私たちの身のまわりに使われる「鉱物資源」~レアメタル編~
貿易取引で取り扱われている「鉱物資源」。中でも「レアメタル」という言葉は、皆さんも新聞やニュースなどで、耳にしたことがあるのではないでしょうか?そこで今回は、鉱物資源(金属資源)のひとつである「レアメタル」について詳しくご紹介します。
レアメタルってそもそも何?
レアメタル*は直訳すると、レア=稀な、メタル=金属。埋蔵量が少ない、あるいは、地質学的にその量は大きくとも採掘できる量に限りがあったり、精練するコストが高いなどの理由で流通量・使用量が少なかったりする「非鉄金属」で、全部で31鉱種あります。
*経済産業省は“地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、現在工業用需要があり今後も需要があるもの”と定義しています。
鉱物資源の全体像(元素の周期表)
*なお、レアメタルの一種は17分類され、その総称をレアアースと言います。レアメタルの数をカウントするときには、この17つをまとめて1鉱種と数えます。ただし、レアメタルの種類すべてを数えるときには、47種と言うこともあります。
工学や化学を専門的に学んだ方を除くと、おそらく大半の方が「初めて聞いた…」という元素が多いかもしれません。
レアメタルはどのようなものに使用されているの?
希少なレアメタルは、金属の強度の増強や、さびにくくなる効果を持っています。そのため、発光ダイオード、電池、永久磁石、電子触媒、光触媒など、生活工業製品をつくるのに必ず必要なもの、また、その機能性を高めるものとして使用され、みなさんの生活や、現代社会を支えているのです。
それぞれ使用用途が異なるため、今回は31鉱種すべてを説明しきれませんが、代表的なものを抜粋して以下にご紹介します。
- レアメタルの使用用途
- リチウム…リチウム電池など
チタン…航空機、原子力プラントなど
プラチナ…自動車触媒、宝飾品など
ニッケル…ステンレス鋼、ニッケル水素電池など
タングステン…超硬工具、特殊鋼など
モリブデン…鋼材、顔料など
ホウ素…合金添加剤、耐熱ガラスなど
バリウム…X線造影剤、光学ガラスなど
- レアアースの使用用途
- ネオジム、ジスプロシウム…モーター用磁石など
セリウム…液晶パネル、廃ガス触媒など
イットウリウム…テレビの蛍光体など
このように、レアメタルは、テレビ、パソコン、携帯電話をはじめ、自動車や建築資材には欠かせない存在です。みなさんにとっても身近な素材であるステンレスに、ニッケルというレアメタルが使用されていることからも、それが分かるのではないでしょうか。
今後、電気自動車やロボットがさらに普及していくことが予想されますが、レアメタルはその製造に必須の材料のため、今後も消費が伸びていくことでしょう。
日本は世界有数のレアメタル消費国
ご紹介してきた通り、今後ますます重要性が高まるレアメタルですが、世界的に見ても希少なもので、埋蔵している地域も限られています。ちなみにレアアース17種は、世界の産出量の90%以上を中国が占めています。
現在、日本にはレアメタルを産出する鉱山はなく、100%輸入に頼っています。製造業が盛んな日本において、その使用量は世界と比べても多く、ニッケルは世界全体の9%、モリブデンは15%、プラチナ(白金族金属)は17%を占めており※、安定供給のために、政府もさまざまな対応をしています。そのため、レアメタルを含む金属鉱物資源全体のリサイクル利用も推進されています。
※参考:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構「金属資源事情」
日本は、レアメタルをはじめ金属鉱物資源を輸入に頼っていることもあり、産出国の政治・経済情勢の影響を受けやすく、時には外交においても重要な要素になることがあります。新聞やニュースなどでもたびたび取り上げられているため、今後見かけたら、今回ご紹介した内容を思い出してくださいね。
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