輸入者が輸入貨物代金の支払い猶予を受ける「輸入金融」
今回は貿易取引の「輸入金融」についてご紹介します。他に、貿易金融の「輸出金融」をご紹介した記事もありますので、併せてお読みいただくと理解が一層深まりますのでオススメです。
※関連記事:「輸出者が代金回収までのあいだに融資を受ける『輸出金融』」
「輸入金融」の二本柱、シッパーズ・ユーザンスと銀行ユーザンスを理解しよう
貿易取引では通常、輸入者(買主)が輸出者(売主)に商品代金を支払います。本来は、契約時に両者で取り決めた支払い条件・期日を守って支払うのですが、時には輸入者がその期日までの支払いが難しくなることがあります。こういったケースでは、輸出者が輸入者の支払い期日を延ばしたり、あるいは銀行が輸入者にお金を貸しつけたりするのですが、そのことを「輸入金融」と言います。
*一方、前出の「輸出金融」は“輸出者に貿易取引に必要な資金を融資する”ことを指しますが、「輸入金融」は“輸入者に必要な資金を融資する”以外に、“融資はしなくとも、輸入者の支払いを猶予する(支払い期日を先延ばしする)”場合も含んでいます
ちなみに、輸入者に輸入貨物代金(商品代金)の支払いを猶予することを、輸入ユーザンスといい、輸出者(シッパー)が支払いを猶予する「シッパーズ・ユーザンス」、銀行が支払いを猶予する「銀行ユーザンス」の2つにわかれます。
*ユーザンスは、英語で「輸出入代金の支払い猶予」の意
では、それぞれの詳細を説明する前に、シッパーズ・ユーザンスと銀行ユーザンスの違いを下図でご覧ください。
シッパーズ・ユーザンス
シッパーズ・ユーザンス(輸出者による輸入者の支払いを猶予)は通常、輸出者が輸入者へ信頼を供与していることが必要です。
というのも、一般的に輸出者は輸出貨物の商品代金をなるべく早く回収したいと考えるものですが、シッパーズ・ユーザンスでは、L/C取引の荷為替手形決済よりも代金回収を先延ばしすることになるからです。そのため、シッパーズ・ユーザンスは初めての取引などで用いられることは少なく、企業のグループ(本社と海外支社)間などで行われます。
シッパーズ・ユーザンスには2つの方法があり、一つはL/C取引にはせずにD/A決済とし、輸出者が期限付き荷為替手形を振り出して輸入者がその期日に手形代金を支払う方法と、最初から荷為替手形決済にはせずに、船積後(B/L発行後)30日までの支払いなど、双方が合意した期日に輸入者が送金する方法があります。
※関連記事:「D/P決済、D/A決済(信用状なし荷為替手形決済)の仕組みを理解しよう」
銀行ユーザンス
銀行ユーザンス(銀行による輸入者への支払い猶予)は通常、輸入貨物の到着後に輸入者が銀行に代金返済を肩代わりしてもらい、その代金返済するまでの支払いを猶予してもらうこと、またはその支払猶予期間のことを指します。
銀行ユーザンスには複数方法あるのですが、ここでは代表的な2つの方法をご紹介します。
本邦ローン(自行ユーザンス)
輸入者は、輸出者との契約をL/C取引(外貨建て・一覧払い荷為替手形決済)で行い、輸出者が振り出した荷為替手形をL/C発行銀行が輸入者の代わりとして支払い、輸入者には“外貨のまま”貸しつけます。輸入者の立場からすれば、輸出者に対しては契約通りの支払いを果たし、銀行には本来の支払期日を猶予してもらうことになります。
このユーザンスは、銀行が自行の資金で輸入者に融資するので自行ユーザンスとも呼び、最も利用されています。
外銀ユーザンス(アクセプタンス)
輸入者は輸出者との契約をL/C取引(期限付き為替手形決済)で行い、輸出者が振り出した期限つき為替手形を、L/C発行銀行はL/Cで指定された日本以外の国にある補償銀行(リンバース銀行)に引き受けて(アクセプタンスして)もらい、L/C発行銀行はその資金で輸入者へ融資、または支払いを猶予します。手形期日には、補償銀行とL/C発行銀行、またL/C発行銀行と輸入者との間でそれぞれ決済を行います。
輸入はね返り金融
銀行ユーザンスで、支払い猶予期日になっても輸入者が輸入貨物代金を国内販売先から回収できていないなどで返済できない場合には、円建ての銀行に切り替えます。それを「輸入はね返り金融」と言います。
*余談ですが、輸入貨物代金の決済について、銀行ユーザンスを利用せず初めから円貨で融資してもらうことを「直(じき)はね」と言います
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