貨物海上保険を申し込むタイミングはいつ?
今回は、貿易取引における「貨物保険」についてご紹介します。保険会社によって名称が異なり、貨物海上保険・外航貨物保険とも呼ばれますが、今回は「なぜ保険をかける必要があるのか?」「誰が、いつ、保険をかけるのか?」など、基本的な内容に絞って解説していきます。
そもそも保険はかけなければいけないもの?
貿易取引は国際間の取引なので、運送距離や時間も長く、事故や破損などのリスクが高くなります。そのため、輸送中に商品の破損や損壊が発生した場合に金銭的損害を補うため、貨物保険をかける*のが一般的です。
*少し専門的な言葉になりますが、保険により金銭的損害を補うことを「填補する」と言います。また、保険をかけることは「付保する」と言います。
貿易取引には保険を強制する法や規則がないため、「必ず保険をかけないと貿易取引ができないのか?」と問われると、「できないわけではない……」という回答にはなります。
ただし、長い輸送は商品に対してダメージを与える可能性も高いですし、天候による予期せぬトラブルも起こり得るため、無保険での取引はオススメしません。
また、国内取引と比較すると、貿易取引は輸送中のアクシデントやトラブルが起きることも珍しくないので、貨物保険には必ず入りましょう。
ところで、貨物保険は、貨物“海上”保険という名称でも呼ばれるのですが、“航空”貨物に関する保険も含まれています。貿易事務の初心者の方は、ちょっと変に思われるかもしれませんが、ぜひ覚えておいてくださいね。
輸出者、輸入者のどちらが保険をかける?
保険をかけるタイミングについてお話する前に、輸出者、輸入者のどちらが保険に入るかについてご紹介しておきましょう。
輸出者、輸入者のどちらが付保するのかは、インコタームズによって決まります。原則として、国際運送期間中に危険リスクを負うことになっている側が、貨物海上保険の契約をするのですが、CIP、CIF条件は例外で、輸送期間中、危険負担することになっている輸入者ではなく、輸出者が保険契約します。
保険契約者になるもの
インコタームズ | 保険契約者 |
EXW | 輸入者 |
FAS | 輸入者 |
FOB | 輸入者 |
FCA | 輸入者 |
CFR | 輸入者 |
CPT | 輸入者 |
インコタームズ | 保険契約者 |
CIF | 輸出者 |
CIP | 輸出者 |
DAP | 輸出者 |
DAT | 輸出者 |
DDP | 輸出者 |
– | – |
保険をかけるタイミングは?
貨物保険の保険期間は、原則として輸出地点(倉庫など)から輸入地点(倉庫など)までとなっています。そのため、保険契約者は、その取引の輸送において無保険期間が生じないよう、“運送が開始する前に”貨物保険に加入する必要があります。
ただ、売買契約を締結した直後は、船名や出港日など貨物保険の申し込むに必要な情報が確定していません。
そこで、保険契約者は輸送の詳細が決まる前に仮の内容で加入する「予定保険」に入るのが一般的です。その後、船積通知(Shipping Advice)が届き、船名や出港日が確定した時点で保険会社に確定申込を行います。ちなみに、確定申込がされたものを「確定保険」と言います。
ちなみに、予定保険には、取引のたびに申し込む「個別予定保険」と、一定期間内のすべての輸入貨物を予定保険にしてくれる「包括予定保険」があります。貿易取引の頻度が高い会社では、「包括予定保険」に入っていることが多いのですが、会社によって方針は異なりますので、気になる方は一度確認してみましょう。
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