派遣社員も厚生年金を納めないとダメ?加入条件と納める金額について

皆さんは、厚生年金について詳しい知識がありますか?毎月お給料から天引きされているものだからこそ、厚生年金の目的や意味、国民年金との違い、さらには加入条件や金額についてもきちんと理解しておきたいところです。今回は、社会保険制度のひとつ「厚生年金」について詳しくご紹介します。
- 目次
- 厚生年金は「公的年金制度」の一つ
- 「公的年金制度」の仕組みとは?
- 会社員は国民年金+厚生年金を支払っている!
- 派遣社員も要件を満たせば厚生年金の加入対象に
- 派遣社員が厚生年金に加入するメリットは3つ
- 派遣社員の厚生年金保険料ってどれくらい?
- 厚生年金の加入とならない条件はあるの?
- 加入条件をしっかり確認して将来のために備えよう
厚生年金は「公的年金制度」の一つ
社会保険のひとつでもある年金制度は、将来に備えた蓄えであるのはもちろん、万が一ケガや病気がもとで障害を負ってしまった場合の「障害年金」や、一家の働き手が亡くなったときの「遺族年金」などの制度も含まれています。
この年金加入及び保険料の納付に関しては、「国民年金法」の中で年金制度への加入と保険料負担が義務付けられています。
年金制度には公的年金制度と私的年金制度がありますが、法律で加入が義務付けられているのは国民年金・厚生年金・共済年金といった公的年金制度。
それに対して、私的年金制度とは、公的年金の上乗せ給付となる制度で、国民年金基金、確定拠出年金(iDeCoなど)、確定給付企業年金、民間の保険会社が扱う個人年金保険があり、各自が任意で積み立てることになります。
※関連記事:『今さら聞けない!派遣社員の「社会保険」について』
「公的年金制度」の仕組みとは?
公的年金に対して、多くの方が「高齢者になったときの生活費のため」という認識で払っているかもしれません。
大きく間違ってはいないのですが、実際には現役世代が払った国民年金と厚生年金の保険料に、国が負担する分を加えて同時期の受給世代に渡す仕組みなのです。
<公的年金制度はどのような仕組みなの?(一部)>
公的年金制度は、いま働いている世代(現役世代)が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てるという「世代と世代の支え合い」という考え方(これを賦課方式といいます)を基本とした財政方式で運営されています(保険料収入以外にも、年金積立金や税金が年金給付に充てられています)。
※引用元:厚生労働省『教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?』
つまり、現役世代で払った保険料は今の受給世代に支払われますが、将来受けとる世代になったときの支給額は、自身が現役世代で払った保険料額をもとに算出されるため、しっかりと納めておくことで将来の備えとなるのです。
会社員は国民年金+厚生年金を支払っている!
公的年金に対して、自営業・学生などの方は「国民年金」、会社員は「厚生年金」、公務員は「共済年金」を支払っているというイメージが強いかもしれません。
ですが、あくまでも国民年金は“年金制度のベースとなるもの”で、20歳以上60歳未満の国民全員が必ず加入することになっている年金です。
<公的年金制度はどのような仕組みなの?(一部)>
また、日本の公的年金制度は、「国民皆年金」という特徴を持っており、20歳以上の全ての人が共通して加入する国民年金と、会社員が加入する厚生年金などによる、いわゆる「2階建て」と呼ばれる構造になっています。
※引用元:厚生労働省『教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?』
つまり、企業などで働く会社員は、国民年金とともに厚生年金も上乗せして納めているため、将来的に受け取れる受給額も多くなります。さらに、厚生年金は掛け金の半額を企業(派遣社員の場合は派遣会社)が負担しているというのも特徴のひとつです。
将来受け取る年金額をアップさせるためにも、厚生年金は現役世代のうちにしっかり納めておくことが望ましいのです。
派遣社員も要件を満たせば厚生年金の加入対象に
では、年金受取額を増やすことができる厚生年金へ加入するために、どのような要件が求められるのでしょうか。
派遣社員・契約社員・アルバイトなどの雇用形態を問わず、以下の加入要件を満たした方は、厚生年金への加入となります。
- 【契約期間】2ヶ月と1日以上
- 【契約上の労働時間】1週間で30時間以上
また、2016年10月1日から時短勤務の方も、以下の条件を満たせば加入が可能になりました。
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 賃金の月額が8.8万円(年収106万円)以上
- 契約期間が1年以上(※)見込まれる ※令和4年10月以降は「2ヶ月」に
- 学生でない
- 厚生年金保険の被保険者数が常時500人(※)を超える企業で就労すること ※令和4年10月以降は「100人超」、令和6年10月以降は「常時50人超」に
※関連記事:『派遣社員は社会保険に入れる?社会保険加入となる就業条件について』
派遣社員が厚生年金に加入するメリットは3つ
派遣社員が厚生年金に加入するメリットは主に3つです。毎月の保険料を負担に感じる方もいるかもしれませんが、長い目で見れば厚生年金に加入するメリットは大きいと言えます。
1.保険料の半分を会社が負担してくれる
厚生年金の保険料は、会社が半額負担します。これは企業に所属して働く人の大きな特権と言えるでしょう。厚生年金の保険料には国民年金部分も含まれているので、少ない額の自己負担で将来受け取れる年金額が大きく引き上げられることになります。
2.年金受給額が増える
先述の通り、日本の公的年金制度は国民年金と厚生年金からなる「2階建て構造」です。厚生年金に加入すれば、より多くの年金を受け取ることができます。なお厚生年金の加入期間が1年延びると、受給できる年金は毎年1万~5万円増えます。増額に幅があるのは、厚生年金加入期間の長さと、その期間の平均賃金が関係するためです。
3.そのほかの年金・手当を受けることが可能になる
厚生年金加入者は、条件を満たせば障害年金を受け取ることができます。なお厚生年金に加入すれば遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金も受け取れます。また産休期間中には厚生年金の保険料が免除されます。この免除期間は、将来年金額を計算する際に、保険料を納めた期間として扱われます。
派遣社員の厚生年金保険料ってどれくらい?
厚生年金に加入すれば、将来受け取れる年金の受給額が上がり、条件を満たせばその他の年金や手当も受けられることがわかりました。次に、派遣社員が実際に支払う保険料はどれくらいかシミュレーションしてみましょう。
保険料の計算方法
時給1,500円の派遣社員が週に5日働いた場合、いくらくらいの厚生年金の保険料を納める必要があるのかシミュレーションしてみましょう。
時給1,500円、9時~17時勤務の場合
- 1時間昼休憩なので、1日の就業時間は7時間
- 月曜から金曜の週5日間×4週間なので、月の勤務日数は20日前後
- 額面 1,500円×7時間×20日=21万円
↓
- 厚生年金保険料額表で自身の等級を確認し、記載された保険料を納付
- 保険料率18.3%のうち半分(9.15%)は企業が負担
↓
- 月給21万円は15等級→20,130円
※参考元:全国健康保険協会『令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)』
厚生年金の加入とならない条件はあるの?
なかには厚生年金の加入対象とならないケースがあります。日々雇われる臨時雇用や、雇用期間が2ヵ月以内の場合などが該当します。厚生年金への加入を希望する場合は、派遣契約を結ぶ前にしっかり確認しておくことが大切です。
加入条件をしっかり確認して将来のために備えよう
年金納付は国民の義務であると同時に、現在の高齢者等を支え、かつ未来の自分の備えとなる制度です。加入対象となる方は、しっかりと納めることが大切です。また、厚生年金を含む健康保険・雇用保険などの社会保険はその種類によって加入要件が異なるので、時短勤務などを考えている方は注意が必要です。
派遣契約を結ぶ際は、ご自身がそれぞれの社会保険の加入対象となるのかについても確認しておきましょう。