輸出&輸入通関の便利な制度「AEO制度」
日本には貿易取引をしている会社が大小含めて数多くありますが、通関手続きは原則として、その会社の規模とは関係なく平等に行われます。今回は、この平等を原則とする通関制度に設けられた“特例(優遇措置)”制度「AEO制度」について解説します。
通関手続きにおける優遇措置制度「AEO制度」
例えば、長年貨物をしっかり管理し法令を遵守している会社と、税関検査で梱包を開けたらインボイスに記載されていない商品がいくつも入っていた…なんていう会社とで通関手続きが平等であるのは、やや不公平に感じられるかもしれません*。
*実際、後者のような会社に対しては、税関がその後の取引に対して厳しく目を光らせることになりますので、まったく同じということはありません。ただ、税関職員によるチェックの厳格化といった、あくまで人為的なレベルの話で、原則として税関はどの会社の輸出通関・輸入通関も、同じ流れで審査・検査されています
原則としては、税関においてはどの貨物も平等に扱われます。しかし、貿易を行っている企業の中でも、税関長が“貨物のセキュリティ管理”や、“法令遵守(コンプライアンス)”の体制が整備されていると承認・認定した企業は、税関手続きが通常よりも緩和(簡素化、迅速化)され、優遇措置を受けることができるのです。
この特例制度を、「AEO(Authorized Economic Operator)制度」と言います。
AEO制度は2006年3月に「輸出業者」を対象に導入され、その後「輸入業者」「倉庫業者」「製造業者」「通関業者」「運送者」と、その対象者ごとに内容が整備されています。
輸出者・輸入者の両者にメリットあり
優遇措置の内容は「対象者」ごとに異なり、その内容もいろいろ細かく決められていますが、今回は「輸出者」と「輸入者」の代表的な特例をご紹介しましょう。
輸出者にまつわる「AEO制度」
通常の輸出申告なら、貨物を保税地域に搬入してからでなければ申告できないところ、税関長に承認された輸出者は、貨物が自社の工場や倉庫にある状態でも輸出申告ができ、さらには輸出許可も受けることができることが挙げられます。
輸入者にまつわる「AEO制度」
税関長に承認を受けている輸入者は、通常は保税地域に搬入してから行う輸入申告を保税地域搬入前に行い、輸入許可も受けられます。
優遇措置制度によって得られるメリット
「AEO制度」のもとでは、税関の審査・検査が通常よりも迅速化(簡素化)され、輸出者はよりスピーディーに船に積み込むことが可能に。輸入者はよりスピーディーに国内へ流通・販売することができるのです。
また、その他の特例輸入者は、通常なら関税などの納税を行わなければ貨物が引き取れないところ、貨物を引き取ったあとに納税できる(後払いできる)という優遇措置も受けられます。
関税を後払いできるというのは、国内で販売してから納税することも可能になるということ。つまり輸入者は、資金繰りがラクになることを意味します。
このように、「AEO制度」は、輸出者・輸入者の両者にとってメリットのある制度なのです。
優遇措置制度を受けられる要件
輸出者や輸入者がこの制度を利用するには、ある一定期間、業務や法令違反がないかなどの要件があります。
会社の施設や設備、業務のチェック体制などの「セキュリティ管理」と、「法令遵守(コンプライアンス)」が主なチェック事項となっています。詳しくは、税関に問い合わせるなどでご確認ください。
「AEO制度」が広がった背景
「AEO制度」は、日本のみならず世界各国で近年整備されている制度です。ここ数十年で貿易量はかつてないほど増加したこともあり、世界各国の政府は自国の安全を守りつつ、国際物流を円滑させることが課題でした。
そこで、WCO(世界税関機構)が「AEO制度」の導入・構築の指針を定めたことで、各国で整備されるようになり、日本もまたその指針に沿って整備されたのです。
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