決算書作成に必要な「減価償却」の考え方
経理初心者の方にとって、初めての決算を前に専門用語を覚えておくことは、重要なお仕事のひとつです。
今回は、決算書に計上する「減価償却費」について解説します。何のために行うのか、どうやって計算すべきかなどを予め知っておくことで、作業をスムーズに進められるでしょう。
減価償却の考え方とは?
企業の経済活動に用いられる機械装置や設備、車両などの資産は、一般的に時間の経過によって、その価値が目減りしていきます。このような資産を「減価償却資産」と呼びます。
また、減価償却資産の取得に要した費用は、想定される使用可能期間で分割し、収益と費用との対応関係が成立するよう、必要経費として計算する必要があります。これが、「期間損益計算」と「費用収益対応の原則」の考え方です。
そして経理業務における「減価償却」とは、減価償却資産の取得に要した金額をある計算方法に従って、各年分の経費として配分していく手続きのことを言います。
ケーススタディ
例えば、食品会社で「年間200万円の利益を生む加工機械を1,000万円で購入した」とします。すると、購入した1年目は以下のようになります。
そして、2年目以降はこちら。
購入代金が0円になり、利益が急に増えています。機械の導入に関する会計がとてもアンバランスで、「費用収益対応の原則」に従っていないことになります。
上記のようにならないようにするのが、「減価償却」の考え方なのです。
減価償却費の計算方法
減価償却費の計算方法はいくつかあります。ここでは、代表的な方法「定額法」と「定率法」を紹介しましょう。
税法では、個人事業者は定額法を、法人は定率法を原則的な減価償却方法としています。
そして、減価償却費を計算するために欠かせないのが、国税庁が定める「法定耐用年数」と「償却率」。ここには「食料品製造業用の機械」の法定耐用年数は10年と記されています。
これをもとに、上記食品会社における減価償却費を計算してみましょう。
※参考元:国税庁『No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)』
定額法の計算方法
減価償却費=取得価額×定額法の償却率
この計算式をの食品加工機械に当てはめると
減価償却費 = 1,000万円×0.1000 = 100万円
となり、この額が配分された費用として決算で計上されます。購入1年目を表にしたのがこちら。
そして、残った900万円は「未償却残高」となります。翌年以降は、この額から年間100万円ずつ減価償却されていくという仕組みです。
定率法の計算方法
減価償却費=期首未償却残高*×定率法の償却率
*購入金額-減価償却累計額(前期までの減価償却費の累計額)
これを先の食品加工機械に当てはめると…
減価償却費=1,000万円×0.2000=200万円
となり、この額が配分された費用として決算で計上されます。購入1年目を表にするとこちら。
2年目はこちら。
減価償却費=800万円×0.2000=160万円となります。
3年目はこちら。
減価償却費=640万円×0.2000=128万円となります。
このように、少しずつ設備取得費用と利益が反比例していきます。定額法と比べると、減価償却は早く進んでいくことがわかりますね。
法定耐用年数が過ぎても価値はゼロにはならない
いくら価値が目減りしていくと言っても、法定耐用年数の10年を過ぎたらいきなり価値が0になるわけではありません。
同じように、法定耐用年数だけ償却していっても、資産価額は0円にはなりません。0円としてしまうと、資産が存在しないことになってしまい、会計上の手段での把握が困難になるからです。
そのため、法定耐用年数を経過した資産は、資産として残っている限り、減価償却費には「備忘価額」と呼ばれる「1円」が計上されます。
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参考サイト:
- 減価償却のあらまし、耐用年数表、耐用年数(機械・装置)|国税庁 平成30年分確定申告書等作成コーナー「よくある質問」
- 経理を学ぶ|株式会社パソナ