用語

2016/08/22

貿易取引における「代理店契約」「販売店契約」のこと

著者: パソナ キャリアコーチ(貿易担当)

貿易取引における「代理店契約」「販売店契約」のこと

ここ10年ほどで、海外企業の日本進出・日本企業の海外進出が増えています。今回は、海外進出時の契約の裏側で交わされている「代理店契約」「販売店契約」についてご紹介します。

海外で他社に営業活動を依頼するときに結ぶ「代理店」「販売店」契約

日本の商社やメーカーが海外へ取り扱う商品の販路を広めたいとき、または、海外のメーカーが日本に商品を輸出販売したいとき、現地の商社などに営業活動を依頼することがあります。

その際に結ばれる代表的な契約が、「代理店契約(Agency Agreement)」と「販売店契約(Distributor Agreement)」です。

この2つの契約は、ともに現地での販路開拓・販売拡大を目的とし、商品のマーケティングや営業を行う意味では似ているのですが、「代理店(Agent)」と「販売店(Distributor)」では、現地の商売における立ち位置が異なり、両者間には大きな違いがあります。

日本では、「代理店」と「販売店」という言葉が混同して使われることがありますので、今日は、この2つがどのように違うのか、しっかり把握していきましょう。

代理店:売主に代わって営業活動し、売主に買主を斡旋・仲介する

「代理店(Agent)」というのは、商社やメーカーに代わって、商品やサービスを販売する仲介業を行う事業者(個人・会社)を指します。

まず、ここでご注意いただきたいのは「代理店」の意味。しばしば誤解されている方がいらっしゃいますが、商品を輸入し、在庫を抱えて販売している会社(代理輸入業者/卸商/問屋)は、代理店ではありません。この後でご紹介する「販売店」にあたります。

代理店は、あくまで第三者としての立ち位置で、商品を現地で売りたい売主(輸出者)と、その商品を現地で販売したい買主(輸入者)の仲立ちをする役割を担っています。

つまり、代理店は売主の商品を知らしめ、買主を探し、売買契約へと仲介しますが、売買契約の当事者にはならないのです。

代理店:売主に代わって営業活動し、売主に買主を斡旋・仲介する

利益や責任は売主にあり

代理店契約では、その内容によって多少の差があると思いますが、現地の販売活動から生じる利益・損失・危険・責任は、すべて売主にあるというのが基本です。

たとえば、買主が倒産して商品代金を支払えなくなったとしても、その危険負担は売主にあります。

代理店自身は、仲介活動を通じて成立させた販売実績などに応じて、売主(輸出者)から受け取る手数料(Agent Commission)で利益を得るのです。

契約締結について

代理店契約は複数の会社と結ぶことができるのですが、売主がひとつの代理店とだけ契約を結ぶこともあります。

つまり、ひとつの代理店がその国や特定地域の市場で独占的(Sole)、または排他的(Exclusive)に活動することです。こうした代理店契約を「総代理店契約(Sole/Exclusive Agency Agreement)」、代理店を「総代理店」、「独占代理店」と呼んでいます。

販売店:売主の商品を仕入れ、在庫を抱えて営業活動を行う

「販売店(Distributor)」は、自らの責任で売買取引の当事者となり、買主の商品やサービスを販売する事業者です。

利益や責任は販売店にあり

先にご説明した「代理店」とは異なり、「販売店」は売買にともなう危険や責任を負担し、売主の商品を輸入し、商品代金を支払い、在庫を抱えて営業活動を行います。

いわゆる“売り切り・買い切り”という売買取引であり、販売店は在庫を抱えるというリスクを負う一方で、商品の販売価格を自由に設定することができ、商品を販売すればすぐに利益が得られます。

逆にいえば、商品代金の回収はすべて買主にかかっているわけで、ハイリスク・ハイリターンの取引といえるかもしれません。

利益や責任は販売店にあり

契約締結について

販売店契約では、売主と買主(販売店)のあいだで、価格設定の上限や取扱商品の制限、宣伝のための資料送付、アフターサービス(補修部品)の売主負担など、さまざまな内容を取り決めることもあります。こうした内容を「特約」と呼びます。

ちなみに、先ほどの「代理店契約」と話が重複しますが、「販売店契約」は複数の会社と結ぶことができますが、ひとつの販売店と契約を交わすこともできます。

ひとつの販売店が、特定の商品を取り扱い、特定地域の市場で独占的に営業活動を行う契約を、総販売店契約、または、独占的販売店契約(Sole/Exclusive Distributor Agreement) と呼び、その販売店を、「総販売店」、「独占販売店」と呼びます。

 

「貿易・海外営業事務」関連記事一覧

シゴ・ラボでは、その他にも貿易取引に関する知識や実務で使える仕事術など、貿易事務の方に役立つ記事を多数ご紹介しています。他の記事もチェックしてみてくださいね。

貿易業界で働くための貿易用語チェックリスト【入門編】

貿易事務を目指す方に向けて、「まずこれだけは覚えておきたい」現場で頻繁に使われる貿易用語をebookにまとめました。ダウンロードして、ぜひご利用ください。

参考サイト

 

みんなの仕事ラボ(シゴ・ラボ)は、働くすべての方々に向けたキャリアアップ、スキルアップのためのお役立ちサイトです。
「仕事はずっと続けるつもりだけど、このままでいいの…?」「何かスキルを身に着けたいけど自分には何が向いているか分からない」「職場でこんなことがあったけど、これって普通?」など、お仕事をする上でのお悩みや困ったをお助けするヒントやちょっとしたアイデアをお届けします。