なぜコンテナ船は海上輸送の主流となったのか?
みなさんは、コンテナ船を見たことがありますか? 上の写真は港に停泊中のコンテナ船ですが、みなさんも港近くで海を眺めていれば見ることができますよ。
この貨物船に積まれたコンテナには電化製品や衣類、生活雑貨、化学品などあらゆる商品が入っており、今や貿易に欠かせない船として活躍していますが、その歴史は意外なことに比較的短いものなのです。今回は、その歴史と普及した理由、そしてコンテナのメリットなどをひも解いていきましょう。
コンテナ船が本格的に走行し始めたのは約50年前
貿易で使われる貨物船には、船上にクレーンが設置されているものや、船内に大きなタンクが設置されているものなど、いろいろな種類の船があります。
その中で、現在一般的な貨物*を運ぶのにもっとも利用されているものは、貨物を専用のコンテナに詰めて運ぶ「コンテナ船」です。
*石油やLNGなどの化石燃料、鉄鉱物など鉱産物、とうもろこしや小麦などの穀物類などは特殊な貨物として、タンカーやバルカーという専用船が利用されます。
今や世界の主要な航路で走行するコンテナ船ですが、その歴史はさほど長くなく、コンテナ船の国際輸送サービスが本格的に始まったのは1966年のことでした。
コンテナ船は、それからたった数10年で世界中に普及していきますが、これほどまでに普及したのは、各国が利用したいと思わせるだけの多くのメリットがあったからなのです。
※関連記事:『タンカー、バルカーって何?コンテナ船以外の貨物船の種類』
コンテナサイズは世界共通、だからこそメリットが多く生まれた
まず、コンテナ輸送に大きなメリットを生み出しているのは、「コンテナが世界共通の規格サイズ」ということ。
貿易取引の当事者である港湾事業者、輸出入者、港湾業者、運送業者など、貿易に携わる関係者(事業者)にとって、コンテナサイズが揃うことで以下のメリットがあります。
港湾業者、船会社にとってのメリット
貨物船で輸送される商品(商材)にはさまざまな形状、重量のものがあるため、梱包したあとの大きさはバラバラになります。
ですが、たとえ梱包サイズがバラバラであっても、コンテナに詰めれば、その中身に関係なく“コンテナ自体をひとつ”として取り扱うことができます。
しかもコンテナのサイズは揃っているので、安定して船に積み上げることができ、たくさん貨物を運ぶことができるのです。
輸出入者にとってのメリット
コンテナは堅牢に作られているため、コンテナの中に詰める商品の梱包はそれまでよりも簡素化できるようになります。
港湾業者にとってのメリット
コンテナなら、雨でも屋外に置いておくことができたり、船への積み降ろしなどの荷役作業も常時行えるといった利点があります。
運送業者、輸出入者にとってのメリット
コンテナ船での海上輸送が定着するとともに、他の運送業者(飛行機、貨物列車、トレーラーなど)も同規格のコンテナを運べるように仕様を変更。
よって、船からトレーラー、または貨物列車から船など、異なる運送手段同士の移動において、コンテナ内の商品を取り出さずにそのまま運送するということが可能になりました。
運送業者は貨物の移し替えのために割いていた時間や手間が省けますし、輸出者・輸入者にとっても、貨物の積み降ろしの回数が少ない方がダメージを受けるリスクが減り、盗難事故も避けられるというメリットがあります。
コンテナ船は、各国が港湾設備に投資したからこそ普及した
コンテナ船は、先に述べたようにメリットがたくさんあるので徐々に普及していきましたが、その普及にはそれなりに時間を要しました。
というのも、コンテナ船自体にはコンテナを積み降ろしするクレーンなどの設備がなく、港にガントリークレーンなどの荷役設備がなければ、コンテナを積むことも降ろすこともできないという問題があったから。
そのため、上記コンテナ輸送のメリットをわかっていても、港湾設備に莫大な投資が必要であるために、設置できる国や港は限られていました。
ですが、国際取引の増加、貨物の積み降ろし設備の機械化やシステム化が発達するとともに*、コンテナ輸送を利用する価値がどんどん高まり、コンテナ船が海上輸送の主流になり、今日にいたっています。
*港湾設備の機械化・システム化により、荷役作業に関わる人員の削減と時間短縮が、船が港に停泊する日数も減ったため航海日数が短縮されるようになりました
ちなみに、日本で初めてコンテナ船が利用されたのは1967年9月のこと。東京港から394個のコンテナを積んで、サンフランシスコ(アメリカ合衆国)に向けて出港したのが最初です。
世界でコンテナ船の国際輸送サービスが本格的に開始されたのが1966年のことですから、日本は世界の中でもいち早く港湾の整備に取り組んだ国ということになります。
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