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2017/10/05

貿易取引を始めるときに注意すべきこと ~決済~

著者: パソナ キャリアコーチ(貿易担当)

貿易取引を始めるときに注意すべきこと ~決済~

今回は貿易取引の支払いの際、注意すべき点をご紹介します。世界各国の規制・販売方法・ルートなどについて触れている記事「貿易取引を始めるときに注意すべきこと ~市場調査・規制事項・販路販路開拓~」も一緒にお読みいただくと、より理解が深まりますよ。

貿易取引における決済の特徴

貿易取引も、国をまたぐとはいえ“商売のひとつのカタチ”。商売とは、モノ・サービスの売買をすることですから、売主と買主はどこかのタイミングでお金の支払いや受け取り(決済)を行なっています。

今は海外のオンラインショッピングサイトで直接購入し、国際宅配便(International Shipping)で送ってもらうこともできますが、これは小売商売の方法。企業間で取引を行う際は金額も大きいので、そうはいきません。

では「いったい誰が、いつ、どのタイミングで支払う(受け取る)のか?」など、決済に関するよくある疑問点

① 決済の通貨は誰が決める?
② 支払いはどのタイミングで行う?先払い?それとも後払い?
③ 国内取引の決済と異なる点は?

について、それぞれご説明していきましょう。

①貿易取引における決済通貨

決済に用いる通貨は、売主と買主で話し合って決めることができます。

売主も買主も自国の通貨の方が為替変動によるリスクが少ない…という利点もあり、企業によって自国通貨での決済にこだわるところもあるようですが、現在、貿易取引でもっとも使われている通貨は「米ドル」です。

もちろん、中国と取引が多い企業では中国元を用いたり、EU各国との取引が多い場合はユーロが使われたりするので、ケースバイケース、企業によってさまざまです。

ただし、一般的にひとつの国だけで使われる通貨は他国の為替レートがよくない場合が多く、企業側にとって使い勝手もイマイチです。

それに比べて、米ドルは世界的に流通量が多く、また通貨変動も安定していることから、貿易取引ではよく利用されているのです。

②貿易取引における支払条件(支払うタイミング)

支払うタイミングも売主と買主で話し合って決めることができ、先払いでも後払いでも取引可能です。だからこそ、売主と買主の力関係が自ずと現れて、支払条件が決まるということも多々あります。

例えば買主(輸入者)が、少量販売する意思があまりない売主(輸出者)から小ロットで購入する場合は、売主の立場の方が強く、買主はお願いして仕入れる関係になります。

このようなケースでは、買主が商品を無事入手できるかのリスクを背負って、売主に代金を先払いする、あるいは一部デポジットを納める…といった支払条件になったりします。

よって、支払条件の一般論は説明し辛いのですが、力関係が対等であるほど、売主と買主の双方がリスクを折り合える決済方法に落ち着く、ということが言えるでしょう。

その決済方法が、銀行に売主と買主の間に入ってもらい、銀行の信用のもとで決済する「L/C(信用状)決済」になります。

※関連記事:『L/C(信用状)』取引における輸出入者と銀行の関係を理解しよう

また近年はL/Cを用いず、売主(輸出者)は商品を発送したあと、買主(輸入者)は商品を受け取る前に、貨物の引換券となる「船荷証券(B/L)」の受け渡しによって支払時期を決める支払条件(例:買主は「B/L受取後15日以内に支払う」などの条件)での契約も増えているようです。

この方法は、双方にある程度信頼関係があるときに用いられるため、貿易未経験者の会社にはオススメの方法とはいえません。

しかし、「これから貿易取引をしていこう!」という方に、“話し合いで支払条件(お金を支払う・受け取るタイミング)を決めることが可能”ということは知っておきましょう。
*貿易取引の送金決済は「船荷証券(B/L)」の受け渡しが大きな役割を担っています。B/Lという、貿易特有の書類について理解を深めることが大切です

※関連記事:『船荷証券(B/L)とは?意味や役割、記載内容の見方を詳しく解説!

③国内取引の決済と違う点

①決済通貨②決済時期以外にも、国内取引とは以下の違いがあります。

請求書

国内取引では一般的に請求書はその役割のみを担った書類であることが多いのですが、貿易取引ではインボイス(Invoice)という出荷明細書でもある書類が請求書となります。

インボイスは、税関に申告する時にも用いられ、経理(税務)処理にも用いられるので、しっかりと保管しておきましょう。

※関連記事:【貿易書類】『インボイス』の3つの役割と記載しておくべきこと

決済方法

商品代金の決済には、大きくわけて、為替手形を使った決済方法と、相手の銀行口座にお金を直接振り込む送金決済の2種類あります。

どのように決済するのかは、売買契約時に話し合って取り決めることですので、以下の関連記事を参考に違いを理解しておきましょう。

※関連記事:貿易取引における『商品代金の決済方法』を分かりやすく解説!

 

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参考サイト

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