飲食業の“まかない”を経費として処理できる?
経理・会計についての疑問が生まれるのは、何も企業に限ったことではありません。
例えばカフェのオーナーとして、経理・会計処理もできる部分は自分でやっているという方の場合、次のような疑問も。「お店には2人のアルバイトがいるので、休憩時間には“まかない”を出しています。このまかないをうまく経費にすることはできないのでしょうか?」。
この疑問に答えるべく、今回は飲食業の“まかない”についてご紹介します。
“まかない”はどうやって処理する?
まず基本からお話しておきましょう。“まかない”のように、金銭以外で支払われる報酬のことを「現物給与」と言います。たとえば証券や金券、自社商品などのほか、社員旅行も現物給与に含まれます。
「まかないって報酬なの?」「福利厚生では?」「税金がかかるの?」…そう思った方は、なかなかするどい経理視点をお持ちです。
もし“まかない”が給与ならは所得税がかかりますし、福利厚生ならかからりません。この差は従業員にとって重要な問題ですよね。
現物給与の課税について
今回の“まかない”のように、金銭以外で支払われる現物給与は課税対象になります。食事はお金に換算して報酬に合算され、「給与」として処理されるからです。
その具体的な額は都道府県によって異なり、厚生労働省が告示する「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」に詳しく示されています。この額に応じた税金が発生するというわけです。
福利厚生費として処理することも可能!
ですが、実は一定の条件を満たすことで、“まかない”は給与として課税しなくて良い、つまりは「福利厚生費」としての処理が可能になります。
この点については、国税庁「源泉徴収のあらまし」で、以下のように記載されています。
使用者が支給する食事(宿日直又は残業をした場合に支給される食 事を除きます。)については、その支給を受ける人がその食事の価額 の半額以上を負担すれば、原則として課税されません。ただし、食事 の価額からその人の負担した金額を控除した残額(使用者の負担額) が月額3,500円を超えるときは、その使用者の負担額(その食事の価額 −その人の負担した金額)の全額が給与所得とされます(所基通36− 38の2)。 この場合の使用者の負担額が3,500円を超えるかどうかは、消費税及 び地方消費税の額を除いた金額により判定します(平元直法6−1(最 終改正平26課法9−1))。
引用元:第2 給与所得の源泉徴収事務
ポイントは、以下の2点です。
・従業員などが食事の金額の50%以上を負担すること
・企業の負担額が月額3,500円(税抜)以下であること
このいずれかを満たすことで、給与ではなく福利厚生費にすることが可能。また、例外的に以下のケースでも給与にしなくて良いことになっています。
・残業をしている従業員や宿直者に対する食事
・深夜勤務者に食事代を補助する際に、1食あたり300円(税抜)以下の金額を支給する場合
上記のケースでも福利厚生費としての処理が可能になります。飲食店オーナーの方は、ぜひ利用しましょう。
現物給与と福利厚生の違いとは?
結局のところ、現物給与と福利厚生はなにが違うのか。はっきり言ってしまえば、この2つに明確な違いはありません。同じ“まかない”メシでも、給与になることもあれば福利厚生費になることも。
給与とは、労働に対する経済的な対価のことです。一方の福利厚生費は、従業員一人ひとりが快適に働ける環境を整えるための費用のこと。
そのために必要な経費と捉えられるものは、定められた範囲で福利厚生費に計上できるというわけです。今回の“まかない”ように、見方が変わることで扱いが変わることを知っておきましょう。
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