悩み・質問

2015/12/04

取引先を招いた忘年会・納会の経費はどう処理する?

著者: パソナ キャリアコーチ(経理担当)

取引先を招いた忘年会・納会の経費はどう処理する?

取引先の方を招待して開催することもある会社の忘年会や納会ですが、ここで経理担当者が頭を悩ませることのひとつが、経費上どう処理するかの判断かもしれません。

勘定科目を「福利厚生費」として処理する場合もあるようですが、一般的に何が正しいのでしょうか。そこで今回は、「忘年会・納会」の経費の処理方法についてご紹介します。

勘定科目は参加メンバーや目的によって変わる

福利厚生費は、従業員のための会食や旅行、行事、医療、保険などの費用にあたります。つまり、従業員のみが参加する忘年会の場合は、「福利厚生費」として処理することになります。

では、取引先が参加した場合はどうなるのでしょうか?これは「従業員のため」だけではなくなる可能性があるため、福利厚生費ではなく「交際費」に変わる可能性があります。

福利厚生費ではなく「交際費」になる場合とは?

「可能性がある」「場合がある」と、断定的な言い方を避けたのには理由があります。それは、忘年会に取引先を招いたとしても、その会の目的によっては「福利厚生費」として処理できることもあるからです。法人税(国税庁)では、交際費のことを以下のように規定しています。

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます)のために支出する費用をいいます

引用元:交際費等の範囲

ただし、交際費から除く費用も同時に規定しています。

専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用

引用元:交際費等の範囲

つまり、従業員の慰安を目的とした忘年会に、たまたま取引先の人が数名参加したとしても、それは交際費ではなく「福利厚生費」として処理し、全額損金算入*しても良いと捉えられます。逆に、取引先が多数参加する、接待要素の大きい忘年会は交際費として処理する必要がある、というわけですね。
*法人税を計算する際に、収益(益金)から差し引くことのできる費用のこと。

さらなる“裏ワザ”も!

さらに、交際費から除く費用としてこんな記述もあります。

飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用

引用元:交際費等の範囲

これはいわゆる「5,000円基準」と呼ばれるもので、1人あたり5,000円以下の飲食費であれば、「会議費」として全額損金算入できるという規定です。つまり、忘年会という名の会議を1人5,000円以内の飲食費で行えば、会議費として処理できるというわけです。

福利厚生費と交際費の違いは意外と大きい

ちなみに、従業員全体ではなく、一部の従業員のみを対象にした忘年会や、役員のみで行う忘年会の場合は、福利厚生費ではなく、「社内交際費」などになると覚えておきましょう。

最後に、平成26年3月31日に交付された改正所得税法で、接待飲食費の50%は損金算入されることになりました。ですが、少しでも節税のことを考えるなら、やはり福利厚生費と交際費の違いは大きいもの。まさに経理が会社に貢献できる見極め、と言えるでしょう。会社によって勘定科目の名称が変わることもあるので、それぞれの社内規定を確認しておいてくださいね。

 

「経理」関連記事一覧
「シゴ・ラボ」では、他にも経理用語や経理の方々のキャリアアップに役立つ記事を多数ご紹介しています。その他の記事もこちらから、チェックしてみてください。

【経理用語集】実務で役立つ!頻出・経理用語100
「実務で役立つ!頻出・経理用語100」は、経理初心者の方や経理としてステップアップしたい方のための経理用語集です。
日々の業務や毎月の経理イベントでよく使われる基本的な用語を100個ピックアップし、分かりやすく用語の解説をしています。こちらからダウンロードできますので、利用してみてくださいね。

 

関連記事:

みんなの仕事ラボ(シゴ・ラボ)は、働くすべての方々に向けたキャリアアップ、スキルアップのためのお役立ちサイトです。
「仕事はずっと続けるつもりだけど、このままでいいの…?」「何かスキルを身に着けたいけど自分には何が向いているか分からない」「職場でこんなことがあったけど、これって普通?」など、お仕事をする上でのお悩みや困ったをお助けするヒントやちょっとしたアイデアをお届けします。