「輸入の承認」が必要とされる物品の輸入方法について
日本をはじめ世界各国では、貿易取引で輸入できるもの、輸入が禁止されているもの、輸入に制限を設けているもの、輸入にあたって各省庁などの許可がいるもの、などが細かく法律で定められています。今回はその中で、輸入が制限されているもの、また、輸入管理令で定められている品目やその輸入方法についてご紹介します。
「輸入の承認」が必要な貨物は3つに分類
今回は「輸入に制限を設けているもの」についてご紹介しますが、制限が設けられている品目は、外国為替及び外国貿易法(外為法)及び輸入貿易管理令によって、経済産業大臣からの承認が必要など輸入方法(条件)が具体的に規定されています。
この輸入の承認を必要とする品目は、輸入公表の1号~3号の3つに分類され、手続きもそれぞれ異なります。では、簡単にその内容をご紹介していきましょう。
*輸入貿易管理令4条1項、輸入貿易管理規則2条1項(2017年8月現在)
1号品目(輸入割当品目/IQ品目)
1号品目は、輸入割当品目、IQ(Import Quota)品目と呼ばれます。輸入割当は、日本に輸入される貨物の数量または金額を、国内の需要に基づいて輸入者に割り当てることで輸入制限を行う制度です。一部の水産物などの非自由化品目や、モントリオール議定書などの国際条約で規制されている物質が対象となっています。
ちなみに、経済産業省は定期的(通常、年に1~2回)に「輸入発表」を行い、各品目の割当数量を公表しています。
輸入を希望するもの(会社)は、
①割当受付期間に経済産業大臣へ輸入割当申請書を提出し
②輸入割当証明書の交付を受け
③さらに、経済産業大臣へ輸入承認申請書を提出して
④輸入承認証の交付を受ける必要があります。
主な対象貨物
○ 非自由化品目(一部の水産物:にしん・たら・ぶり・いわしなど)
○ モントリオール議定付属書に定める規制物質(オゾン層破壊物質)
2号品目(輸入承認品目)
2号品目は、輸入承認品目または2号承認品目と呼ばれます。特定の原産地及び船積地域からの貨物・麻薬類・ウラン・火薬類・武器などの他に、ワシントン条約の規制対象動植物・化学兵器禁止法(第一種指定)関連品目などがこの品目にあたります。
対象となる物品を輸入したい場合には、1号品目同様、経済産業大臣に承認を受ける必要がありますが、割当制度ではないため、上でご説明した③④のみの手続きになります。
主な対象貨物
○ 特定の貨物で、特定の原産地及び船積地域とする特定の貨物(例:中国や北朝鮮及び台湾のさけ・ます・及び調製品/くじら及び調製品/コートジボワールのダイヤモンドなど)
○ ワシントン条約付属書Ⅰ・Ⅱに掲載されている動植物
○ モントリオール議定書、化学兵器禁止法などに定める規制物質など
3号品目(事前確認品目・通関時確認品目)
3号品目は、輸入公表の三に掲げられている品目で、事前に経済産業大臣やその他の省の大臣から輸入の事前確認を要する品目(事前確認品目)と、税関による通関時確認でよい品目(通関時確認品目)に大別されます。
品目により官公庁の管轄も異なり、確認を受けなければならない相手、提出しなければならない書類、その流れが異なります。
※参考:経済産業省「輸入承認制度別一覧」
事前確認品目の主な対象貨物
○ 治験用ワクチン・免疫血清(厚生労働省、動物用ワクチンは農林水産省)・ウラン触媒・特定外国文化財(文部科学省)まぐろ・めろ・鯨及び調整品・向精神薬(経済産業省)など
○ ワシントン条約付属書Ⅱ・Ⅲ掲載動植物・モントリオール議定書A、B、C、Eの規制物質など
通関時確認品目の主な対象貨物
○ けしの実・大麻の実
○ ダイヤモンド原石・農薬・放射性
○ ワシントン条約付属書Ⅱ・Ⅲ掲載動植物など
輸入承認は電子化が進み、通関の迅速化・効率化が図られている
現在、上でご紹介した品目の輸入承認の申請や輸入割当の申請(許認可申請)は、輸出入通関手続きのオンライン・ネットワーク「NACCS(ナックス)」によって電子申請ができるようになっています。そして、電子申請できる品目については、各官公庁からの承認や交付もNACCS上で行われます。
NACCSは税関と官公庁とをつなげているだけでなく、フォワーダー(海貨業者/通関業者)・船会社・航空会社など、貿易流通に関わる業者ともつながっています。そのため、NACCSで輸入承認の状況がわかれば、効率的に手続きを行うことができるのです。
輸入の承認が必要とされている物品すべてが電子化申請できるわけではありませんが、今後も電子化による貿易手続きの迅速化・効率化が図られることは間違いありません。
「貿易・海外営業事務」関連記事一覧
シゴ・ラボでは、その他にも貿易取引に関する知識や実務で使える仕事術など、貿易事務の方に役立つ記事を多数ご紹介しています。他の記事もチェックしてみてくださいね。
貿易業界で働くための貿易用語チェックリスト【入門編】
貿易事務を目指す方に向けて、「まずこれだけは覚えておきたい」現場で頻繁に使われる貿易用語をebookにまとめました。ダウンロードして、ぜひご利用ください。
参考サイト