インコタームズ2010とは?費用負担と危険負担の範囲を一覧で解説
貿易実務に欠かせないのが「インコタームズ(Incoterms/貿易条件)」に関する知識。そこで今回は、インコタームズの役割や、インコタームズ2010の11規則の危険負担の範囲、費用負担の範囲を一覧にまとめて、分かりやすくご紹介します。
インコタームズとは?
インコタームズとは、国際商業会議所が制定した貿易取引条件と、その解釈に関する国際規則のことを指します。
一般的に、貿易取引では、輸出者がどこまで負担するのか(逆に輸入者が負担するのか)は、それぞれの取引で輸出者と輸入者が話し合って決めます(または、輸出者自身が費用を負担する範囲を決めて、商品価格を提示します)。
この「費用負担」と「危険負担」の範囲に関して、国際共通ルールとして利用されているのが、インコタームズです。そして、インコタームズ2010には、輸出者と輸入者の費用負担と危険負担の範囲を示した11の規則が定められています。
円滑な貿易取引をするうえでは、インコタームズに関する正しい知識を持つことは欠かせません。通常、実際の貿易実務で使用するのはその中の一部ではありますが、知識として、覚えておくと良いでしょう。
インコタームズ11規則の負担範囲のまとめ
インコタームズ11規則の費用負担
まず、インコタームズの11の規則の費用負担についてご説明します。
ひとつの荷物を外国へ届けるには、さまざまな費用がかかるため、輸送にかかる費用の内容と費用の負担元を一覧表にまとめました。色が塗られている部分は輸出者が費用負担する範囲、逆に塗られていない部分は輸入者が費用負担する範囲です。
インコタームズ11規則の危険負担
危険負担の範囲については、その範囲を示す一覧表だけでなく、輸出者から輸入者へ危険負担が移転する時点についてもまとめました。2つ続けてご覧ください。
① 危険負担の範囲 一覧表
② 危険負担が移転する時
EXW | 輸出者の敷地(工場)で輸入者に商品を引き渡した時点
※トラックなどへの積み込みも輸入者の危険負担範囲
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FCA | 輸入者が手配した運送人に輸出者が「指定場所」で商品を引き渡した時点
※「指定地」がCYの場合はCYのゲートに搬入した時点、CFSの場合はCFSに到着した輸送手段の上(例:トラック荷台上)で運送人に引き渡した時点で、危険負担が移転
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CPT CIP |
輸出者が指定した場所で手配した運送人に商品を引き渡した時点
※「指定地」がCYの場合はCYのゲートに搬入した時点、CFSの場合はCFSに到着した輸送手段の上(例:トラック荷台上)で運送人に引き渡した時点で、危険負担が移転
※但し、CIPは指定仕向地までの貨物保険料を負担する
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DAP | 輸入国側の(輸入通関前の)「指定仕向地」で
※「指定仕向地」に到着した輸送手段(船やトラックなど)の上で荷降ろしの準備ができた状態で、商品を輸入者に引き渡す(荷降ろしは輸入者の危険負担範囲)
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DAT | 輸出者が指定した輸入国側の(輸入通関前の)指定仕向地の「ターミナル」で
※船や飛行機等の輸送手段から荷降ろしした商品を、指定ターミナルで輸入者に引き渡した時点
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DDP | 輸入国側の(輸入通関後の)「指定仕向地」で
※「指定仕向地」に到着した輸送手段(トラックなど)の上で荷降ろしの準備ができた状態で、商品を輸入者に引き渡す(荷降ろしは輸入者の危険負担範囲)
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FAS | 輸出国側の指定港で、輸入者が手配した「本船の船側」に輸出者が商品を置いた時点
※本船の船側とは、本船が着岸している「埠頭」や本船に横付けする「はしけ」などがある。
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FOB CFR CIF |
輸出国側の指定港で、輸入者が手配した「本船上」に輸出者が商品を置いた時点
※CIFは指定仕向地までの貨物保険料を負担する
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みなさま、いかがでしたでしょうか?今回は、インコタームズ2010の11規則についてご説明しましたが、商社や貿易会社でも、11規則すべてを使用して取引しているというわけではないケースが多いです。ですが、貿易事務のお仕事をする上では大切な知識ですので、しっかりマスターしてくださいね。
また、インコタームズについて、さらに詳しく知りたいという方は、下記の記事でそれぞれの規則ごとに、より具体的に説明していますので、ぜひご覧ください。
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