキルに長けた人材は、企業からのニーズも高まっており、この分野での専門性を発揮したい方にはオススメの検定です。
プロフェッショナルCFO資格試験
CFO(最高財務責任者)人材育成を目的として一般社団法人日本CFO協会が主催する、企業の経営・財務分野の専門知識を証明する資格試験です。
金融機関の渉外担当や財務担当者としてのキャリアを目指す方は、資格取得を通じて、実践的なコーポレート・ファイナンスの知識を身につけると良いでしょう。
また、プロフェッショナルCFO資格試験に合格し、所定の手続きを行えば「プロフェッショナルCFO資格」の認定を受けることができます。
経営企画、経営コンサルタント
中小企業診断士試験
中小企業診断士は「中小企業支援法」に基づく、経営コンサルティングの国家資格で、公認会計士や税理士に並ぶ、かなりの難関資格です。
本試験は、一般社団法人中小企業診断協会が主催しており、企業の成長戦略の策定について専門知識をもってアドバイスできる「中小企業診断士」を育成することを目的としています。
MBA(経営学修士)
MBAとは、「Master of Business Administration」の略で、社会人を対象にしたビジネススクール(大学院)で取得できる経営学修士の学位のこと。日本の場合、大学院(修士課程または専門学位課程)で、最低でも2年間学修することが必要です。
MBAを取得することで、経営者を目指したり、経営コンサルタントとして活躍したりといったキャリアが切り開けることでしょう。
経理としての成長を目指すなら、より高度な資格取得も検討しよう
資格・検定は、自身のスキルアップの指標になるだけでなく、経理としての今後のキャリアにも大いに役に立つものです。
今回ご紹介した資格・検定は、いずれも経理の方にオススメしたいものばかりですが、ご自身の望むキャリアプランや方向性によって、どれが自分に合っているのかを吟味することが大切です。
資格取得に向けて、得意分野を伸ばす勉強をすることで、経理スキル・知識が向上するだけでなく、取得した資格がキャリアアップ・キャリアチェンジに役立つ可能性も。また、対応できる業務範囲が広がれば、さらなる収入アップにもつながるでしょう。
ただし、やみくもに資格を取得することだけが目的となってしまっては本末転倒。あくまでも、これからのキャリアを見据えたうえで、自分にとって必要な資格取得を目指すということを忘れずに、積極的にチャレンジしてみてくださいね!