「伝票」の役割って?売上伝票や入金伝票などの種類も解説
企業の取引を記録する「伝票」の扱いは、経理業務の基本中の基本となるもの。
しかし、伝票にはさまざまな種類があるため、経理のお仕事を始めたばかりの方は、それぞれの役割や詳しい処理方法を知らないということもあるのではないでしょうか。
そこで、伝票にはどのような種類があるのか、伝票はどのように処理すれば良いのかなど、「伝票」について詳しく解説していきます。
取引を記録する「伝票」の役割って?
伝票とは、金銭や物品の出入や取引内容を、一定の様式に従って簡潔に記録した書類のことです。
仕訳をスムーズにする「伝票制」ってどんな仕組み?
そもそも、企業会計における主要な帳簿には、すべての取引を時系列でまとめた「仕訳帳」と、勘定科目ごとにまとめた「総勘定元帳」の2種類があります。
ところが、仕訳帳は基本的に一冊しかないため、「記帳を分担したり、取引の種類ごとに分けたりできない」という問題が発生します。それらを解消する方法として用いられるのが「伝票制」です。
伝票制は、個々の取引内容を伝票に起こし、その後総勘定元帳に転記するという方法。伝票制では、伝票が仕訳帳の代わりになるため、伝票を日付順に並べれば仕訳帳になり、勘定科目ごとに並べれば総勘定元帳と同様の意味を持ちます。
伝票はどのように作成されるのか
伝票は、請求書・領収書・注文書など取引を証明する証憑(しょうひょう)に基づいて起票します。
ちなみに、「起票」とは新しく伝票を書き起こすことを意味します。伝票を作成するのは経理職とは限らないため、経理の知識がない方でも簡単に記入できるフォーマットを採用し、責任の所在を明らかにする目的から記載者や管理者の押印が必要となります。
伝票に記載する共通項目
取引内容を明確にするために、伝票には「いつ」「どこで」「どのような目的で」「いくら金銭の出入りがあったか」などの情報が必要となります。伝票の種類や社内ルールによっても記載項目は異なりますが、基本的には以下の項目を記載します。
①日付:金銭の出入り、または取引のあった日を記載
②勘定科目:取引に適した勘定科目を記載
③摘要:取引内容を簡単に説明
④金額:借方・貸方それぞれの科目ごとに金額を記載
⑤起票者:起票者の押印またはサイン
伝票の種類を知ろう!
伝票は、種類ごとに役割や必要な項目が変わるため、扱いに慣れていないと戸惑うこともありますよね。
伝票は、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」「仕入伝票」「売上伝票」の5種類があり、扱う取引の種類によって分けられています。また、これらの種類の伝票は、一般的に「3伝票制」または「5伝票制」のいずれかの方式に基づいて、総勘定元帳に転記されます。
それぞれの伝票の役割や、「3伝票制」と「5伝票制」の違いについてしっかり頭に入れておきましょう。
3伝票制
飲食店のように、現金取引が多い企業・店舗で多く用いられるのが3伝票制です。金銭の出納用に利用する「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」の3種類を扱います。
①入金伝票
商品の販売や、サービス提供などによって会社に現金が入ってくる取引を記入する伝票。
【記載項目】日付、入金先、勘定科目、金額、摘要
②出金伝票
会社が現金で支払う取引を記入する伝票。たとえば、バス・電車の交通費など、領収書が発行されない場合の支払いも、出金伝票で処理することができます。
【記載項目】日付、出金先、勘定科目、金額、摘要
③振替伝票
現金の出入金、仕入、売上以外の取引を記入する伝票。銀行口座や手形の使用など、現金以外の取引に用いられます。借方、貸方の勘定科目を任意で設定することができる特徴があります。
【記載項目】日付、借方科目、貸方科目、金額、摘要
5伝票制
5伝票制は、掛け(商品を売買した時の代金を後日回収・支払うこと)による取引が多い小売業や店舗経営などで使われることが多い方式です。上記の①~③の3伝票に、「仕入伝票」と「売上伝票」を加えた5種類の伝票を用いて、総勘定元帳に転記します。「仕入伝票」と「売上伝票」が、それぞれどのような伝票なのか見ていきましょう。
④仕入伝票
仕入れ取引に用いる伝票。原則として、掛け取引しか起票することができないため、借方を買掛金で処理します。
【記載項目】日付、取引先、商品名、数量、単価、金額、摘要
⑤売上伝票
売上取引に用いる伝票。仕入伝票と同様にすべてを掛け取引とし、貸方は売掛金で処理します。取引先の企業名や商品名なども明記するため、顧客からの問い合わせがあった際や、返品時にも活用できます。
【記載項目】日付、取引先、商品名、数量、単価、金額、摘要
伝票の処理方法や伝票を使うメリットって?
ここまで、伝票の基礎知識についてご紹介してきましたが、そもそも、なぜ経理業務では「伝票」が必要なのでしょうか。その理由は「経理業務の効率性」にヒントがあるようです。
伝票の処理方法、流れ
冒頭でもご紹介したように、仕訳を記入するものとして①仕訳帳②伝票があり、どちらかが使用されます。取引が発生し、仕訳をして決算書を作成するまでの一連の流れを比較してみましょう。
①仕訳帳
取引発生→仕訳帳に記入→総勘定元帳に転記→集計→決算書を作成
②伝票
取引発生→伝票を起票→総勘定元帳に転記→集計→決算書を作成
なお、会計ソフトを使用する場合は、自動で転記・集計作業が行われます。
伝票を使うメリット
さきほどご説明したとおり、仕訳帳と伝票の処理の違いは、取引を仕訳帳に記入するか起票するかという点のみ。ただし、作業効率でいえば多くの点で伝票が勝っていると言えるでしょう。例えば、次のようなメリットが挙げられます。
簿記の知識がなくても処理ができる
伝票は、簡潔なフォーマットに沿って、日付や取引先などの項目を記入するだけで取引を記録できます。起票担当者に簿記の専門知識がなくても、伝票の書き方さえ覚えれば正確な処理ができます。
作業を分担できる
基本的に仕訳帳は、1冊の帳簿に日付順で取引を記載していくため、記入を分担することができません。伝票であれば、各担当者が起票し、経理担当が伝票をまとめて総勘定元帳に転記すればよいので、仕分け作業を効率よく分担できます。
修正がしやすい
仕訳帳は日付順に記載するため、修正しにくいという難点があります。それに対し、伝票は取引ごとに分かれているため、書き直しや調整も容易に行うことができます。
照合や集計がしやすい
伝票を勘定科目ごとに分類することで作業負担を減らすことができます。
効率よく決算書を作成できる
伝票は勘定科目ごとに総勘定元帳へ転記するため、効率よく決算書を作成できます。
※関連記事:『【ミス予防】伝票チェック時に気をつけるべきポイントは?』
基本を理解したら職場によって異なる伝票処理方法に慣れよう!
簿記のルールに則って仕訳を行うというのは、どんな経理のお仕事でも共通です。
しかしながら、仕訳の元となる個々の取引を記載した「伝票」は、会社によって取り扱い方も違えば、伝票管理のフローやファイリングの方法も異なります。今回ご紹介した「伝票」の基本的な役割や処理方法を理解した上で、職場ごとのルールを覚えるよう、チャレンジしてみてくださいね。
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