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2018/05/14

各国政府が取り組む「自由貿易」と「保護貿易」のバランス

著者: パソナ キャリアコンサルタント(貿易担当)

各国政府が取り組む「自由貿易」と「保護貿易」のバランス

今回は、「自由貿易」と「保護貿易」についてご紹介します。貿易実務に直結する話ではないのですが、ニュースで取り上げられることもあるトピックですし、貿易に興味のある方はぜひ知っていただきたい内容です。貿易事務に携わるなら、ぜひ頭に入れておきましょう。

「自由貿易」と「保護貿易」の違いって?

ここ10数年の間に、世界の貿易はこれまで人類が経験したことのない規模にまで大きくなり、最近では“経済のグローバル化”という言葉を頻繁に聞くほど、世界各国間での貿易取引があたり前の時代になりました。

これは、貿易取引が「自由」に行われるようになったことの表れでもありますが、一方で自国の利益を第一とするアメリカのトランプ大統領の方針や、イギリスの国民投票で決まったEU脱退(ブレグジット)に象徴されるように、自国を「保護」する動きも世界各地で表面化するようになりました。

こうした状況もあり、世界では今、国際貿易の在り方についてあらためて関心が寄せられ、日本の新聞やテレビのニュースなどでも「自由貿易」と「保護貿易」という言葉を目や耳にする機会が増えています。

「自由貿易」「保護貿易」を端的に表現すると、以下の通りです。

・自由貿易…輸出入について、国が介入や干渉しない貿易
・保護貿易…(自由貿易とは逆に)自国の産業保護のために国が関与、介入する貿易

自国産業を保護する「関税」

国家の介入・干渉にはさまざまな形がありますが、代表的なものに「関税」が挙げられます。

通常、海外から国内へ商品を輸入する際には通関時に関税が課せられますが、各国が関税を課す一番の目的は、“外国産商品の価格調整をして、自国の産業を保護するため”であり、ほとんどの国では関税制度が設けられています。

つまり、価格の安い外国産商品がたくさん出まわると国内商品が売れなくなり、結果的に自国産業が衰退するといったことがあるために、関税制度が設けられているのです。

※関連記事:『関税にも種類があることを知っていますか?

関税を撤廃する動きが活発に

しかし、ここ10年ほどの間に自由貿易主義の考えが徐々に浸透し、世界各国は自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を結んで、締結国間の関税を撤廃していく動きが活発になりました。

日本もまた、各国との幅広い分野での経済活動の自由化を目的として、経済連携を推進している国のひとつです。

※関連記事:『FTA、EPA、TPPの違い、わかりますか?』『日本のFTA、EPA相手国は何ヶ国あるか知っていますか?

「自由貿易」と「保護貿易」のメリット・デメリット

なぜこの10年ほどで、世界各国における「自由貿易主義」の傾向が強まったのか。その最大の理由は、自由貿易を促すことによって、“自国の経済的発展、成長が見込めるから”ということに尽きるでしょう。

「自由貿易」のメリット・デメリット

「自由貿易」は国内企業だけでなく外国企業との自由競争を促し、

・製造者や生産者は、ライバルに負けないようにより良い商品を作る
・消費者は、同じものを買うときに商品の選択肢が増える(安く買えるようになる)

という循環を生み出し、多くの人々の生活水準の向上に貢献してきました。

しかし、自由競争が世界規模にまで大きくなると、海外で起きる政治的・経済的な動きが為替レートなどを通じて国内経済にも影響を及ぼすため、危機管理がより複雑で難しいものになります。

また、経済規模が大きくなると、力を持つ者はますます豊かになり、そこから脱落した者は経済的な力を失うという経済格差がより大きくなっていきます。

例えば、ライバル会社との競争に打ち勝つため、企業が外国の安い労働力をもとめて生産現場を海外へシフトしたり、海外移民など低賃金雇用できる労働者を国内で雇ったりする流れが顕著になりました。

先進国の労働者が海外の人に雇用を奪われるという状況が生まれたのも、「自由貿易」の負の一面だと言えるでしょう。

これらが自由貿易のメリット、デメリットですが、「保護貿易」だとこれが逆さまになります。

「保護貿易」のメリット・デメリット

「保護貿易」には、外国からの輸入品の数量を制限したり、高関税を課したりすることで、“自国の産業が競争に負けて衰退しないように保護する”、“自国民の雇用を守ることができる”というメリットがあります。

しかし一方で、自由競争にさらされないために自国の産業が成長せず、国際競争力を持つことができなくなるというデメリットもあるのです。

自由貿易と保護貿易のバランスが求められている

とはいえ、日本のように自由貿易主義の政策を推進している国々の中には、保護貿易主義の考え方が全くない訳ではありません。日本が各国と締結しているFTA、EPAには、保護貿易主義的な一面もあるのです。

例えば、日本は自国の農業を守るため、米などの農産物に関しては海外の輸入品に対して関税を課しています。

こうした事情を抱えているのは日本だけではないため、FTA、EPA交渉は、それぞれの国の事情も踏まえてじっくりと協議され、発効に至っているのです。

昨今何かと話題となるアメリカのトランプ大統領は、保護貿易主義的な政策を打ち出していますが、浸透している自由貿易の流れがトランプ大統領の方針だけで、すぐに保護貿易主義(保護主義)に切り替わるということはないと予測されています。

しかし、近年のアメリカやイギリスによる保護貿易主義的な動きが、これまでの自由貿易主義の在り方を大きく揺さぶったことは間違いありません。今後、日本政府をはじめ各国政府は、“自由貿易と保護貿易のバランス”を熟考しながら進むことでしょう。

自由貿易と保護貿易の違いや、抱えている課題など、ご理解いただけたでしょうか? 2017年のトランプ大統領の誕生や、2016年のイギリスの国民投票によるEU脱退(ブレグジット)は、ある意味で現代のグローバル化の流れに対する反動ともいえます。

貿易に携わっている皆さんにはぜひ、貿易取引を取り巻く体制が今後どのように変わっていくのかについても、関心を持っていただけたらと思います。

※関連記事:『貿易事務ってどんなイメージ?仕事内容や現場の実情、待遇についてご紹介!

 

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参考サイト

 

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