貿易取引における「代理店契約」「販売店契約」のこと
ここ10年ほどで、海外企業の日本進出・日本企業の海外進出が増えています。今回は、海外進出時の契約の裏側で交わされている「代理店契約」「販売店契約」についてご紹介します。
海外で他社に営業活動を依頼するときに結ぶ「代理店」「販売店」契約
日本の商社やメーカーが海外へ取り扱う商品の販路を広めたいとき、または、海外のメーカーが日本に商品を輸出販売したいとき、現地の商社などに営業活動を依頼することがあります。
その際に結ばれる代表的な契約が、「代理店契約(Agency Agreement)」と「販売店契約(Distributor Agreement)」です。
この2つの契約は、ともに現地での販路開拓・販売拡大を目的とし、商品のマーケティングや営業を行う意味では似ているのですが、「代理店(Agent)」と「販売店(Distributor)」では、現地の商売における立ち位置が異なり、両者間には大きな違いがあります。
日本では、「代理店」と「販売店」という言葉が混同して使われることがありますので、今日は、この2つがどのように違うのか、しっかり把握していきましょう。
代理店:売主に代わって営業活動し、売主に買主を斡旋・仲介する
「代理店(Agent)」というのは、商社やメーカーに代わって、商品やサービスを販売する仲介業を行う事業者(個人・会社)を指します。
まず、ここでご注意いただきたいのは「代理店」の意味。しばしば誤解されている方がいらっしゃいますが、商品を輸入し、在庫を抱えて販売している会社(代理輸入業者/卸商/問屋)は、代理店ではありません。この後でご紹介する「販売店」にあたります。
代理店は、あくまで第三者としての立ち位置で、商品を現地で売りたい売主(輸出者)と、その商品を現地で販売したい買主(輸入者)の仲立ちをする役割を担っています。
つまり、代理店は売主の商品を知らしめ、買主を探し、売買契約へと仲介しますが、売買契約の当事者にはならないのです。
利益や責任は売主にあり
代理店契約では、その内容によって多少の差があると思いますが、現地の販売活動から生じる利益・損失・危険・責任は、すべて売主にあるというのが基本です。
たとえば、買主が倒産して商品代金を支払えなくなったとしても、その危険負担は売主にあります。
代理店自身は、仲介活動を通じて成立させた販売実績などに応じて、売主(輸出者)から受け取る手数料(Agent Commission)で利益を得るのです。
契約締結について
代理店契約は複数の会社と結ぶことができるのですが、売主がひとつの代理店とだけ契約を結ぶこともあります。
つまり、ひとつの代理店がその国や特定地域の市場で独占的(Sole)、または排他的(Exclusive)に活動することです。こうした代理店契約を「総代理店契約(Sole/Exclusive Agency Agreement)」、代理店を「総代理店」、「独占代理店」と呼んでいます。
販売店:売主の商品を仕入れ、在庫を抱えて営業活動を行う
「販売店(Distributor)」は、自らの責任で売買取引の当事者となり、買主の商品やサービスを販売する事業者です。
利益や責任は販売店にあり
先にご説明した「代理店」とは異なり、「販売店」は売買にともなう危険や責任を負担し、売主の商品を輸入し、商品代金を支払い、在庫を抱えて営業活動を行います。
いわゆる“売り切り・買い切り”という売買取引であり、販売店は在庫を抱えるというリスクを負う一方で、商品の販売価格を自由に設定することができ、商品を販売すればすぐに利益が得られます。
逆にいえば、商品代金の回収はすべて買主にかかっているわけで、ハイリスク・ハイリターンの取引といえるかもしれません。
契約締結について
販売店契約では、売主と買主(販売店)のあいだで、価格設定の上限や取扱商品の制限、宣伝のための資料送付、アフターサービス(補修部品)の売主負担など、さまざまな内容を取り決めることもあります。こうした内容を「特約」と呼びます。
ちなみに、先ほどの「代理店契約」と話が重複しますが、「販売店契約」は複数の会社と結ぶことができますが、ひとつの販売店と契約を交わすこともできます。
ひとつの販売店が、特定の商品を取り扱い、特定地域の市場で独占的に営業活動を行う契約を、総販売店契約、または、独占的販売店契約(Sole/Exclusive Distributor Agreement) と呼び、その販売店を、「総販売店」、「独占販売店」と呼びます。
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