知っていますか?日本企業も利用する韓国・釜山港のこと
近年、東北アジアにおけるハブ港として発展しており、日本企業とも接点が増えている韓国・釜山(プサン)港。
今回は、釜山港がどのような港で、なぜ日本企業が貿易取引で利用しているのかについて、ご紹介します。
そもそも、ハブ港って何?
皆さんは、「ハブ港」とは何かをご存知でしょうか?
ハブ港とは、海上運送の中継拠点となる港のこと。通常の港よりも数多くの港への航路を確保(路線便が充実)しているため、多くの船が立ち寄り、貨物の積み替えなどで利用されています。
アジアのハブ港としては香港やシンガポールがよく知られていますが、近年は釜山港もハブ港として、世界有数の規模を誇る港となっています。
釜山港で取り扱われるコンテナ量は、日本の東京港・横浜港・名古屋港・大阪港・神戸港の取扱量を足した量よりも少し多いのですが、そのことからもハブ港にはどれほど貨物が集中しているのか、ご理解いただけるでしょう。
東北アジアのハブ港として地位を確立した釜山港
釜山港がここまで発展したのには、もともと地理的に優位な場所であったこともありますが、韓国が官民一体となってハブ港を目指したということが大きな理由です。
地理的条件については地図をご覧いただくと一目瞭然ですが、釜山港は、もともと日本へのアクセス、中国へのアクセスがとてもいい場所にあります。ですが、立地が良いからといって韓国国内企業の輸出入貨物を取り扱うだけでは、韓国を代表する貿易港にしかならず、近隣諸国のハブ港にはなりえません。
韓国政府はこの地理的優位性を活かし、釜山港をハブ港として利用してもらえるように、海運業者や物流業者(船会社、フォワーダーなど)や輸出入者(商社、メーカーなど)にとってメリットが感じられるよう、さまざまな取り組みを行ったのです*。
*もともとは政府が港湾を所有し、開発・管理していましたが、現在は民営化されて運営されています。
具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 大型船が入港できるように水深を深くする大水深化工事を行う
- 釜山新港という新しい港を開港し大規模なコンテナターミナルをつくる
- 港湾荷役作業(貨物の積み降ろし作業)を24時間可能にする
- 釜山港を利用する海運業者に対して入港料などの諸費用を免除する
- 通関の簡易化、迅速化の仕組みを整える
- 関税自由地域をつくり、物流全般に関わる作業(保管、分類、加工、組立、配送など)については関税を免除する
- 関税自由地域で事業を行う企業に対して、法人税を減免する
釜山港は、港湾が整備されていて利用しやすいのはもちろんのこと、貿易に携わる企業が経費を抑えて活動できるような制度が整っています。
そのため、そうしたメリットを享受したい韓国企業、外国企業が利用するようになり、次第に多くの船が出入りするハブ港になっていったのです。
日本企業も利用が増加している釜山港の関税自由地域
釜山港の関税自由地域は、貿易業を営む一部の日本企業にとって以下のようなメリットがあることから、近年ではさまざまな活用がなされています。
- 船舶輸送で1〜3日しかかからない距離にある
- 物流面において自由度が高い
- 経費を抑えられる
たとえば、ある専門商社では関税自由地域に物流センターを構え、アメリカ・ヨーロッパなどからの輸入資材をまとめて保管。日本各地、またはアジアの顧客からの注文が入った時点で、それぞれ必要な分だけ輸出するという、いわゆる「輸入(保税通関)+保管+再輸出」の形で利用しているそうです。
また、ただ倉庫で商品を保管するだけでなく、輸出先の国の言語に合わせてラベルやパッケージの仕様を変えて梱包する「保管+梱包+再輸出」という形もあれば、関税自由地域内の施設で加工や組立を行う「保管+加工or組立+再輸出」という形もあります。
いずれにせよ、グローバルに展開している日本の企業のなかには、釜山港を物流拠点として利用する、または現在検討している会社が少しずつ増えています。
現在も、釜山港はハブ港としての利便性を高めています。近隣諸国への船便はもちろん、北米・南米・欧州とのあいだを往復する船の出入りも増えているようですので、今後も、アジアのハブ港としての活用が広がっていくのではないでしょうか。
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