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2023/05/26

【為替相場】TTSレートとTTBレートの違いと覚え方とは?貿易実務での活用シーンも紹介!

著者: パソナ キャリアコーチ(貿易担当)

【為替相場】TTSレートとTTBレートの違いと覚え方とは?貿易実務での活用シーンも紹介!

貿易実務における海外企業との取引では、外国通貨を使用することも多いため、為替に関する知識が求められます。

慣れないうちは、「売り相場・買い相場」「TTS・TTB」という単語は知っていても、業務のなかで「ドルを円に換えるときはどっちだっけ…」と混乱してしまうこともあるでしょう。

今回は、貿易実務に欠かせない為替相場の基礎知識や、TTS・TTBの活用場面について紹介します。

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目次
外国為替と「売り相場」「買い相場」について
電信送金の為替レート「TTS」と「TTB」
TTSとTTBの違いを理解しよう
貿易実務におけるTTSとTTBの活用場面
TTS、TTBだけじゃない!為替相場の種類
為替レートの知識を身につけて、貿易実務のエキスパートになろう

外国為替と「売り相場」「買い相場」について

海外旅行に行くときに、日本円を旅行先の国の外貨に換えて持っていくことがあると思います。そのような、「異なる通貨の交換・売買」のことを「外国為替」と呼びます。

外国為替は、それぞれの通貨の市場における「需要と供給のバランス」によって日々値段の相場が変わり、交換の相場のことを、「外国為替相場(為替相場、為替レート)」と言います。

また、外国為替相場には「売り相場」と「買い相場」という2つの相場があり、銀行がその外貨を売るときの相場を「売り相場」と呼び、逆に買うときの相場を「買い相場」と表現します。

貿易取引では、輸出入者どちらかの国の通貨、または第三国の通貨(米ドルなど)で商品価格を設定して商品の売買を行うため、外国為替相場が取引にも大きく影響します。とりわけ、日本の貿易取引では、米ドルやユーロなど外国通貨(外貨)で取引されるケースが多くあります。商社などにおける貿易実務では、商品価格の設定や仕入れ価格の算出する際に、外国為替相場を見ることはよくあります。

「円高」「円安」との関連性

「円高」「円安」との関連性

売り相場が続くと「円高」が進行し、買い相場が続くと「円安」が進行するという相関関係があります。日本国内の企業の場合、輸入者にとっては円高が、輸出者にとっては円安が有利に働きます。貿易事務が実務で活かすためには、まず自身の担当が輸入者と輸出者のどちらなのかを知るところからスタートしましょう。

商社では扱う商品(繊維、鉄鋼、化学品、食品、自動車など)ごとに部門があり、その中で輸入、輸出、三国間とチームに分かれていることが多いです。同じ企業内でも輸入者・輸出者・輸出入者にあたる事務のお仕事があり、それぞれ担当は異なります。

また、メーカーも同様のケースが多く、例えば賃金の安い外国で作られた部品を輸入し、国内で組み立てて製品として販売する企業では、資材調達を担当する部門は輸入者、販売部門のうち海外商社との取引の担当者は輸出者にあたります。

こうした商社やメーカーの各部門で、取り扱う商品の価格が為替から受ける影響を調べるときに着目しているのが、TTSとTTBです。

電信送金の為替レート「TTS」と「TTB」

貿易取引の決済にはいくつかの方法がありますが、電信送金(T/T送金)決済はそのひとつです。電信送金とはいわゆる銀行口座振込のことですが、この電信送金決済で採用される為替レートをTTSレート、TTBレートと言います。

TTSレート(Telegraphic Transfer Selling rate/対顧客電信売相場)

金融機関が顧客に外貨を売るときの相場。また、顧客が金融機関に円貨から外貨に交換する相場。

TTBレート(Telegraphic Transfer Buying rate/対顧客電信買相場)

金融機関が顧客から外貨を買い取る相場。また、顧客が金融機関に外貨から円貨に交換する相場。

銀行などの金融機関は、その日(時間)の実勢相場をもとにTTSレート、TTBレートを決めているのですが、例えば、その日の金融機関同士で取引される米ドルの為替レートが1ドル=110円だとすると、一般的にTTSはこれに1円をプラスした111円になります。一方、TTBは110円から1円をマイナスした109円になります。

この1円は為替手数料であり、手数料が上乗せされた相場を「対顧客相場」といいます。(手数料分は金融機関の収益になります。)

ちなみに、電信送金で受け取った米ドルを日本円に交換するときは、(銀行が米ドルを買うことになるので)米ドルのTTBレートが起用され、逆に、銀行口座にある日本円を米ドルに交換するときは、(銀行が米ドルを売ることになるので)米ドルのTTSレートが適用されます。

一般的に、日本の輸出者は輸入者から外貨で代金を受け取ることが多いため、TTBレートをよくチェックしており、輸入者は逆にTTSレートを見ています。

*銀行によって円建ての口座で外貨を取り扱えるかどうかは異なります。一般的に、銀行は通常の(円建ての)銀行口座のほかに外貨建ての口座を開設することができ、外貨建ての口座に入れたままにしておくことも可能です(その外貨を円建ての口座に換えるときにはTTBレートが適用されます)。

TTSとTTBの違いを理解しよう

TTSとTTBの違いを理解しよう

TTSとTTBの違いについて理解できているか、以下の問題を解いてみましょう。

Q.海外旅行の前に日本円を米ドルに換える場合、米ドルはTTSとTTB、どちらのレートで交換されるでしょうか?

A.「米ドルのTTSレート(対顧客電信売相場)」が採用されます。
日本円を米ドルに換える場合、皆さんの立場からすると日本円を売って米ドルを買うことになりますが、銀行の立場から考えると“日本円を買って米ドルを売る”ことになります。

貿易実務の現場では、商品価格の設定や仕入れ価格の概算の算出など、TTS・TTBレートをさまざまな場面で使うので、2つの違いをしっかりと理解しておきましょう。

TTSとTTBの覚え方

TTS・TTBはあくまで銀行側のレートです。国内で貿易取引を行う会社では日本円を売って米ドルを買うという感覚がありますが、自社ではなく“銀行が”売る・買うレートだということをしっかり認識すると、間違いにくくなります。

TTSレートのSは「Selling(=売る)」、TTBのBは「Buying(=買う)」の頭文字です。TTSは“銀行が外貨を売るときのレート”で、TTBは“銀行が外貨を買うときのレート”と覚えましょう。

貿易実務におけるTTSとTTBの活用場面

外貨決済を行う企業では為替管理が欠かせません。その中でも為替変動リスクを回避する「先物為替予約」にTTSとTTBが活用されています。先物為替予約とは、一定の時期や期間をあらかじめ決めておき、銀行と外貨の受け払いを行う際に適用する為替レートを予約しておく取引のことです。先物為替予約時のレートを先物TTS・先物TTBと呼びます。

商社や貿易会社では、売買契約を結んだタイミングで代金決済時の先物為替を予約します。また、予約済みの先物為替を管理するのも貿易事務のお仕事の一つです。

先物為替予約のメリットは、決済相場が事前に決まることでキャッシュ・フローを予測しやすくなります。一方で、先物TTS・先物TTBを間違えてしまうと、部門の採算が実際の売上と合わず、トラブルに繋がるリスクもあります。そのため、TTSとTTBをしっかりと管理することが大切です。

TTS、TTBだけじゃない!為替相場の種類

貿易取引での決済では、TTS、TTB以外の為替相場が適用されることもあります。例えば、信用状(L/C)決済など荷為替手形決済では、銀行が一定期間資金を立て替えておくため、「立替金利」が発生するケースもあり、そのような場合に用いられる為替相場も存在します。

実際にどのようなレートがあるのか以下の表をご覧ください。

貿易取引で適用される為替相場の種類

*補足
銀行が適用する相場:レートの名称
相場の立て方:金融機関が各レートをどのように立てているかの詳細
高い←基準→低い:市場仲値が1ドル=110円の場合、上に行くほど111円112円と高くなり、下に行くほど109円108円と低くなります。

この表は貿易決済の種類をすべて把握していないと難しく感じられるかと思いますが、市場仲値、現金売相場・買相場以外のレートは、貿易取引で利用する決済方法に関係する為替相場です。

貿易取引には、冒頭で紹介した電信送金決済のほか、信用状付荷為替決済(L/C決済)、D/A決済、D/P決済があり、決済方法によって為替相場が変わります。今回は為替相場をメインにご紹介しているため、それぞれの決済の内容については触れませんが、決済方法について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

為替レートの知識を身につけて、貿易実務のエキスパートになろう

為替レートの知識を身につけて、貿易実務のエキスパートになろう

商社やメーカーの貿易実務では、決済手続きに関して経理の方が担当していることも多いため、今回紹介したような為替相場の名前をすべて覚える必要はありません。

ですが、貿易実務者が為替相場の知識を身につければ、取引で動くお金の流れをより正確に把握できますし、貿易実務のエキスパートとしてステップアップできるでしょう。

また、最初は為替相場の違いを難しく感じても、日々の業務の中で、貿易取引がいかに為替相場によって利益が変わってくるかを実感すれば、おのずと自社の決済方法やその為替相場についても興味が湧いてくるのではないでしょうか。

貿易事務は為替相場をはじめとする専門知識だけでなく、語学力や海外の商習慣への理解など、学ぶべきことがたくさんあります。変化の激しい国際情勢に合わせて、常に最新の知識をもって実務に取り組めるよう、随時アップデートしていくことが大切です。パソナでは未経験の方はもちろん、スキルアップを目指す方に向けた講座も豊富に用意しています。中には参加費無料のものもありますので、ぜひご活用ください。

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※関連ページ:貿易事務で働く|パソナ

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