輸出者が代金回収までのあいだに融資を受ける「輸出金融」
今回は、外国貿易を円滑に行うための「貿易金融」についてご紹介します。
貿易金融とは、輸出や輸入に必要な資金を銀行などから融資してもらうこと、またその業務のことなど、貿易にかかわる金融のことすべてを指す総称です。
大きく分けると「輸出金融」と「輸入金融」になりますが、ここでは「輸出金融」について解説いたします。
必要資金を金融機関が輸出者へ融資する仕組み
冒頭から少し細かな説明となりますが、「輸出金融」とは、一般的に輸出者が輸出商品についての生産(製造)、調達、出荷(船積)などに必要な資金を、海外の輸入者から商品代金を回収するまでの間、金融機関から借り受ける融資のことを指します。
なぜ、輸出者へ融資が必要になるの?
貿易取引は外国間同士の取引であり、契約に関するやりとりや輸送などに時間がかかるため、輸出者(売主)が輸入者(買主)から商品代金を回収するのに時間がかかります。
さらに輸出者は、その商品を生産(製造)するのに原材料を仕入れたり、加工したりする必要も多いため、仮に輸入者(買主)が見つかって契約したとしても、商品を作るためのお金がなければ輸出できない…という事態も起こりえます。
輸出者がこのような事態を避けるため、(契約が成立していれば)銀行など金融機関から借り受けできる融資も「輸出金融」のひとつです。
船積みを起点として、前後で分けられる
輸出金融は、“船積みを起点” として、船積前に融資する「船積前(輸出前)金融」と「船積後金融」の2つに分けられます。
船積前金融
船積前金融には、(1)輸出つなぎ融資、(2)輸出前貸し、の2種類があります。どちらの場合も、輸出者は貨物の船積後、銀行へ呈示する荷為替手形*の代金によって返済します。
*荷為替手形:為替手形(Bill of Exchange)と貨物の引き取りに必要な船積書類(B/L、インボイス、パッキングリスト、保険証券など)を合わせたものです
※関連記事:『貿易用語って難しい…(泣)荷為替手形って何のこと?』
(1)輸出つなぎ融資
“輸出契約が成立する前の”見込み生産・加工・出荷(船積)などのために、金融機関が必要な資金を「つなぎ」として融資するものです。
通常、金融機関は代金回収の目処がたっていないのに融資することはないのですが、農産物・水産物などの季節的な産品では、例外的に認められることがあります。
(2)輸出前貸し
“輸出契約の成立後”、金融機関が輸出者に船積みまでに必要な資金を融資するもので、いわゆる前貸し(貸付)です。船積前金融といえば、一般的にはこの「輸出前貸し」融資を指します。通常、銀行は約束手形による手形貸付のかたちを取ります。
船積後金融
船積後金融とは、下図「L/C取引の流れ」⑧~⑩の期間に必要となる、輸出地銀行による輸出者への融資のことを指します。
輸出者から輸出貨物の荷為替手形を買い取った銀行は、輸入地の銀行からその手形金額を回収するまでは、輸出者に対し先行して手形金額を支払っている(=融資している)ため、「船積後金融」と呼ばれています。
L/C取引では毎回発生するので、貿易の現場で船積後金融という言葉を聞くことはまずありませんが、貿易金融の知識として覚えておいてくださいね。
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