輸出者に貨物を返送する「シップバック(積み戻し)」手続きのこと

こんにちは!貿易女子の円(まどか)です。今回は、外国から輸入してきたけれど、商品に欠陥があるなどの諸事情で送り返す「シップバック」についてご紹介します♪では、早速ですが、始めましょう!
そもそも、どんな事情で貨物を「シップバック」するのか?
みなさんは、商品(モノ)を扱う仕事をしたことがありますか?
貿易実務をされている方はもちろんのこと、そうでない方でも、ほとんどの方がアルバイトなどで経験されていると思いますが、カタチのあるモノというのは、傷がついていたり、汚れていたり、故障していたりすると商品価値を失って、お客さんに売ることができなくなりますね。
日本ではそのような欠陥商品を受け取ったとき、会社同士でも、お店と個人でも、返品または交換するのが慣例となっていますが、貿易取引においても、しばしば色々な事情で返品ならぬ返送することがあります。それが「シップバック」です。
ちなみに、輸出者が輸入者に船や飛行機などで送った(Ship)した貨物を返送するので「シップバック(Ship back)」と呼ばれますが、実は「シップバック」は貿易実務の現場での通称であり、法律上は「積み戻し」といいます。
では、「シップバック(積み戻し)」はどんなときに行われるのでしょうか?
貿易取引の場合、輸出者と輸入者がお金をかけて輸送した貨物ですから、シップバックすることは業務的にも金銭的にも損失・損害があります。ですが、輸送中に商品が壊れてしまい使いものにならないことがわかっているとき、塗料などの成分検査や食品検査などで基準をクリアできないとき、はたまた、法律上、商品を取り扱う許可が必要なものなのに輸入者がその承認を受けていないときなどに、輸入者は「シップバック」を検討します。
つまり、輸入できるけれど(輸入者にとって)商品価値がないとき、または、何らかの理由で輸入許可が下りないときに「シップバック」が行われるのです。
※輸入許可が下りない商品はシップバックするか、廃棄するかのどちらかになります。廃棄については「保税地域の貨物を廃棄するときに必要な「外国貨物破棄届」「滅却(廃棄)承認申請書」のこと」をご覧ください。
「シップバック(積み戻し)」するときの手続きを知ろう!
では、実際に輸入者が「シップバック」するときの流れをご紹介しましょう。
最初に覚えておいていただきたいのは、輸入者は自社だけで判断せず、輸出者と話し合って「シップバック」の合意を得ることが必要だということ。そもそも輸入者も輸出者も売買することを前提に契約を結んでいるので、輸入者は輸出者に輸入できない理由を説明する責任もありますし、その貨物の支払いやシップバックにまつわる費用(どちらが負担するのか)について交渉する必要もあります。
というのも、輸出者側でシップバックされた貨物を受け入れる体制ができていなければ、返送しても再び返送される可能性もありますし、輸出者の合意は重要です。
その上で、シップバックすることが確定したら、(フォワーダーに依頼して)船を手配し、税関に積み戻しの申告を行います。
積み戻しの申告は、法律上、輸出申告に準じる形式で行われることが定められており、ここで輸入者は輸出者の立場に転じ、インボイスやパッキングリストなど必要書類を作成します。
※輸入者が輸出者から入手した船積書類では通関できません。入手した書類をもとに、輸入者は、輸出者に向けて立場を逆転させた書類を作成する必要があります。
その後、税関による書類審査、(時には)現物検査などを経て積み戻し許可が下りたら、船・飛行機などで貨物を現地に送り返します。
これで輸入者の「シップバック(積み戻し)」業務は完了となりますが、商品によっては、輸出時には問題なくても輸入時には規制があって、現地(もともとの輸出地)の通関手続きがスムーズにいかないケースもあります。そのため、輸出者と輸入者は、商品をきちんとシップバックできるのかについても事前に話し合い、把握しておく必要があるのです。
先ほども申し上げましたが、貿易取引において「シップバック」は、輸出者にとっても輸入者にとっても、手間も費用もかかってデメリットしかありません。実際に起きてしまったら、なるべく長引かせず、おたがいに譲るところは譲り合って解決を図りましょう。