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2016/10/24

「ATAカルネ」とは?海外に商品見本を持込むときに免税扱いになる!

著者: パソナ キャリアコーチ(貿易担当)

「ATAカルネ」とは?海外に商品見本を持込むときに免税扱いになる!

今回は「ATAカルネ」という、“外国の税関で免税扱いの一時輸入通関が手軽にできる通関手帳”についてご紹介します。ATAカルネの役割や、通常の通関手続きとの違いも分かりやすく解説します。将来、海外展開を目指す企業の方にとって必須の知識なので、貿易実務に携わる方は、ぜひ覚えておきましょう。

何も手続きを行わなければ、海外へ持ち出す商品見本は関税がかかってしまう

海外旅行の経験がある方はご存知だと思いますが、各国空港では入国審査があり、手荷物のチェックを受けることがあります。この手荷物のチェックを行っているのは税関職員なのですが、何をチェックしているかご存知でしょうか?

大抵は不法品が持ち込まれていないか、国内へ持ち込む制限のある物品(タバコやお酒など)がないかをチェックしているのですが、同時に売買目的で取り扱われそうな物品もチェックしています。

通常、個人が私用で使うものについては対象外ですが、ビジネスで取り扱う商品は、基本的にすべて課税(関税、物品税、消費税など)対象となります。例えば、靴が何十足も入っていた場合、すべて本人が私用で使うのかを問われるのです。

つまり、海外見本市や海外営業のための商品見本であっても、国外に持ち出す(最終的に持ち帰る)物品は、税関から見れば現地で販売される可能性のある物品であり、輸出入を管理すべき物品(課税対象品)にあたるのです。
*基本的にどの国でも、税関の通関手続きを受けていない外国の物品を売買することは禁止されています。

これは日本の税関だけではなく、世界各国の税関が行っていることであり、企業としては、最終的に自国へ持ち帰る商品見本に対して、外国で課税されるのは余計な出費となります。

そのため、世界の主要国のあいだで「物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)」が交わされ、「商品見本」「展示用見本」「職業用具」については移動させやすくするための制度が作られました。

この制度で使われる通関用書類を、「ATAカルネ」と呼んでいます。企業はATAカルネを利用することで、条約締結国の税関においては都度通関書類を作成することなく、また課税されることなく、輸出入通関することができるようになりました。

ATAカルネは、海外見本市や海外営業のため、商品見本を国外へ持ち出すときに使われています。ちなみに、カルネはフランス語で「手帳」という意味。ATAカルネの中には、通関手続きに使われる税関に提出する特別な書類がパックされており、輸出入申告書と物品の明細書を兼ねています。

日本におけるATAカルネの発給は、一般社団法人日本商事仲裁協会が行っています。商品見本など、持ち帰る物品を国外に持ち出すときには、申請手続きをしてATAカルネを発給してもらう必要があります。

ATAカルネの利用で通関手続きが簡易に

では、ここまでの内容のまとめとして、通常の通関手続きで商品見本を日本から国外へ持ち出し、再び持ち帰る(ATAカルネを使用しない)場合と、ATAカルネを発給してもらい同様のことを行う場合とを比べてみましょう。

ATAカルネの使用例(日本から海外へ商品見本を一時的に持ち出す場合)

通常(ATAカルネ不使用)の場合
【日本】申告書など通関書類を提出し
輸出通関手続きを行う
【外国】輸入通関手続きを行う
⇒ 通常、輸入税(関税、物品税など)の
支払いが発生
【外国】展示会で持ち出した物品を展示する
【外国】(再)輸出手続きを行う
【日本】(再)輸入手続きを行う
⇒ 場合によっては関税・消費税の支払いが必要
商品見本として持ち帰る物品なのに
場合によっては課税されてしまう
ATAカルネを使用する場合
【日本】ATAカルネを提出し(場合によっては)
輸出する物品を見せてチェックを受ける
【外国】ATAカルネを提出し(場合によっては)
輸出する物品を見せてチェックを受ける
⇒ 一時輸入品として扱われ、通常課税されない
【外国】展示会で持ち出した物品を展示する
【外国】ATAカルネを提出する(再輸出手続き)
【日本】ATAカルネを提出する(再輸入手続き)
⇒ 関税、消費税の支払いは不要
商品見本として持ち帰る物品なので
保税品として扱われ課税されない

ATAカルネを利用した場合、同一の書類で輸出入(および再輸出入)の手続きができ、通関が簡易になるという制度なのがわかりますね。

ちなみに、ATAカルネはその制度がつくられてから利用されやすいように少しずつ改正されています。

たとえば、以前は、持ち込んだ物品を輸入国内で売却、贈与することが禁止されていましたが、現在では輸入国内で納税手続きを行い、納税証明書をATAカルネに貼付することを条件に、物品の一部販売が認められるようになったのも改正のひとつ。詳しくは税関一般社団法人日本商事仲裁協会のWebサイトなどでご確認ください。

国際取引が盛んになった現代では、ATAカルネはこれまで以上に利用されるようになるでしょう。貿易実務に携わっている方や、これから貿易のお仕事に就きたいという方はぜひ頭に入れておいてくださいね。

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参考サイト

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