「勘定科目」の基礎知識!仕訳に悩む費用についてもまとめて解説
経理担当者として必ず身につける必要があるのが、「勘定科目」の基礎知識。
とはいえ、勘定科目は種類が多いだけでなく、使い分けのルールも複雑で、会社によっても異なるため、覚えることがたくさん!日常的に発生する仕訳業務の中で、「この場合はどの勘定科目で処理すれば良いの?」と頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。
そんなときに迷わず仕訳ができるよう、「仕訳に悩む勘定科目」をまとめました。困ったときの辞書代わりとして、また今後の予備知識としても、ぜひ一度目を通しておいてくださいね。
- 目次
- そもそも勘定科目とは?
- 仕訳に悩む勘定科目【設備編】
- 仕訳に悩む勘定科目【IT・WEB編】
- 仕訳に悩む勘定科目【社内イベント・福利厚生編】
- 仕訳に悩む勘定科目【贈答編】
- 正確な仕訳は経理の力量にかかっています!
そもそも勘定科目とは?
勘定科目とは、会社で発生した取引を、簿記というルールに沿って記録するために用いる「基本となる分類項目」のこと。仕訳や帳簿への記入をする際、「売掛金 200(万円)」など勘定科目と金額をセットにした形式で記載することで、会社のお金の出入りを、項目別に分かりやすく整理しています。
勘定科目の決め方って?
勘定科目は、何でも自由に設定して良いわけではなく、誰が見ても明確に分かるように、一般的に広く使われている勘定科目を使用する必要があります。また、税金の計算上も必要になるため、適正な仕訳が求められます。
ただ、法律で「こういう場合はこの勘定科目を使いなさい」と厳密に定められているわけではないため、企業ごとに細かい仕訳ルールが異なる場合もあります。そのため、新しい職場でお仕事をスタートする際は、事前に仕訳で使用する勘定科目をしっかりと確認しておきましょう。
すべての勘定科目は5つのグループに分類できる
勘定科目には多くの種類がありますが、貸借対照表に記載する「資産」「負債」「純資産」と、損益計算書に記載する「収益」「費用」の計5グループに分類できます。ここでは、代表的な勘定科目をご紹介します。
貸借対照表に記載する勘定科目
- 資産:会社が持っている財産…現金、小口現金、預金、売掛金、有価証券、前払費用ほか
- 負債:支払う義務のあるもの…買掛金、借入金、支払手形、未払金、未払費用ほか
- 純資産:資産から負債を差し引いて残るもの…資本金、資本準備金、利益準備金、繰越利益剰余金ほか
損益計算書に記載する勘定科目
- 収益:事業による売上など…売上、有価証券評価益、有価証券売却益ほか
- 費用:収益を得るために必要なもの…仕入、売上原価、外注費、広告宣伝費、通信費ほか
仕訳に悩む勘定科目【設備編】
では早速、仕訳に悩む費用について、一般的に使用されている勘定科目の例と併せて、ご紹介していきます。
まず、めったに購入しない備品や、設備関連の費用については、購入費用をチェックしましょう。10万円未満の場合は「消耗品費」で経費計上できますが、10万円以上になると「資産」に計上し、法定の耐用年数に従って減価償却していく必要があります。
※関連記事:『決算書作成に必要な「減価償却」の考え方』
レンタルオフィス
賃貸借契約を交わさないレンタルオフィスの場合、個室を借りたり、シェア空間でデスクだけを借りたりと、その利用形態はさまざま。さらに、貸会議室や住所のみを借りるバーチャルオフィスなどもあります。勘定科目を何にするか迷うところですが、ほとんどの場合が「貸借料」で処理できます。完全な個室を借りている場合は、「地代家賃」にするのが無難でしょう。
パーテーション
パーテーションをオフィスに設置する場合は、購入したパーテーションの全枚数と工事費を共に計上しましょう。勘定科目は、「消耗品費」や「備品費」が妥当ですが、10万円を超える場合は「建物付属設備」で資産計上します。なお、床だけを固定するタイプの場合、減価償却資産の耐用年数は3年、天井と床を固定するタイプは15年と定められています。
エアコンの取り付け費用
エアコンは、本体と取り付け費用をセットにして計上します。10万円未満の場合は費用として「消耗品費」で処理し、それ以上は「備品費」での資産計上となります(一部例外あり)。詳しくは以下の記事も参考にしてみてくださいね。
※関連記事:『エアコンの取り付け費用はどう処理する?』
仕訳に悩む勘定科目【IT・WEB編】
インターネット関連費用はすべて「通信費」で処理している企業もありますが、「雑費」と同様に、あれもこれも「通信費」で仕訳してしまうと、後から見返した際に分かりにくくなってしまいます。それぞれの場合に適切な勘定科目を使い分けることをオススメします。
ドメイン取得
税務上の取り扱いに細かい規定がないものの、ドメイン取得による支出の効果は1年以上にわたって続くことが想定されます。よって、ドメイン取得費用は「繰延資産」に分類し、勘定科目は「長期前払費用」にするのが妥当でしょう。あるいは、WEBサイト関連費用はすべて「広告宣伝費」にしたり、サイト開設に必要な費用と考えて「支払手数料」で処理したりと、企業の考え方に合った勘定科目を選ぶこともできます。
※関連記事:『ドメイン取得・サーバレンタルの仕訳・勘定科目は?』
レンタルサーバー
サーバーのレンタルにかかる費用は、電話代などと同様に「通信費」で処理します。ただ、サーバーの一部をレンタルすると考える場合は、「貸借料」として処理することもあるようです。
LANの設備工事
LAN設備については、現在の税法では設備ごとに耐用年数が設けられています。工事業者が作成した設備内容の内訳書を確認して、それぞれの設備ごとに処理する必要があります。耐用年数と、対応する勘定科目の一例をご紹介します。
- サーバー(5年):「器具及び備品」
- ルーター(10年):「器具及び備品」
- 端末機(※PC)(4年):「器具及び備品」
- 光ケーブル(10年):「建物付属設備」
※参考元:国税庁『LAN設備の耐用年数の取り扱いに関する質疑応答』
仕訳に悩む勘定科目【社内イベント・福利厚生編】
歓迎会、忘年会などの社内イベントや、福利厚生に関する勘定科目も、迷わず振り分けできるようにしておくと便利ですよ。特に、税務上、損金(法人税を計算する際に、収益(益金)から差し引くことのできる費用)として取り扱われるかの違いもありますので、覚えておきましょう。
※関連記事:『節税に欠かせない「損金」を理解しよう!』
新年会、歓送迎会、忘年会などの社内イベント
まず、新年会などの社内イベントは、たいていが「福利厚生費」「接待交際費」「会議費」のいずれかに該当します。ポイントは、「参加者」と「目的」と「一人当たりの金額」です。
全従業員が対象となる社内イベントは「福利厚生費」
福利厚生費は、「全従業員に平等に支払われる、給与や交際費以外の費用」を意味します。よって、社員旅行や運動会なども福利厚生費に該当します。税金を計算する上でも、福利厚生費は全額損金として取り扱われます。ただし、その後に一部メンバーで行う二次会や三次会は福利厚生費ではなく、基本的に「接待交際費」として計上しましょう。
一部の従業員のみが参加する社内イベントなら「接待交際費」
「接待交際費」は、「接待」という名がついているので、取引先などに対してのみ使う勘定科目のように思えますが、従業員も対象になります。一部の従業員のみが参加する食事会やイベントは、「接待交際費」に計上しましょう。ただし、社外の方が参加していない社内のみの飲食費の場合は、損金算入できません。詳しくは下記のHPを参照ください。
※参考元:国税庁|『No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算』
仕事の延長にある会合は「会議費」
仕事で使用しているような場所で、一般的な昼食相当の金額で行われる会は、「会議費」として計上できることもあります。会議費は、全額損金扱いになります。ただし、飲食費が一人当たり5,000円を超える場合は、「接待交際費」の扱いになるため、あくまで会議の実態があり、オフィスで軽食を取りながら、といった趣旨の会に限定されるでしょう。
こんなケースも「福利厚生費」
忘年会などでゲームの景品を用意する場合、「全員に当たる可能性がある」と考えられるため、「福利厚生費」として経費計上できます。飲み会後に利用したタクシー代も同様です。ただ、タクシー代は利用するシーンによって勘定科目が変わることも覚えておきましょう。忘年会を「接待交際費」として処理しているときは、タクシー代も「接待交際費」となります。
タクシーを利用するシーン | 勘定科目 |
---|---|
営業活動中 | 旅費交通費 |
接待や会合 | 接待交際費 |
社内イベント | 福利厚生費 |
その他の福利厚生
慶弔見舞金
会社が従業員やその家族の慶弔時に支給する祝い金や香典、傷病や被災や傷病の際に支給する慶弔見舞金は、「福利厚生費」になります。
昼食代の補助
福利厚生の一環として従業員の食事代を補助する場合、食事代の半分以上(50%以上)を従業員が負担し、会社が負担した食事代が月3,500円以下の場合は、「福利厚生費」として計上できます。ただし、これらの補助を現金で支給すると、「給与手当」とみなされ「福利厚生費」としての計上ができないので注意しましょう。
予防接種
従業員の予防接種代を会社が負担するときは、「福利厚生費」で計上します。なお、予防接種費用としての「福利厚生費」は、課税仕入れになります。予防接種はあくまで「予防」で、医療には該当しないことから、消費税の課税対象になることを覚えておきましょう。
※関連記事:『【勘定科目】予防接種費用を会社が負担……どう処理する?』
仕訳に悩む勘定科目【贈答編】
お歳暮・お中元・手土産
接待と同様、お歳暮やお中元は取引先との関係を続けていくために必要な経費です。「接待交際費」として処理しましょう。ただし、自社のロゴが入ったカレンダーなどのノベルティグッズなどを不特定多数の企業の方々に配るときは、「広告宣伝費」の扱いになります。
協賛金
お祭りなどのイベントに賛同した場合に支払う費用を、協賛金と言います。協賛金は、その目的や協賛者としての立ち位置によって「広告宣伝費」「接待交際費」「寄付金」の3種類に分かれます。いずれの勘定科目で計上するかによって、損金算入の可否や消費税の課税・不課税などの条件も異なります。詳しくは、以下の記事を参照してみてくださいね。
※関連記事:『協賛金の損金算入と消費税の取り扱いについて知りたい!』
寸志
寸志とは、心づけとして渡す現金のことで、数千円から1万円程度が相場です。また、賞与査定のない、入社間もない社員に賞与の意味合いで渡すものを、寸志と呼ぶこともあります。寸志の会計処理は、誰に渡すかで変わってきます。相手が従業員であれば「給与」または「賞与」、社外の方であれば「接待交際費」として処理しましょう。
正確な仕訳は経理の力量にかかっています!
仕訳作業では、さまざまな勘定科目があり、最初は複雑に感じることがあるかもしれません。しかし、会社ごとのルールや勘定科目の意味合いをしっかり把握しておけば、スムーズに処理を進めることができます。後で、取引内容を正確に把握するためにも、適切な勘定科目を心がけましょう。
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