貿易の現場でよく耳にする「裏書(Endorsement)」とは?
皆さんは、貿易事務が「B/L(Bill of Lading/ビーエル/船荷証券)」を取り扱う際、書類の裏面に行う「裏書(うらがき)」と呼ばれるサインをご存知でしょうか?今回は、「裏書」の役割と種類、どのようなケースで必要になるのかなど、「裏書」の基礎知識をご紹介します。
そもそも「裏書(Endorsement)」とは?
貿易取引で取り交わす重要書類のひとつ「B/L(船荷証券)」では、輸出者と輸入者が書類の裏面にサインをすることがあります。このサインそのもの、またはサインをすることを「裏書(うらがき)」と言います。
*一般的に、社名のスタンプを押し、上司または担当者が手書きでサインします。
B/Lには有価証券*の性質があり、書類(B/L)の所有者=貨物の所有者(貨物の引取り権利者)であることを意味します。
そのため、「裏書」はB/Lが持つ“財産的権利(貨物の所有権)を譲渡する”際に行われるもので、「裏書」をすることで輸出者から輸入者へ貨物を引き渡し、売買取引を成立させているのです。
*有価証券の代表的なものに、株式、手形、小切手があります。有価証券はそれ自体に財産的価値があり、譲渡することが可能で、その有価証券が持っている財産的権利を簡単に移転することができるのが特徴です。
「B/L(船荷証券)」の「裏書」には2種類ある
裏書には「記名式裏書」と「白地(しらじ)裏書」の2種類があります。
「記名式裏書」は、B/Lの荷受人(Consignee)欄に「To order of [指図人(例:銀行)]」と記載されている記名指図人式船荷証券における裏書の方法。指図人がサインして次の引取権者を指定できる裏書の方法です。書類の譲渡者である輸出者(Shipper)は裏書不要です。
また、「白地裏書」はB/Lの荷受人(Consignee)欄に「To order / To order of shipper」と記載されている単純指図人式船荷証券における裏書きの方法で、輸出者(Shipper)がサインのみをし、次の権利者は指定しません。
上図は、銀行や輸出者が裏書するときの例になりますが、最終的に貨物を引き取る輸入者は、「記名式裏書」・「白地裏書」どちらの場合でも裏書を行います。そして、裏書したB/Lを船会社に提示して、貨物を受け取るのです。
※関連記事:『B/LのConsignee(荷受人)欄に書かれている「TO ORDER」の意味、 わかりますか?』
輸出者は要注意!B/Lの種類によって裏書の要・不要がある
ここで注意していただきたいのが、輸出者はサインが「必要なとき」と「不要なとき」があるということ。輸入者はB/Lを受け取り、書類に不備がないか確認したら、どんなB/Lでも裏書をすれば良いのですが、輸出者においては不要となるケースがあるため、以下の表を参考に間違えないようにしましょう。
B/Lの種類と裏書が必要になるもの一覧
記名式B/L [Consignee: 輸入者] |
記名指図人式B/L [Consignee: To Order of 指図人] |
単純指図人式B/L [Consignee: To Order (of Shipper)] |
|
---|---|---|---|
輸出者 | 裏書は不要 | 裏書は不要 | (白地)裏書 |
指図人 | — | 指図人が銀行の場合、 記名式裏書して輸入者へ |
— |
輸入者 | 裏書 | 裏書 | 裏書 |
輸出者の裏書の「要・不要」については、B/Lに「記名式B/L(Straight B/L)」と「指図式B/L(Order B/L)」の2種類があることと関連しています。この違いについては、「B/LのConsignee(荷受人)欄に見られる“TO ORDER”の意味、わかりますか?」を参考にしてください。
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