「歩引き」|経理用語解説

今は法律違反!古い商習慣の「歩引き」

今回の経理用語は「歩引き(分引き)」。

歩引き(ぶびき)とは、売上や仕入に対して行う割引のひとつ。決められた期日よりも先に請求金額を支払ってもらいたい、早く現金を手に入れたいという企業が、請求先に「期日よりも早く支払ってもらう分、請求金額よりも割り引いてもらってかまわない」と申し出ることで発生する割引のことです。

振込手数料や通常の値引きとは別の割引で、そのルールは企業によってまちまちでした。
「10万円以上の売上で先に入金していただけたら、一律5%値引きしますよ」
「現金を融通するのにかかる銀行手数料分だけ値引きしますね」
といった感じで、ケーズバイケースで決められていました。

「決められていました」と、なぜ過去形なのかと言うと、実は現在、歩引きは下請法で規制を受けているのです。

経理用語ミニミニ豆知識
関西で特に知られていた歩引きは、もともと繊維業で広まった商習慣。反物などは仕入れてもすぐに現金化できないため、経営が苦しくなりやすいお店が考えついたそうです。自分たちは早く現金が入り、支払う側は支払額が減るというお互いにメリットのある制度として考えられていました。

うまく使えば双方にWin-Winのメリットがあるこの「歩引き」。しかし、なぜ法律違反になってしまったのでしょうか。実は、歩引きを都合のいいように解釈して、「ウチは歩引きでしか支払いません」と主張する会社が出てきてしまったのです。

特に現金が急いで必要でない場合でも、「ウチは支払先すべての皆さんに歩引きして支払っているので、あなたのとこでも歩引きにしますよ」と言われても、困ってしまいますよね。しかし、立場の弱い下請け業者などは、こういう苦しい条件を飲まざるを得ないこともあります。このような取引では、ビジネスとしてフェアではありませんよね。

このような経緯から、歩引きは下請法で違反行為とされているそうです。特に平成15年の下請法改正では、規制対象が製造業以外にも拡大されました。そのため、さまざまな業界で取引の公正化が進められているのですが、公取委から勧告を受ける企業はまだなくなっていないようです。もし心当たりがあったら、公取委への相談を検討してみても良いかもしれません。

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