キャリアアップ

2016/09/30

いま急増中のセルフサービスBI 導入時に検討すべき3つのポイント

著者: パソナ キャリアコーチ(事務担当)

いま急増中のセルフサービスBI 導入時に検討すべき3つのポイント

今回は、企業におけるセルフサービスBIニーズが急増していることを受け、ツール導入決定者が気をつけるべき点を紹介します。

 

急増する「セルフサービスBI」のニーズ

ビジネスの現場でも、「セルフサービスBI」という言葉がよく聞かれるようになってきました。Power BIはセルフサービスBIに属するソフトとクラウドによるサービスですが、この「セルフサービス」という定義、確固とした基準が存在するわけでありません。

たとえばガソリンスタンドで、専門のスタッフが対応してくれる店と、セルフで給油をする店がある、という違いをイメージしていただけるとよいでしょう。これまで情報システム部の専門家でないと扱えなかったBIツールを、現場の担当者も使えるようになってきた、というだけのことです。その背景には、これまでデータベースなどの専門的な知識が必要だったBIツールの操作が、ツールの進化により簡単になり、専門家でなくても十分扱えるものになってきたことがあります。Power BIの場合は、操作性に加え、Office製品やExcelに馴染みのあるビジネスパーソンの方が、違和感なく使えるインターフェースになっていることもセルフサービスBIツールとして人気の理由です。

これもガソリンスタンドと一緒で、難しい学習も必要なく、誰でも比較的安全に給油できる設備が整ったからこそ、セルフサービスのガソリンスタンドが普及したのでしょう。それと同じように、操作に特別なスキルを必要としないツールが出てきて、これなら情報システム部でなくても使えるかも、というところから「セルフサービスBI」シーンも盛り上がりはじめたといえます。

「セルフサービスBI」ブームはまだ始まったばかり。今後はさらに、ビジネス利用者、導入企業が増えていくでしょう。そこで、BIを導入してから失敗しないために、ツール選択の際のポイントをおさえておく必要があります。

 

セルフサービスBI選択の3つのポイント

セルフサービスBIを導入する場合に、導入決定者が見落としがちな点、検討すべき点はどんなところでしょうか? 「難易度」「ツールの価格」「ユーザー数」の3つの観点がポイントになることが多いです。

・ポイント1:難易度の見極め

導入後によく聞かれる例ですが、BIツールはまだまだ専門的なイメージがあり、ビジネスインテリジェンスのソフトに精通しているIT部門の担当者が、導入検討・決定を行うケースが多いという現状があります。
ところがIT部門の担当者は、専門性の高いBIツールを見てきているため、一般のビジネスユーザーとは「使いやすい」「わかりやすい」というレベル感が、だいぶん違っているのです。BIのプロの人たちから見た「超簡単」は、はじめてBIツールを目にする人にとって「摩訶不思議」でしかなかったりするのですね。

この難易度をはかり間違えてしまうと、よい機能を備えたBIツールであっても、社員が使いこなせず、ライセンスも無駄になってしまうことになりかねません。操作難易度の見極めのために、できれば新しくBIを使う予定の現場責任者も選定に参加するべきでしょう。

・ポイント2:価格は必ずしも内容に比例しない

価格は、企業の予算もありますから、いくら以上・以下でないとダメということはありません。ただしBIツールは、機能範囲も広く、製品によってできることも異なると同時に、価格にはだいぶん幅があることも認識しておきましょう。

BIツール自体では、1ユーザー年間ライセンスで10万円のものもあれば、数百万円というものもあります。ユーザー数ごとに課金される料金体系が多いのですが、セルフサービスBIでは「ユーザー数が増える」という点も次のポイントと合わせて確認しましょう。

・ポイント3:ユーザー数の増加におけるパフォーマンスの低下に注意

BIツール選択の落とし穴となる点に、ユーザー数があります。2~3人で使っていたBIサービスを、全社向けに展開したら10ユーザー程度で急激に動作が重くなり、使い物にならなくなってしまった、というような失敗例もよく耳にするからです。

これは、少数の専門家が使うツールとしては問題なかった構成ではあったものの、ユーザー数の増加に耐えうる十分なサーバー性能を備えていないまま、アカウント数を増やしてしまったことで問題が起きたケースです。導入前には、既存のデータベースシステムで、パフォーマンス対策は十分か、現場のPCスペックで問題なく動くか、なども必ず確認しておきたいポイントです。

このように、セルフサービスBIは、専門家が使うBI専門ツールを選択する際の見方から、考え方を大きく切り替えて選択する必要があるといえるでしょう。

 

セルフサービスBIで「インサイト」を得るには?

現場に導入されたセルフサービスBIツールを使うとき、その最終目的は、ビジネスパーソンがデータから「インサイトを得る」ノウハウを身につけていくことです。最近よく聞くようになった「インサイト」とは、英語で「洞察」という意味ですが、マーケティングの世界では、消費者行動や、顧客の「本音」や「行動原理の発見」と言われるものです。

BIツールを使うことで、さまざまなレポートやデータがスピーディに作成できますし、Power BIでは、よく使われるレポートを自動で作成する機能も備えています。しかし、レポートを作成した段階は、結果が目の前に可視化されただけで、まだインサイトを得た段階とはいえません。インサイトを得るためには、そこから一歩進んで、ビジネスの現場の知見を活かしてデータを探る必要があります。

専門家の手を離れ、現場のビジネスパーソンにBIツールが渡り、個別の発見をするために試行錯誤を重ねる。そこに、企業でセルフサービスBIが導入されることの醍醐味があると思います。

 

ビジネスのデータと付き合っていくときに変わること

セルフサービス BI により、現場の担当者にとってデータが身近なものになると、ビジネスの進め方に一つの大きな変化が生まれます。それは、結果予測や意思決定を行う際、「常にデータを根拠に判断する」仕事のやりかたに変わっていく、ということです。

データドリブンでなかった時代は、「なんとなく今月の成績がよかったので、きっと来月も成績が伸びそう」といった曖昧な予想をすることがありました。いまは、今月の営業成績がよかったならば、成績が良かった根拠をデータの中から探し出すことができないと、データに基づいた意思決定ができなくなっていくのです。

今月の好調の理由はどの指標から分かるのか、またそれは前月に予測できたか、予測が外れたならばどの指標をみるのが正しかったのか…。そのようなデータドリブンなビジネスのノウハウを、現場で身につけていく。セルフサービスBIの最終的な利用価値は、ここにあると思います。

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