「アンダーバリュー(Under Value)」の抵触事例を知っておこう!
「アンダーバリュー」とは、輸入者が売買契約の価格(実際に輸出者に支払う金額)よりも税関への申告価格を低くし、関税や消費税などの支払いを安く抑えるための不正申告(虚偽申告)のことを指します。知識がなく、知らずに不正をしていることもあるかもしれません。
今回は、あからさまな「アンダーバリュー」と、注意すべき「アンダーバリュー」の事例をご紹介しますので、正しい申告について頭に入れていきましょう。
※関連記事:『アンダーバリュー(Under Value)」という貿易の不正取引のこと』
こんな輸入が「アンダーバリュー」に抵触する
【あからさまな事例】通常品をサンプル品と偽る
サンプル品と偽って安く輸入申告し、あとで正規金額を支払う、というのがもっとも露骨な「アンダーバリュー」。
これは輸出者と手を結ばなければできないことですが、輸入者が書面上、サンプル品として割安に相当量を輸入(申告)しつつ、実際は正規料金を輸出者に支払う、という取引です。
サンプル品は“お試し”で使われるものですから、これは、通関時にサンプルだと言えば、実際の価格より安い価格でも輸入許可が下りる(下りやすい)という慣例を悪用しているということになります。
ひとたびこういうことが明らかになれば、間違いなく摘発を受けることになります。
無償サンプルであっても、インボイス上には単価(金額)を設定し”No Commercial Value For Customs Clearance Purpose Only”などと文言を記載する必要があり、輸入時に関税の支払いをしなければなりません。ただ、単価設定を低くするためにサンプルと故意に記載していれば、「アンダーバリュー」の虚偽申告となります。
【注意すべき事例】通常品と無償代替品の同時輸入
通常品と無償代替品の同時輸入では、間違った申告をすると「アンダーバリュー」となるので注意が必要です。
たとえば、輸入者がある商品300個を輸入する際、そのうち50個は、前回の輸入時に欠陥があったことによる無償代替品であった場合。
正しくは、インボイス(Invoice/送り状)において無償代替品も通常品と同じ価格にし、50個は“無償”の代替品であることを記載した申告をしなければなりません。
しかし、すべて通常品扱いにして合計金額(250個分×単価)を合計数量(300個)で割ってひとつひとつの単価を低く設定した場合、それは一種の「アンダーバリュー」になります。
この場合、インボイスには代替品50個の値引き額を記載し(▲やマイナスで記載)、合計金額を250個分にしておけば、実際の支払い金額とも一致し、輸入申告のインボイスとしても成立します。
巷では、こうした値引きを行う際に作成されるインボイスが、「アンダーバリュー」に抵触していることがあると聞くのでご注意ください。
上記は気づかれにくいタイプの「アンダーバリュー」ですが、税関が事後調査でインボイスを遡って調べたときに、同じ商品の輸入価格が明らかに違えば、単価調整した「アンダーバリュー」だと注意を受ける可能性があります。
アンダーバリューは刑事罰の対象となる不法行為です
最後に、アンダーバリューを行った者に対する懲罰についてお話します。
アンダーバリューが発見されたときには、過少申告加算税と延滞税の支払いが発生します。また、その行為が悪質だと判断されれば、重加算税も発生するかもしれません。さらに、アンダーバリューを行っていた会社としてブラックリスト入りし、今後の通関の際に厳しいチェックが入ることになるのは間違いないでしょう。
アンダーバリューは世界共通の不法行為ということもあり、各国の税関はさまざまな情報を収集し、対策を講じているもの。
ですから、輸出入者はきちんと正しい申告を心がけるのはもちろんのこと、もし誤りに気づいたときには、すぐに修正申告を行いましょう。
そして、不明なことがあれば、通関のプロフェッショナルであるフォワーダー(Forwarder)や税関に問い合わせるなど、しっかり確認することが大切です。
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