貿易輸送で「台風による遅延」が発生したら?遅延発生時に貿易事務がすべきことについて解説!
貿易取引では、品物を輸送する際に、船便(海上輸送)や航空便(航空輸送)を利用するため、天候の変化に影響を受けてしまうことがよくあります。特に島国である日本では、台風が発生すると、船や飛行機の運航スケジュールに大幅な遅れが発生するケースも。
そこで今回は、台風などの自然現象によって、品物の到着が遅れてしまう理由と想定される遅延の例、さらに品物の到着が遅れた時に貿易事務が対応すべきことについてまとめました。
- 目次
- なぜ貿易物流ではスケジュールが遅れることがあるの?
- 台風で到着が遅れる理由①航路に台風の通り道がある
- 台風で到着が遅れる理由②コンテナヤードが閉まる
- 台風が発生したときに貿易事務が行うべき対応は?
- 貿易取引では余裕を持った輸送スケジュールを組もう
なぜ貿易物流ではスケジュールが遅れることがあるの?
貿易物流、特に海上輸送では「貨物がスケジュール通りに届かない」ということが、しばしば起こります。
というのも、ヨーロッパやアメリカ、東南アジアなど、遠方からの貨物船は、日本へ直行する便ばかりではなく、シンガポールや香港などの「中継港」に寄って、行き先別に貨物の積み替えを行い、日本に運ばれることが多いからです。
中継港での作業が遅延すると、全体のスケジュールも少しずつ遅れることになり、結果的に日本の港への到着が遅れる、ということもしばしば発生します。
一方、中国や台湾、韓国など、近隣国からの近距離海上輸送は直行便も多いため、比較的スケジュール通りに貨物が輸送されています。
ただし、「神戸→大阪→横浜→東京」といった順番で、日本各所の港に寄港しながら運航することも多いため、後に到着する港ほど、到着が遅れる可能性は高くなるでしょう。
また、海上輸送と航空輸送を比較してみると、海上輸送の方が経由地に寄港する回数も多く、積んでいる貨物の量も多いため、積み降ろしに時間がかかると言えます。
このような理由から、航空輸送と比較すると、海上輸送の方が遅延の可能性が高いと言えますが、どちらの輸送方法も天候の影響を受けやすいということを覚えておきましょう。
台風で到着が遅れる理由①航路に台風の通り道がある
赤道付近の海上で発生する台風は、通常、南から徐々に北上していきます。日本以外でも、8月~9月にかけて台湾やさらに南の東南アジア諸国を縦断する台風が、たびたび発生しています。
そのため、東南アジア方面からの海上輸送の場合、台風が発生すると船が港を出られなかったり、船のスピードを落として運行したりするため、日本到着のスケジュールが大幅に遅れてしまうことがよくあります。
先ほど挙げたシンガポールや香港は世界最大の中継港ですが、そこから日本までの航路には、台風の通り道も多く、ひとたび台風が発生すれば、船は貨物の安全のためにスケジュールを遅延せざるを得ないのです。
航空輸送の場合も、台風上陸時には離陸する便が欠航になってしまいます。日本に向かっている便は、各航空会社や各空港の判断のもと、到着手前の空港で一時着陸するといった安全策がとられます。
台風は通常、数時間~半日で過ぎ去るため、運航再開が比較的早い航空輸送は、海上輸送ほどの遅延はありませんが、到着が1~2日遅延することはあります。
台風で到着が遅れる理由②コンテナヤードが閉まる
コンテナヤード(CY)とは、これから船に積んだり、船から荷下ろしてきたりしたばかりの貨物(コンテナ)を保管しておく場所です。
台風が発生するとコンテナヤードは、保管しているコンテナを暴風被害から守るための準備に入り、貨物船とのコンテナの受け渡し業務も早い段階でストップしてしまいます。
また、台風が去ったあとも現場の解除には時間がかかるケースが多く、再開されても混雑することから、すぐに荷役(にやく/貨物の上げ下ろし)を再開できるとは限りません。このようなケースも、船の運航スケジュールに影響を与えます。
台風が発生したときに貿易事務が行うべき対応は?
台風発生時の船・飛行機の発着は、状況に応じて変わっていくものであり、予測は難しいというのが現状です。そのため、商社やメーカーで輸出入業務を行う貿易事務担当は、それ以外の手続きや手配を万全にしておくことが大切です。
運航スケジュールの確認
台風が発生した場合、入出港の可否や運航の予定を知るには、船会社や航空会社の担当オペレーターに直接聞くのが一番確かな方法です。ただ、実際のところ、台風が近づいている状況の場合、すでに入出港した情報は伝えられても、入出港前の船や飛行機の予定はオペレーターが回答できないケースもありえます。
輸送手段や港の変更
台風は通常、数時間~半日ほどで過ぎ去るため、台風の影響による多少の遅延やスケジュール変更は、各社も承知の上で進めることが一般的です。しかし、早く輸出入しなければならない貨物の場合は、輸送手段や港を変更して、遅延しないよう調整するケースもあります。
例えば、台風の予測進路から離れた空港を選択して、航空輸送で貨物を輸出したり、海上輸送するはずだった貨物の一部だけを航空輸送に切り替えて輸入したりといった手段もあります。クライアントや各現場に支障が出ないように調整することも、貿易事務の重要な業務と言えるでしょう。
遅延に備えた手続き・手配
輸入業務で貨物の到着が遅延しそうな場合、迅速な通関や貨物の引き取りのために、フォワーダーや配送業者へ手続きに必要な情報を提供し、早く引き取りたい旨を事前に伝えておくと良いでしょう。日本には、貨物が到着する前に税関の審査、検査の要否が受けられる「予備審査制度」があるため、この制度を利用するのもひとつの方法です。
特に、取引先への納期期限が厳格な貨物や、クリスマスや正月商品など商機が限られている貨物については、フォワーダーと相談して事前申告に備えておきましょう。また、社内の担当者や取引先など、その貨物輸送の関係者と密に連絡を取り合い、状況を共有すると良いでしょう。
貿易取引では余裕を持った輸送スケジュールを組もう
貿易取引では、船や飛行機が遅延することも見越して、余裕をもった受発注を行うことが大切です。
また、台風などによる遅延が起きてしまったときは、最新の情報をキャッチして、早めの予約変更や関係先への連絡など、貿易事務として臨機応変な対応を心がけましょう。
貿易実務初心者の方は、社内の先輩や同僚に天候不良時の対応について、事前に相談・確認しておくと良いですよ。
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