貿易特有のD/P決済、D/A決済(信用状なし荷為替手形決済)の仕組みとは?
貿易特有の決済方法である「荷為替手形決済」をご存知ですか?今回は、貿易実務に携わる方なら、ぜひ知っておきたい荷為替手形決済の基本的な流れや、D/P決済、D/A決済の違いについて解説していきます。
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「荷為替手形決済」の流れを理解しよう!
貿易取引では、商品の輸送に時間がかかる場合もあり、輸入者が商品の受け取りと代金の支払いを同時に行うことが難しいため、どうしても「前払い」するか、「後払い」するかという問題が発生します。しかし、「前払い」の場合は、輸入者が「商品入手のリスク」を負い、「後払い」の場合は、輸出者が「代金回収リスク」を負うことになってしまいます。
そこで、双方が歩み寄った方法として、「荷為替手形決済」という貿易特有の決済方法があります。「L/C(信用状)決済」や「D/P決済、D/A決済」は、信用状の有無による違いがありますが、どれも「荷為替手形決済」のひとつです。
まずは、基本的な「荷為替手形決済」の流れを紹介していきますので、仕組みを理解していきましょう。
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- (1)輸出者と輸入者の間で売買契約を結ぶ
- (2)輸出者が船会社に貨物の船積依頼を行う
- (3)船会社がB/L(船荷証券)を発行する
- (4)輸出者は仕向銀行に対してB/Lを提出し、為替手形の振出しを行う
- (5)仕向銀行は為替手形とB/Lを取立銀行へ送付する
- (6)取立銀行は輸入者に為替手形を呈示する
- (7)輸入者は取立銀行に為替手形の支払いまたは引き受け(*)を行う
- (8)取立銀行は輸入者にB/Lの引渡しを行う
- (9)取立銀行は仕向銀行に手形代金の支払いを行う
- (10)仕向銀行は輸出者へ代金の支払いを行う
- (11)輸入者は船会社へB/Lを提示する
- (12)船会社は輸入者に貨物の引渡しを行う
*為替手形には、手形の支払いを条件にB/Lを引き渡すものと、手形の引き受けを条件にB/Lを引き渡すものとあります。これがD/P決済とD/A決済の違いです。
「荷為替手形決済」を理解するためには、B/L(船荷証券)の重要性と流れを理解することがポイントです。輸出地の船会社から発行されるB/Lは、輸入地においては貨物の引換証であり、輸入者は、B/Lがなければ商品を受け取ることができません。B/Lはある意味、商品(荷)と同一の価値があるのです。
なお、実際にはB/Lだけでなく、通関手続き等に必要な書類(インボイスやパッキングリスト、保険証券)がセットになっています。それらをまとめて船積書類(Shipping Documents)と言います。
「D/P決済」と「D/A決済」の決定的な違いとは?
荷為替手形決済の2つのバリエーション、「D/P決済」と「D/A決済」について説明していきます。2つの違いは、取立銀行から輸入者への船積書類の引き渡し条件の違いです。D/P決済は手形の「支払い」が条件、D/A決済は手形の「引き受け」が条件になっています。
D/P決済/手形支払時書類渡し
輸入者は、為替手形に対して、輸入貨物代金を支払うことで船積書類を入手します。この場合の手形をD/P手形(Document Against Payment)といいます。この決済方法は、基本的に、商品の到着前に全額を支払う必要がある(前払いになる)ため、輸入者に負担のかかる決済方法なのですが、 逆に、輸出者にとっては、輸入者が代金を支払うまで銀行が船積書類を渡さないため、代金回収のリスクが小さい決済方法になります。
D/A決済/手形引受時書類渡し
輸入者は、為替手形に対して、手形の期日支払いを確約することで船積書類を入手します。この場合の手形をD/A手形(Document Against Acceptance)と言います。手形期日には、シッパーズユーザンスと呼ばれる、一定期間のうちに代金を支払う条件がつくという特徴があります。たとえば、「D/A 30 days after sight」という記載がある場合は、「手形を引き受けた日から30日後に払う」という意味になります。
このシステムだと、基本的に代金決済前に商品を受け取ることができる(後払いになる)ため、輸入者にとっては有利な決済方法になり、万が一、商品に不具合があったときにも、輸出者に対してクレーム交渉を有利に進めることができます。逆に、輸出者からすれば、輸入者が手形を引き受けた時点で船積書類が引き渡されるため、代金回収のリスクの高い決済方法といえます。
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