【Power BIインタビュー】日本マイクロソフト 酒井麗菜さん
日本マイクロソフト株式会社に勤務し、Microsoft Azureの公式ウェブサイトの分析改善を担当している酒井麗菜さんに、Power BIの活用方法やExcelからの移行について伺いました。
Power BIを使った業務について教えて下さい
ウェブサイトの管理業務の一環として、Microsoft Azure公式ウェブサイト(https://azure.microsoft.com/ja-jp/)と、日本市場向けのランディングページの2つのサイトのウェブ解析データを元に、Power BIでレポートを作成し、集客の改善分析を行っています。
このMicrosoft Azure公式サイトは、サービスの情報提供のほか、無料アカウント登録の入り口となっており、この登録完了がサイトのコンバージョンに設定されています。私は、ウェブ解析の数字をもとに効果検証をおこない、ウェブサイトの具体的な改善案を導き出すことで、実際のアクションの方向性を提示するところまでを担当しています。
図は、サンプルデータを使用したレポートです。過去12週間の訪問者、UU、Visits などをグラフ化しています。
業務にPower BIを使い始めたきっかけを教えて下さい
以前は、分析レポートをすべてExcelで作成し、PowerPointに転記していたのですが、上長からの勧めもあり、Power BIでのレポート作成にチャレンジすることにしました。
ウェブ解析から読み込むデータは膨大で、特に日毎のアクセス状況をまとめるのは、Excelでは処理スピード上かなり厳しかったのです。そこで、まずデイリーレポートをPower BIへ移行したところ、予想以上に快適だったため、会議で使用する週次レポートもPower BIに移行することにしました。
特に処理速度の面でExcelからPower BIへの移行の成果が高かったのですね
はい。速度に加え、作業行程も大幅に効率化できました。あくまで主観ですが、レポート作成にかける手間は50%くらい削減できたと思っています。
今までは、レポートにするデータの範囲を指定したり、グラフの範囲を再調整したりと、細かな部分に手間がかかっていたのだと実感しました。用意しておくべきレポートの種類も多いため、Excelの作業を終えることに精一杯で、本来もっと時間をかけるべき検証に十分に取り組めなくなってしまうことが課題でした。
Power BIに移行してからは、ウェブ解析ツールから取得したデータを「更新」ボタンで新しいものに差し替えるだけで、ほとんどの作業が完了してしまいます。直感的に「積み上げ棒グラフ」や「円グラフ」などを作成でき、日付を選択するだけで過去のデータ比較もできるようになったため、わざわざグラフを再作成するような手間がなくなりました。
なにより、本当にやりたかった分析にしっかり時間をかけることができるようになったのがうれしいです。
今後はさらに、基本的なレポートはすべて最小限の作業で完了できるよう、効率化を図っていきたいと思います。
レポートのベースを変えたことで、ビジネスにも変化がありましたか?
大きな変化としては、会議でのデータ活用がよりスピーディになり、現実のニーズにフィットしたことだと思います。
Power BIをレポートに導入する前は、週次の会議の場で、Excelで作成したチャートをPowerPointに貼り付けた静的な資料を見ながら説明していましたが、Power BIを使うようになってからは、Power BIのスクリーンを直接見ながら説明をするようになりました。
会議中に、例えば「では昨年同月はどうだったか?」「先月の同じタイミングで何が起こったか?」などを参照したくなったときも、データはすべてPower BIに蓄積してあるので、その場で必要項目を調整し、要望にかなう情報をリアルタイムに提示することができます。そのことにより、より深い考察をその場で行うことができます。
会議の進め方が動的になることで、確実に決断の速度は上がっていると思います。例えば、本社からの公式な解析情報は、1か月後などにレポートが上がってくるものもあって、何か問題が起きていたとしても、本来対処すべきタイミングを逃してしまうこともあります。
また、上長は米国本社などの新しい情報を常にインプットしているため、刻一刻と状況が変わり、それに伴い必要な情報も変わります。定型の報告レポートだけでは、議論したい内容に対してデータが足りないといったことも発生しますが、だからといって分析を来週に持ち越していたのでは、遅れてやってくる報告と同じことで、実行に移すタイミングを失ってしまいます。
ビジネスの決定がデータドリブンになるなか、最新のデータをいつでもチェックして議論したい、状況に合わせてライブでデータを確認し、アクションへ移したい、といった業務は増えると思われます。Power BIはこういったニーズにふさわしいツールだと感じています。
これまでのキャリアについて教えて下さい
もともとは、紙の広告などを扱うDTP・デザインの仕事からキャリアをスタートし、時代がだんだんウェブに移行していったこともあり、コーディングやウェブ デザインを学んでウェブ制作の仕事に就きました。制作の実務からその後ディレクション職にうつり、クオリティチェックや制作の管理などWeb業務のマネジメントを行うようになりました。
現在は、ウェブサイトやブログの管理・更新・運用をメインに担当しながら、サイトの分析を行っています。分析はそれまで未経験でしたが、これまでディレクター時代に学んだことを活かして、さらにスキルを広げられるのではないかと思い、実務で担当しながら勉強しています。
次々と新しい技術が出る分野はスキルアップも大変そうですね
新しいツールや技術を試したり、学んだりすることが好きなので、特に大変だと感じることはありませんでした。Power BIを使った業務も、楽しんでスキルアップできています。
ツール自体も年々扱いやすいインターフェースのものが増えてきたので、以前よりも操作方法を覚えるのに苦労する、という感覚はあまりないですね。
ただ、Power BIや、ウェブ解析に使用しているDAX(Adobe Digital Analytics)は、まだ日本語での情報が少なく、書籍も少ないため、業務で使いながら実践的な使い方を学んでいます。調べ物をするときは、海外サイトや本家のマニュアル情報が一番役立っていますね。
今後はどんなことを勉強されたいですか?
PCやITのスキルは業務においてはだいたいのところは補えているので、新たに勉強したいと思っているのはマーケティングの基礎です。
デジタルマーケティングに限らず、人はどういう工程を経てものを購入するのかといったことを学びたく、本をなるべく多く読むようにしています。知識を広げることで、もっと深みのある分析レビューができるようになりたいと考えています。
業務が楽になったことは先にお話しましたが、勉強したりスキルを伸ばしたりしていくために、ルーチンとなっている作業の効率化を考えることも大切だと感じています。
私自身、Excelだけで効率化を図ろうとしておりましたが、Excelから離れることで効率化できるケースもあるので、視野が狭くなりすぎないように、さまざまな情報収集をしたり、新しいツールにもアンテナを伸ばしたりしていきたいと思っています。
これからPower BIを使ってみる方にアドバイスと励ましの言葉をお願いします
まずは、ぜひPower BI Desktopをサイトから無料ダウンロードして、実際に Power BI に触れてみてください! シンプルな表を作成するだけでも、ビジュアル的な部分や、直感的操作の快適さに衝撃を受けると思います。
また、実際に現在Excelで分析をしている方には、いまの分析で使っているデータを何か1つでもいいので、Power BIへ移行してみることをお勧めします。私も、移行するのにどれだけ大変だろうと臆していましたが、実際にさわってみると、簡単に移行できることに驚きました。これまでExcelで行っていた業務が、どこか必ず軽減されるはずです