「三国間貿易」取引をするときに知っておくべき注意点
『三国間貿易って何?仕組みを説明できますか?」』では、「三国間貿易」が行われる理由や特徴についてご紹介しました。今回は、「三国間貿易」取引を行うときに注意すべきこと、特に商品の輸出者や売主に関する注意点について、分かりやすくご説明します。
仲介者の販売価格には、輸出者の売値(元値)にマージン(手数料)がプラスされている
まず、「三国間貿易」の仕組みについてご説明します。「三国間貿易」とは、一般的に仲介者が輸出者(Shipper)と輸入者(Consignee)のあいだに立ち、三国間で取引するケースを指します。
・仲介者(A社)…輸出者(B社)と輸入者(C社)の両方と売買契約を結ぶ
・輸出者(B社)…商品は輸入者(C社)に送り、商品代金は売主(A社)から受け取る
・輸入者(C社)…商品は輸出者(B社)から受け取り、支払いは売主(A社)に行う。
*通常、仲介者は輸出者の商品を第三者に販売できる代理店契約を結んでいることが多いです。
このように、3社それぞれが、他の2社と何らかの接点を持って取引を行うのが一般的です。
*「三国間貿易」という用語は貿易業界ではよく使われているのですが、法律用語では仲介貿易と言います。
「三国間貿易」取引を行う際、もっとも注意深く立ち回らなければいけないのが、仲介者、つまり、当取引における商品の売主です。なぜなら、仲介者の買主への販売価格は、輸出者の売値(元値)にマージン(手数料)がプラスされているからです。
マージンがプラスされていること自体は「三国間貿易」の特徴であり、三者とも理解しているため問題ありません。
しかし、仲介者は買主(=輸入者)に輸出者との取引価格を知られると、自分たちがいくら手数料をとっているかも分かってしまうため、その後の営業に影響する可能性があります。
極端な例になりますが、仮に仲介者が買主(=輸入者)に3,000円で販売している商品が、輸出者から1,000円で購入しているとしたら、買主はどう思うでしょうか?
おそらく買主は、「仲介しているだけなのに、手数料を取り過ぎだ!」と思うのではないでしょうか。そして、今後は仲介者から購入せず、輸出者と直接取引できる道を探るかもしれません。
今のインターネット社会では、商品の一般的な相場を調べることができるので、元値の200%にもなるマージンを乗せて販売するようなことはまず起きない話。
ですが、買主は少なからず元値を気にしているので、仲介者は自分たちの輸出者との取引価格が公にならないよう注意が必要だと言われています。
仲介者と輸出者はインボイスの取り扱いに注意しよう!
貿易取引で流通する船積書類のなかで、価格が記載されている書類は「インボイス(Invoice/送り状)」と言い、「三国間貿易」において2枚流通します。
1枚は、輸出者(商品の荷送人)から仲介者(商品の売主)へのインボイス(X)。輸出者は、自社の輸出通関の際に必要な書類として、かつ仲介者への請求書としてインボイス(X)を発行します。
もう1枚は、仲介者から輸入者(商品の荷受人・買主)へ発行されるインボイス(Y)です。仲介者は、輸入者の輸入通関に必要な書類として、かつ輸入者への請求書としてインボイス(Y)を発行します。
先ほどお話した、“買主に元値が分からないように”するためには、輸出者や仲介者はインボイス(X)を買主の手へ渡らないよう注意が必要です。
そのため、通常の「三国間貿易」では、仲介者は輸出者に対して船積書類を買主に送らないように促し、書類を入手したら、輸出者が発行したインボイス(X)を抜き取り、自身が作成したインボイス(Y)への差し替えを行います。
この作業は、「三国間貿易」取引の実務における最重要ポイントとなります。
仲介者はもちろんのこと、輸出者の立場にある貿易事務の方も、インボイスが持つ役割をしっかり認識して書類を取り扱うことが、スムーズな取引につながると言えるでしょう。
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