商品価格とインコタームズの関係 〜貿易取引の商品価格はどのように決まる?〜
今回は、貿易取引で売買される商品価格がどのように決められているのかという「値段設定」についてご紹介します。
基本的に、商品価格は“商品を作るのにかかったコストに利益を上乗せしたもの”になりますが、貿易取引ではその他にも、通関費用など国内取引以上にさまざまな費用がかかるうえ、輸出者(売主)がどこまで費用を負担するかによっても価格が異なります。
今回はそこを踏まえ、商品価格の内訳(構成要素)について詳しく解説いたします。
貿易における商品売買でかかるコストを考えよう
すでに貿易業務に就いている方、メーカーや販売業など物品を販売する会社で勤めたことのある方は、商品価格にはどのようなコストが含まれているかピンとくる方も多いかもしれませんが、まずは、輸出者から輸入者へ輸送される際にかかるコストを洗い出してみましょう。
- 一般的な貿易取引商品価格の内訳(構成要素)
- ① 製造原価 *出荷のための梱包費など
- ② 営業や商品管理などの費用 *人件費やシステム管理費など
- ③(輸出国内の)輸送費・倉庫料
- ④ 輸出通関費用 *検査費用やフォワーダーへの支払いなど
- ⑤(輸出港での)船積み諸費用
- ⑥ 国際輸送費 *海上運賃、航空運賃など
- ⑦ 貨物保険料
- ⑧(輸入港での)貨物の荷卸し(陸揚げ)諸費用
- ⑨ 輸入通関費用 *検査費用やフォワーダーへの支払いなど
- ⑩ 関税など税金 *日本へ輸入する場合は消費税の支払い
- ⑪(輸入国内の)輸送費 *倉庫に保管する場合は保管料など
- +(プラス)輸出者(売主)の利益
以上のことから、国を越えて売買される商品には、実にさまざまなコストがかかっていることがわかりますよね。実際、輸入品の価格には上記コストに加え、お店の利益も含まれています。
インコタームズで、商品価格に含まれている輸出者(売主)の費用負担が決まる
では次に、輸出者が提示する商品価格について紐解いていきましょう。
貿易取引では、上の①〜⑪の費用について、輸出者がどこまで負担するのか(逆に輸入者が負担するのか)というのはケースバイケース。
それぞれの取引で輸出者と輸入者が話し合って決めたり、輸出者自身が費用を負担する範囲を決めて、商品価格を提示したりします。
この費用負担の範囲に関して国際共通ルールとして利用されているのが、インコタームズ(国際商業会議所が取引条件の解釈を定めた国際規則)です。
通常、輸出者(売主)が商品価格を提示するときは、価格とともにFCAやCIFなどアルファベット3文字で表すインコタームズが併せて提示されます。
インコタームズは費用負担の範囲を定めているので*、輸出者がどこまで費用を負担した価格なのか明確にわかるのです。
*インコタームズは、費用負担の範囲だけでなく、危険負担の範囲も定めています
では、インコタームズ2010年版の11の規則では、先ほど挙げた①〜⑪のコストについて、輸出者がどこまで負担しているのかを表で見てみましょう。
青く塗られた箇所は輸出者が費用を負担しますが、見方を変えれば、白い箇所はすべて輸入者が費用を負担しています。
みなさんがお店で輸入品を買うときの商品価格には、①〜⑪のコストが全てが含まれており、輸出者・輸入者のどちらが払っているは関係がありません*。しかし、輸出入者が現場でやりとりする商品価格は、必ずインコタームズと連動しているということをぜひ覚えておいてくださいね。
*小売店でつけられた商品価格は、通常、①〜⑪以外に店までの輸送費や小売店自身の利益も含まれた価格になっています
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