貿易業務の電子化、情報共有を実現する「貿易EDI」を知ろう!
EDIとは、Electronic Data Interchange(電子的データ交換)の略で、商取引に関する情報について、従来は紙で作られていた文書をデータ化し、インターネットなどネットワーク経由でやりとりすること。今回は日本の貿易業務の電子化や、オンラインネットワークなどを実現する「貿易EDI」についてご紹介します。
日本の「貿易EDI」の進展と輸出入・港湾関連情報システム「NACCS」
インターネットは、ここ20~30年ほどで普及しましたが、その流れとともに、オンラインで処理するネットワークシステムが作られてきました。
貿易取引は、税関をはじめとする公的機関・運送事業者・港湾事業者・金融機関・保険会社・輸出入企業など、さまざまな機関・企業が携わるため、かつては本当に多種多様な書類に対応しなければなりませんでした。
ですが、各機関や企業で業務の効率化を図ろうとEDI化(電子化、情報化)が広まり、同時に業界間を結ぶネットワークシステムも発展しました。
貿易関係の方ならよく名前を聞くであろう「NACCS(ナックス)*」も、日本の貿易EDIシステムのひとつ。下図のように、貿易にまつわる各機関・企業のさまざまな業務が、ひとつのシステムの中で処理されています。
*NACCSはNippon Automated Cargo and Port Consolidated Systemの略です。
今では上図のように、さまざまな行政業務・民間業務がNACCSに統括されていますが、最初からこのようなカタチだったのではなく、税関は税関、港湾は港湾、と別々に運営されていたEDIシステムが、段階的に統合され現在のカタチになりました。
もともと航空貨物と海上貨物もSea-NACCS、Air-NAACSと別々のシステムで処理されていましたが、これも2010年2月に統合されたのです。その意味で、NACCSはEDIが進化したカタチ、貿易EDIの成果とも言えるでしょう。
さらに2017年10月からは、第6次NACCSと呼ばれるシステムが稼働開始しました。第6次NACCSは、かつて利用されていた第5次NACCSシステムの改善(さまざまなシステムが統合されたあとの初めての更改)がメインで、業務実態や利用者のニーズを踏まえて見直され、総合物流情報プラットフォームとして進化していけるように開発されました。
現在は、2025年10月を目途にシステム更改予定の第7次NACCSも開発が進められていますので、興味のある方は、NACCSホームページをご覧ください。
貿易実務の現場も変わるかもしれない!?「貿易EDI」のゆくえを考えてみよう
ここまでは現在の貿易EDIのご紹介でしたが、せっかくの機会なので、今後の貿易EDIについて考えてみましょう。
貿易業務を電子化する「貿易EDI」によって、貨物の輸送や通関に関するやりとりはシステム上で処理され、効率化が図られました。ですが、商社や貿易会社の貿易実務では、契約書や発注書・B/L(Bill of Lading/ビーエル/船荷証券) ・インボイス・パッキングリスト(Packing List)・原産地証明書など、貿易実務者が紙の書類を作成し、保管する場面は、今も昔もそれほど変わっていません。
そのため、貿易EDIシステムの開発事業者は、貿易取引で発生するこれらの文書を標準化してシステムに取り入れる、といったことが議論されているようです。
まだ実施されているわけではありませんが、初受注した商品情報(品名、数量など)をウェブ上で入力すれば必要文書が作成され、その情報はフォワーダー・保険会社・船会社とも共有される、というようなシステム構想です。
その情報がNACCSとも接続させられるようなものであれば、各機関・企業の業務は相当に効率化され、コストダウンも図られるでしょう。
今後「貿易EDI」がどのように展開していくのか、その施行にどのくらいの時間がかかるのかはわかりませんが、それほど遠くない未来に商社や貿易会社の貿易実務の内容が様変わりしているかもしれません。
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