秘書が心得ておくべき「冠婚葬祭・贈答・手土産」のマナーとは?
上司のスケジュール管理をはじめ、社内外との調整、来客応対などを行う秘書のお仕事。忙しい上司が円滑に業務を進められるようにサポートする、重要な役割を担っています。
秘書のお仕事では、時として上司の代理で業務を行ったり、会議や出張など上司の外出に同行したりすることもあります。特に、冠婚葬祭の際は、「会社として」「上司の立場として」の対応を行う必要があるため、秘書としてもマナーや対応はぜひ覚えておきたいところ。
いざというときに落ち着いて対応できるよう、最低限守らなければいけないルールをはじめ、秘書として心得ておきたい「冠婚葬祭・贈答・手土産」の基本的なポイントについてご紹介します。
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- 目次
- 「冠婚葬祭」とは何かを理解しよう
- 慶事(お祝い関連)のマナー
- 弔事(お悔み関連)のマナー
- 贈答の際に押さえておくべきマナーは?
- 手土産の選び方・渡し方のポイントって?
- マナーは相手への思いやりを形にすること!相手に合わせたおもてなしの心を忘れずに
「冠婚葬祭」とは何かを理解しよう
上司には取引先などから、日々さまざまなお知らせが届きますが、そこで注意をしておきたいのが、冠婚葬祭に関する連絡。
そもそも「冠婚葬祭」は、人の生涯で起こる礼式を意味する言葉で、冠は「元服・成年式」、婚は「結婚式関連」、葬は「葬式関連」、祭は「先祖供養の祭り」を表しています。現在では、祝賀や葬儀といった慶弔の儀式のことを指すのが一般的です。
秘書として、まず身につけておきたいのは、慶事や弔事に関する知識です。どちらも人の生涯に関わる重要な節目だからこそ、伝統的なしきたりに則った振る舞いが問われます。それぞれのシーンごとに具体的に学んでいきましょう。
慶事(お祝い関連)のマナー
慶事(けいじ)とは、お祝い事全般のこと。一般的に、結婚や出産をはじめ、七五三や成人式・還暦、そして引越しや新築なども慶事にあたります。
例えば、取引先の祝賀会などに上司が招待された場合、同行する秘書も祝賀会でのマナーを意識して振る舞うことが大切。お祝いのときにきちんとした対応をすることは、ビジネス上で良い関係を保つ潤滑油にもなります。
ビジネスに関わる慶事にはさまざまな種類があります。
ビジネスに関わる慶事の種類
ビジネス関連の慶事としては、会社単位のものと、個人単位のものの2つに分けられます。会社単位の祝賀行事としては、設立記念などの式典・祝賀会、工場などの落成式、竣工式、新店舗の開店披露が挙げられます。また、個人単位でいうと、取引先企業の担当者や社内関係者の栄転・昇進・賀寿・受賞・受章・結婚・出産なども慶事にあたります。
なお、個人単位の慶事は、どこまで秘書がサポートするか企業によっても異なります。対応する範囲については、事前に先輩や上司に確認しておくと良いでしょう。
慶事のお知らせが届いたら、次にやるべき秘書の業務は?
慶事のお知らせが届いたら、なるべく早く上司に報告し、どういった方法でお祝いを伝えるかを確認しましょう。取引先企業の祝賀行事やパーティーなどにお招きされた際には、すぐに上司にスケジュールを相談しましょう。
お祝いの連絡(電話、手紙、祝電など)
上司が出向いて直接お祝いを伝えることができない場合は電話や手紙、祝電でお祝いの連絡を。祝電を利用するのが一般的です。
お祝いの品や花、ご祝儀の贈呈
お祝の品や花の相場は3万円前後ですが、お相手の会社や上司との関係を考慮し、上司に確認しながら進めましょう。慶事でお祝いの花を贈る場合は、胡蝶蘭が一般的。立て札とメッセージカードをお花にたて、お祝の言葉を添えましょう。ご祝儀の金額も、慶事の種類や相手の方と上司の関係などにもよるので、まずは上司に相談しましょう。
招待状への返信、出欠連絡
返信は、丁寧かつ素早く対応しましょう。返信ハガキに記載する場合は、ただ出席に○をするだけではなく、「この度は、誠におめでとうございます。喜んで出席いたします」といった一言をなどと余白に自筆で書き添えると、より丁寧な印象になります。
祝賀会・式典への参加
祝賀会や式典に上司とともに、または上司の代わりに参加することもあります。「本日はお招きいただきありがとうございます」「ご○○おめでとうございます」「ますますのご発展(ご健勝)をお祈りいたします」など手短な言葉を受付で述べましょう。上司の代わりに出席する場合は、記帳では上司(または招待者)の名前を記入し、縦書きの場合は右下に「代」または「代理」と書く。名刺も忘れずに持っていきましょう。
どうしても都合がつかず、参加できない場合は、電報を送るという方法も。たとえ欠席でも、心を込めたお祝いのメッセージを送って、お祝いの気持ちを伝えましょう。
押さえておきたい、慶事の基本マナー
ビジネスシーンで祝賀会などに参加する場合、マナーを間違えると相手方との信頼関係を損なう危険性も。会社の代表として招待される上司の秘書として、ふさわしいマナーを身につけておきましょう。
秘書の服装
第一印象を左右する服装は、特に気を付けたいポイント。おめでたい席であっても、華やかな色や目立つデザインのものは避けましょう。お祝い事の種類にもよりますが、フォーマルな服装(紺、ベージュなどの改まったスーツ、ワンピース)が基本です。
欠席時のマナー
欠席の場合はすぐに返信せず、1週間ほどたってから発送しましょう。「残念ながらどうしても外せない先約がありますので、失礼いたします」などと書き添えるのも忘れずに。
忌み(縁起の悪い)言葉を使わない
お祝いの席では避けたい言葉を「忌み言葉」と言います。例えば、結婚式では別れを連想させるような「別れる」「切れる」「割る」「帰る」「出る」「再び」などはNG。別の言葉に言い換えるよう、慎重に言葉を選びましょう。
弔事(お悔み関連)のマナー
弔事(ちょうじ)とは、葬式などのお悔やみごとを指します。ビジネスシーンにおける弔事としては、取引先のお客様の訃報や、社内の部下の葬式に上司として参列するといったケースが考えられます。弔事は、急に発生することがほとんどなので、とっさに慌てることのないよう大事に備えてしっかりとマナーを覚えておきましょう。
ビジネスに関わる弔事の種類
ビジネスに関わる弔事としては、取引先企業の担当者や自社社員の通夜・葬式が挙げられます。その際、上司本人はもちろん、会社の代表として秘書が参列するケースもあるでしょう。
代表クラスの葬儀であれば、「社葬」を行う場合も。社葬は会社に功労した方が亡くなった際に、遺族とともに会社が主体となって行う葬儀のことで、主に故人と同等の役職の人が参列します。
会社として「弔電」を送ることもあります。ビジネス弔電の場合はシンプルなものが好まれます。
例:貴社〇〇様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみを申し上げます。
弔電を出す場合宛名と差出人欄は、以下のような書き方になります。
基本的に宛名の部分には役職名や部署名は入れません。
宛名:喪主名
差出人:会社名 役職名 部署 社員一同(または名前) 会社の住所
訃報を受けたら、次にやるべき秘書の業務は?
訃報を受けたら当然悲しい気持ちが先立ちますが、まずは秘書としてすべきことしっかりと行いましょう。
【確認事項】
・逝去日時
・死因(遺族の意向による)
・通夜と告別式の日時、場所
・葬儀の形式
・喪主の名前
【葬儀の形式】
葬儀の形式には3種類あり、お悔やみの方法が異なります。
・仏式…焼香
・神式…玉串奉奠(たまぐしほうてん)
・キリスト教式…献花
【上司への対応】
・香典の金額と名前
・弔電の有無
・上司のスケジュールを確認
押さえておきたい、弔事の基本マナー
秘書の服装
通夜:地味な色のスーツやワンピースであれば、喪服でなくても大丈夫です。
葬儀:黒いスーツやワンピースを着用。光沢のあるものは選ばないようにしましょう。
両日とも、結婚指輪、真珠のネックレス以外のアクセサリーは避けましょう。
上司の代理出席の場合
上司が出席できず、代理で参列する場合、受付の芳名帳には上司の名前を。後には(代)を加えます。
贈答の際に押さえておくべきマナーは?
そもそも「贈答品」とは、大きく分けると冠婚葬祭に由来するものと、お中元やお歳暮など季節のあいさつに由来するものがあります。いずれにも共通するのは、「おめでとうございます」というお祝いや、「いつもありがとうございます」という感謝、「これからもよろしくお願いします」という思いやりの気持ちなどを込めて贈るということ。
ビジネスシーンで贈答品を送る場合は、それぞれのシーンにふさわしいマナーがあります。特に、慶事や弔事で贈答をする場合には、お相手に失礼のないようにマナーを身に付けておきましょう。ここでは、贈答の際に押さえておくべきマナーをご紹介します。
ビジネスシーンではどんなときに贈答するのが一般的?
取引先企業のお祝い事に、上司に代わって秘書が贈答品の用意をすることもあります。また、ビジネスシーンでは、慶弔以外に、取引先企業に対する季節の挨拶(お中元、お歳暮、年始のご挨拶)や、お見舞いなどに贈答するケースがあります。
【具体例】贈答についての基本マナー
贈答品についての基本的なマナーを、具体的な例を挙げてご紹介します。
贈答品の表書き、熨斗(のし)、水引(みずひき)
① 熨斗(のし)
「のし」は、ご祝儀袋などの右上にある、色紙を細長い六角形に折った飾り物のこと。昔から縁起ものとされ、「喜びが伸びる事を祈願する」という意味があります。お祝いごとにのみ使用されますが、生ものの場合は不要です。
② 水引(みずひき)
開業祝いなど人生で何度か起こりうる慶事には、赤白の「蝶結び」を使います。1度だけのほうが良いことは「結び切り」です。結婚は赤白の「結び切り」、弔事は白黒「結び切り」を使いましょう。
③ 表書き(上書き)
表書き(上書き)は、慶事、弔事、季節の挨拶、お見舞い品など、目的に応じて表記名を変えます。新店オープンなどのお祝い事であれば「御祝」、栄転や転勤の場合は「祝御栄転」、退職の場合は「御餞別」などが一般的。なお、表書き(上書き)は、水引の上のスペースに記載します。
④ 贈り主の企業名、名前
水引の下のスペースに、贈り主の氏名、または「会社名+姓名」を書きます。会社名を書く際は、名前の右側に氏名より小さく書きましょう。筆記具は毛筆や黒の筆ペンが一般的。うす墨は弔事用なので、それ以外の用途では使わないようにしましょう。
現金
現金を包む場合、慶事の際は新札を用意しますが、弔事の際は新札を避けましょう。漢数字で金額を書いた封筒に、お札の表面を表側にして入れます。慶事は濃い墨、弔事は薄墨で金額を書きましょう。
祝い花
取引先の方の昇進や赴任などのお知らせが届いたら、正式な就任日の早い時間に届けましょう。就任祝いの花は、「胡蝶蘭」が定番です。「御祝」「祝 御就任」などの立札を忘れずに。
手土産の選び方・渡し方のポイントって?
手土産選びも、秘書としての腕の見せどころと言えます。大切な接待や商談時に渡すほか、日ごろお世話になっている方にお渡しするものだからこそ、選び方や渡し方には気配りが必要です。相手の方に喜んでいただくために、手土産の選び方や渡し方のマナーをご紹介します。
手土産のマナーは?
手土産の基本は、いつまでも残るものより、食べものなどの「消えもの」が一般的だと言われています。接待の手土産の場合、のしにつける水引は“これから何度も繰り返す”を意味する「蝶結びタイプ」を選びます。表書きは、初めてなら「粗品」、以降は「御礼」と記載しましょう。
最適な価格帯は?
価格帯は3,000円~5,000円のものが目安。受け取った相手に気を遣わせないよう、相手との関係性や状況に合わせて、安すぎず、高すぎない範囲で選びましょう。
喜ばれる手土産のポイント
常温保存できるもの
食べものであれば、常温保存ができるものを選びましょう。賞味期限は2週間以上のものがベター。
季節のものや珍しいもの、ゆかりのあるもの
季節に合ったものや限定品、簡単には入手しにくいものなども喜ばれるポイント。地元の名産など、上司や相手の方にゆかりのあるものから選ぶと、会話も弾みます。
相手の好みに合ったもの
言うまでもありませんが、甘いものが苦手な方にお菓子を渡しても喜ばれませんので、相手の好みに合わせたものを選びましょう。
持ち運びに便利なサイズ
持ち帰っていただくことを考え、重すぎず、適度なサイズのものを選びましょう。
会社内でシェアしやすいもの
食べものの場合、個包装で、会社の方で分けてもらいやすいものが喜ばれることも。
競合メーカーは避ける
お渡しする相手の会社がメーカーなどの場合、競合メーカーの商品は絶対に避けましょう。
渡し方など
・必ず上司から相手に渡してもらうようにしましょう。秘書から手渡す場合も、必ず『上司からです』と伝えることを忘れずに。
・相手先が複数名の場合、一番上の立場の方に渡しましょう。
・基本的には紙袋や風呂敷から取り出しましょう。贈答品は正面を向け、両手で持って渡すこと。
・紙袋のまま渡すときは、「袋のままで失礼します」など一言添えましょう。
その他のポイント
「贈答品・手土産管理リスト」を作る
相手に合わせたものといっても、贈答品はとっさには思いつかないもの。相手の方と話す機会があるときに、さりげなく好みを聞き出してメモを残しておく、日常の業務で手が空いたときに「贈答品・手土産管理リスト」を作っておくと便利です。「誰に何をいつ渡したか」が分かれば、重複も防げるのでオススメの方法です。
日頃から情報収集をしておく
「お花ならこの業者」「お菓子系ならこのメーカー」のように、「贈答・手土産リスト」を作っておいて、その中から選べるようにしておくと、いざというときに重宝します。秘書の先輩や詳しい友人から情報収集をするのもオススメ。秘書としてのセンスの良さを発揮して、トレンド情報を押さえながら、相手に合わせて、話題の商品を用意できたら、上司の信頼感も増すのではないでしょうか。
贈答品・手土産の候補の中から上司に選んでもらう
手土産について細かく商品を指定する上司もいれば、ある程度任せると言う上司もいるでしょう。「任せる」と言われた場合は、上司の好みや相手の好みを考慮しつつ、いくつか候補を提示して、何が良いのか相談するのもオススメ。
自社製品を贈る
自社がメーカーの場合、会社によっては、自社製品を手土産としてお渡しするケースも。会社の取り組みを相手に知ってもらうことにも繋がります。新製品や、季節限定・数量限定の製品など、少し特別感のあるものであれば、なお喜ばれるのでは。
マナーは相手への思いやりを形にすること!相手に合わせたおもてなしの心を忘れずに
今回は、「冠婚葬祭や贈答、手土産」についての基本的なマナーをご紹介しました。これらは、いざというときに役立つ社会人としてのマナーであると同時に、「できる秘書」としての腕の見せどころ。状況に合わせて適切に対応できるよう、基礎知識をしっかりと身につけておきましょう。
今回ご紹介した「マナー」には、礼儀作法という意味だけでなく、「相手への思いやり」や「相手を大切に思う気持ち」という意味も込められています。相手へのお祝いの気持ちをすぐに伝えられるよう、スピーディーな対応をしたり、相手に喜んでもらえるような贈答品を選べるよう、日頃から情報を収集したり…そんなひと手間が上司の大切なお客さまとの関係をより良好にするための応対や贈り物につながります。
ときにはマニュアルにとらわれず、相手に合わせた所作ができるよう、日ごろからマナーについて学んでおくことが大切。上司から頼られる存在となれるよう、秘書としての知識・スキルも日々ブラッシュアップしていってくださいね。
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