同じような開示書類をいくつも作るのはなぜ?
目が回るほど忙しい決算期、「同じような開示書類が多すぎる…」と感じたことはありませんか? 例えば決算短信、計算書類、有価証券報告書など、同じような財務数値を何度も使って書類を作りますよね。(チェックが大変でうんざりという本音も聞こえてきますが)せめてひとつくらい減らすことはできるのでしょうか?
それぞれの開示書類は法律・ルールに基づいて作られている
特に有価証券報告書の財務諸表(決算書)と計算書類は、わずかに表示が違うだけで、似たような内容の書類がほとんどです。ですが、それぞれ別のルールや作成目的に基づいて作られるので、やはり「ひとつ減らす」ことは難しいようです。
決算短信、計算書類、有価証券報告書は、以下のような法律やルールにのっとって作成されていますので、それぞれの特徴をご覧ください。
決算短信
上場会社が決算発表時に作成する書類で、証券取引所の適時開示ルールに則ったものです。
期末後45日以内に開示されるのが適当とされ、上場会社の貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)といった決算情報が最も早く開示される資料。投資者やマスメディアからの注目度も高くなっています。
計算書類
会社法で作成が義務づけられている開示書類です。
「企業の利害関係者(株主や債権者など)へ必要な財務情報を提供すること」「剰余金の分配可能額を算定すること」「法人税の課税所得算定の基礎を提供すること」の3つが、主な作成目的です。
有価証券報告書
金融商品取引法で規定されている開示書類です。
貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などについて細かい規定があるので、決算短信や計算書類に比べて詳細な内容になることが多いもの。ただ、作成目的については「有価証券の公正な取引や投資家の保護」ですから、計算書類と役割の面でかぶり気味なことは否めません。
一元化を求める声は根強いものの、実現は……
計算書類と有価証券報告書は、みなさんも感じているように似たり寄ったりの内容です。作る方は無駄に感じるし、見る方は混乱しかねないし、あまり良い状況とは言えません。
そこで日本公認会計士協会は、2009年に「有価証券報告書の財務諸表と計算書類の実質的一元化」を提言しました。
この提言、かなり前向きに捉える向きもありましたが、今のところすぐには進展そうにありません。なぜなら、計算書類と有価証券報告書は、上で説明したようにそれぞれ基づいている法律が違うからです。
そのうえ金融商品取引法は金融庁の所管、対する会社法は法務省の所管。複数の省庁と法律にまたがる問題ですから、「一本化」するにはそれらの調整が大変なようです。
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