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2015/11/20

最近よく耳にするBEPS(ベップス)ってなに?

著者: パソナ キャリアコーチ(経理担当)

最近よく耳にするBEPS(ベップス)ってなに?

近頃経済ニュースなどで、「BEPS(ベップス)」という言葉を耳にすることがあるかもしれませんが、その意味をご存知ですか? 多国籍企業が納めるべき課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っているとして問題になっている「BEPS」について、わかりやすくご紹介いたします。

目次
BEPS(ベップス)とは?
行き過ぎた節税行為
求められるBEPSへの対応

BEPS(ベップス)とは?

「BEPS(ベップス)」とは「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字を取ったもの。日本語では「税源浸食と利益移転」と訳されます。

これは、グローバル企業などがグループ関係者間における国際取引によってもたらされた所得を、高課税の法的管轄から低課税の法的管轄(租税回避地=タックスヘイブン)に移転させることで、「国際的二重非課税を生じさせる行為」のこと。

カンタンにいえば、「国家間の課税制度の違いを利用して、納税額を最小限に抑える行為」です。

「税制の抜け穴」と言ってしまえばそれまでなのですが、このBEPSが国家の法人税収を大きく損ねている可能性があるということで、一部で問題視されているのです。

行き過ぎた節税行為

最近では、業界を問わず世界的な多国籍大企業によるBEPSがニュースで取り上げられています。特に某大手コーヒーチェーンの件は大きな話題になりました。

2012年にロイター通信がスクープした情報によれば、その企業がイギリスに進出してから14年間で計上した売上は約3,840億円に上るものの、法人税の支払額は約11億円に過ぎなかったということ。

これは、知的財産権や商標権などの使用料を、低課税国であるオランダやスイスの関連会社のものとしてそちらの利益を多額にし、高課税国であるイギリスでの利益を圧縮して見せるという方法で行われました。

こうした行為は違法ではありませんが、“行き過ぎた節税行為”として世間の批判にさらされた、というわけです。

また直近では、IT系大手企業の件が話題になりました。2014年のその企業の英国法人の売上は日本円にして190億円余りで、平均で3,800万円以上もの給与やボーナスを従業員に支払っていたといいますが、納めていた法人税はたったの80万円程度だったことが報じられました。

これも前出の企業の件と同様、利益をタックスヘイブンに移すことで巧みに節税をしていたのですから、恐るべきカラクリです。

求められるBEPSへの対応

このような国際租税に関する問題は、日本企業におけるグローバル化にも大きくかかわってくる問題といえます。

そこで、上記のようなグローバル企業が行っていた過度な租税回避行為を防止すべく、国際租税ルールを見直すとともに各国税当局が協調して対処しようとする動きが出てきています。それが「BEPSプロジェクト」です。

BEPSプロジェクトは、OECD(経済協力開発機構)やG20の各国税務当局が今なお議論を続けている最中。ここで議題のひとつになっているのが、日本企業の対応です。

日本の企業の多くは、国際租税をはじめとしたタックスプランニングを、さほど行っていないという現状があります。にもかかわらず、BEPSプロジェクトによって講じるべき対策に大きなコストとリスクがあるとしたら……それはそれで問題です。

だからこそこうした状況を踏まえて、日本企業のビジネスを妨げないようなプロジェクト設計が求められているのです。

 

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