ヨーロッパ最大の貿易港はオランダにあり!
みなさんは、オランダといえば何を連想しますか? 風車、チューリップ、ゴッホ、フェルメールなどの画家、国土の1/4が海面より低い…などなど、人それぞれ連想することがあると思います。
今日はこのイメージに加え、「ヨーロッパ最大の貿易港がある」という情報を追加してください。というわけで、ここからはヨーロッパ最大の貿易港「ロッテルダム港」の歴史・地理・面積などについてご紹介します。
欧州を代表する港、ロッテルダム港
ロッテルダムはオランダの南西に位置する港町で、首都のアムステルダムに次いで人口の多い都市。
古くはニシン漁基地だったこの地は、産業革命が起こった19世紀頃から貿易港として発展し、現在は通称「ユーロポート」と呼ばれる大きな港です。
かつて第二次世界大戦で大きなダメージを受けましたが、再建された後の1965年には、世界一の貿易量を誇りました。
2000年代に入り、中国やシンガポールの台頭で首位の座は明け渡しましたが、ヨーロッパ最大の貿易港としての地位は変わりなく、世界の港湾取扱貨物量ランキング(2017)でも6位となっています。
世界の港湾取扱貨物量ランキング(2017)総取扱貨物量
順位 | 港名 | 国名 | 千トン |
---|---|---|---|
1 | 上海(シャンハイ) | 中国 | 706,000 |
2 | シンガポール | シンガポール | 628,000 |
3 | 広州(グァンチョウ) | 中国 | 518,000 |
4 | 寧波(ニンボウ) | 中国 | 514,000 |
5 | ポートヘッドランド | オーストラリア | 505,000 |
6 | ロッテルダム | オランダ | 467,000 |
7 | 青島(チンタオ) | 中国 | 466,000 |
8 | 釜山(プサン) | 韓国 | 385,000 |
9 | 天津(ティエンジン) | 中国 | 361,000 |
10 | 大連(ターリエン) | 中国 | 334,000 |
21 | 名古屋 | 日本 | 196,000 |
28 | 千葉 | 日本 | 167,000 |
※出典:国土交通省「世界の港湾取扱貨物量ランキング」
ロッテルダム港の発展にはライン川が大きく関わっている!?
ロッテルダム港が発展した理由は大きくわけて、2つの要素があります。1つは、ロッテルダムがドイツ国内を流れるライン川の河口にある町だったという地理的な理由。
もう1つは、ヨーロッパ各国の需要を踏まえ、ロッテルダム港自体(ロッテルダム市*)が利便性を高めたということなのです。
*2004年までロッテルダム市が港湾を運営。現在は株式会社化され、オランダ政府とロッテルダム市が株を所有する「ロッテルダム港湾公団」によって運営されています
では、前者の理由であるライン川について、少しご説明しましょう。
ライン川(全長1,233km)は、スイスのトーマ湖を源流とした、ドイツ国内で698kmに渡って流れる川です。その後オランダ国内に入り、ロッテルダム付近で北海へとそそがれます。
実は、ライン川は“ドイツの発展はライン川とともにある”と言われるほどドイツ産業に大きく関わりがあり、産業革命の時代に発展したドイツのルール工業地帯もこの川沿いにあるのです。
ロッテルダム港はこの時代にルール工業地帯とともに発展し、港からルール地方へは鉄鉱石や石炭が、ルール地方から港へは鉄製品など工業製品が運ばれました。
また、1868年のマンハイム条約でライン川がドイツ以外の国の船も自由に航行できる国際河川となり、ロッテルダム港はさらに貿易港として発展していきます。
長さ40km、総面積1万ヘクタールに渡り広がるロッテルダム港
地理的条件もあり発展したロッテルダム港ですが、その後も、近隣諸国のニーズに応え、自らも貿易会社が利用しやすい環境を整えたからこそ、現在もヨーロッパ最大の貿易港として栄えています。
ちなみに、ロッテルダム港はとても広く、港の長さは約40km(東京—横浜間くらい)、総面積は約1万ヘクタール(東京ディズニーランドとディズニーシーの2つのテーマパークが100個入るくらい)もあります!
その広大な敷地は7つの地区(国土交通省の資料参照)に分かれ、地区ごとに取り扱う貨物が分かれています。
例えば、原油・ガソリン・ディーゼルなどの石油精製製品を専門に扱う地区、ばら積み*で積まれた石炭や農作物(穀物など)を取り扱う地区、生鮮食品を取り扱う地区、コンテナ貨物を取り扱う地区、などがあります。
*ばら積み貨物については、「タンカー、バルカーって何?コンテナ船以外の貨物船の種類」のバルカーの項目をご覧ください
また、それぞれの地区では、貨物を船積みして陸揚げできるだけではなく、それぞれの貨物を専門的に保管・加工する施設をはじめ、その貨物を迅速に荷さばきできる体制、そして、効率よく国外に運搬できるパイプラインや鉄道、内陸水運などの設備が整っていて、港内には各種関連企業が拠点を構えています。
ロッテルダム港は、現在も最新のシステムを導入したり、より多くの貨物を保管できるよう港を拡大したり、ヨーロッパ諸国の各港との連携を強化したり、貿易港としてさらに充実させているという情報も。これからもヨーロッパの物流にとって大切な役割を担う港と言えるでしょう。
「貿易・海外営業事務」関連記事一覧
シゴ・ラボでは、その他にも貿易取引に関する知識や実務で使える仕事術など、貿易事務の方に役立つ記事を多数ご紹介しています。他の記事もチェックしてみてくださいね。
貿易業界で働くための貿易用語チェックリスト【入門編】
貿易事務を目指す方に向けて、「まずこれだけは覚えておきたい」現場で頻繁に使われる貿易用語をebookにまとめました。ダウンロードして、ぜひご利用ください。
参考サイト: